vicc blog

株式会社ヴィックの技術ブログです。

読書ブログ『ワイズカンパニー: 知識創造から知識実践への新しいモデル』

どうも、あんまりカウンターが回らない読書ブログです。

今回もビジネス書の類です。

弊社代表渡辺が経営関係の相談役から本を紹介されていたので読みました。

私たちの会社もBIMとかいう怪しげな領域ではありながらも高度な知的専門職(自称)をやっているので、 コモディティ化したノウハウに頼るのではなく日々新しい知識を生産する会社でありたいわけです。

「知的クリエイティビティが高い人たちが集まれば勝手に新しい知識は生まれるんだ」という身も蓋もない意見もあるやもしれませんが、 僕のような体たらくな人間からすると「何かしら組織としての工夫がないと知識なんて生まれないよ~」と思うわけです。

この本の中身を非常に薄っぺらく紹介するならば

大学の先生たちが、いい感じに新しい発想ができている会社の実践例を眺めて 現場の人間が賢く判断できるようにするために 管理職・中間管理職がやるべきことの大きな方向性と具体例を示している

です。

蒔苗編集長は「説教臭い本ですね」と言ってましたが、個人的には学ぶところも多かったです。

事例紹介だけ読んで経営者列伝みたいに楽しんでもいい気もしますが、 小難しいアリストテレスがどうだこうだというところもまじめに読むとSECIモデルというのが出てきます。

このSECIモデルが興味深く、かつ会社の内部的な活動を見直す視点になりそうです。

建設業界に限らずモノづくりには経験と勘というものが跋扈しており、 システム化をもくろむ人間と時に対立したり協働したりしているわけですが、 この本によると、 新しい知識を生み出すには暗黙知を形式知に変換し再度暗黙知化するようなサイクルが大切らしいのです。

それを詳細に説明したものがSECIモデルです。

SECIモデルの図
SECIモデルの図(本書より引用)

暗黙知、形式知の変換とともにそれが行われる際の会社、部署(チーム)、個人、環境(社外とか)の関係性なんかも含めてモデル化されれています。

経験と勘(暗黙知)を抱え込んでいる状態とシステム(形式知)にこだわっている間は両者ともどんぐりの背比べで、 本当に新しいことをしようとしたら形式知と暗黙知の発展的スパイラルに進むべきだというのは言われてみれば当たり前な気もします。

この本がいいのはそういう知的活動を促すために経営層や中間管理職がやるべきこととして場の創出を挙げている点でしょう。

かつて自社ビルオフィスの設計をやっていた身からすると、 シマノの大部屋で海外出張レポートを共有するくだりなどは 「オフィス設計の議論で出てくる議論だな~」 と沁みるものがあります。

しかし、批判的視点で見ると、 具体的目標もなく、完了指標がないこのような活動に対しては、 意義を感じて実践しようとしても、 反対派が多い時に 「強い意志を持って続ける」 以外の処方箋がないことが、この本で書かれていることの根本的な問題点でしょうか。

JALの再建に際して、 稲盛さんが畳の部屋でコンパをやろうとしても無視される様子が出てきますが、 ちょっと切なくなります(僕ならあきらめちゃう)。

経営者向けの本を読むと、いろんなところで

究極的には経営者の強いリーダーシップと粘り強さだよね

というようなことが出てきがちなので悩ましいですね。

頑張れ経営者、と言いたいところですがこの本によると中間管理職も大事なんだって。

おらがしっかりせねばだな。

おしまい

(編注:個人的には第1部(理論編)までを楽しく読みました。あと、SECIモデルのタイムスパンが想像よりだいぶ長かった(10年とか)のが意外でした。もう少し短いスパンでSECIをとらえた方が、中間管理職以下には実用的なのかなと思いましたが… いずれにせよ内外問わず大企業のおじさま方に読まれているようなので、彼らの頭の中を知る意味でもおススメです)