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3DEXPERIENCEとCATIAモデリングの体験

現代において、3DソフトウェアのモデリングやBIM情報管理は珍しいものではありません。たとえば、RhinoはGrasshopperと組み合わせることで自由なモデリングが可能であり、RevitはBIM情報管理だけでなくDynamoを使ったパラメトリックデザインも行えます。そしてCATIAは、飛行機や自動車の設計に広く用いられるソフトウェアとして知られています。

CATIAを学ぶにあたって、まずはインターフェースを理解し、ファイル操作に慣れることが最初のステップとなります。本記事では、CATIAのUI/UXを実際に使ってみた感想を交えながら、その長所と短所を紹介します。また、CATIAの強みや可能性、そして3DEXPERIENCEプラットフォーム上でCATIAを使用する際のメリットについても簡単に触れたいと思います。

3Dエクスペリエンスのイノベーター

3DEXPERIENCEとは?

最新版のCATIAは、3DEXPERIENCEプラットフォーム上で動作するソフトウェアです。3DEXPERIENCEは、ソフトウェアの操作環境とクラウド共有プラットフォームを兼ね備えたシステムであり、Dassault Systèmesの各種ソフトウェアをシームレスに切り替えながら使用できる点が特徴です。これは、BIM360やAutodesk Construction Cloud(ACC)と同様に、クラウド上でのデータ管理とコラボレーションが可能な環境といえます。

以下では、CATIAを操作する上での基本概念をいくつかのポイントに分けて説明します。

① インターフェース

CATIAを起動すると、白いワークスペースが広がる画面が表示されます。左上には「コンパス」と呼ばれるメニューがあり、ここからさまざまなアプリケーションを切り替えることができます。

3DEXPERIENCEプラットフォーム上でのCATIAの大きな特徴は、同じインターフェース内で異なる機能をスムーズに切り替えられることです。例えば、3Dモデリングを行っている最中にスケッチを作成したくなった場合、ワンクリックで「Sketcher」に切り替え、そのまま断面図や平面図を作成できます。その後、Sketcherで作成したスケッチを元に「Surface」や「Solid」、「Volume」へと発展させることができます。

また、操作するプログラムの種類に応じて、ツールバーが自動的に切り替わり、現在使用している機能が画面左上に表示される点も便利です。

3DエクスペリエンスとCATIA

② オブジェクト管理

CATIAのオブジェクト管理は、レイヤー管理ではなく「オブジェクト管理」と「フィーチャー管理」が基本となっています。ファイルを作成する際には、まずオブジェクトの種類を選択する必要があります。

モデリングを進めると、各操作が「フィーチャー」として記録され、オブジェクトや参照関係はツリー構造で表示されます。これにより、作業履歴を管理しやすくなり、後から修正を加える際にも便利です。また、各オブジェクトのパラメータは自動的に記録され、CSVやExcel形式で保存・インポートすることも可能です。

CATIAのオブジェクト管理は非常に視覚的で、ツリー構造のアイコンを見れば、オブジェクトの種類や状態が一目で分かるようになっています。しかし、オブジェクト数が増えるとツリーが膨大になり、管理が煩雑になるというデメリットもあります。

モデリングの管理

③ 参照設定

CATIAでは、ワールド座標(原点)は存在するものの、オブジェクト配置の方法によっては座標を追加したり、新たに参照軸を設定したりすることが可能です。そのため、CATIAでモデルを作成する際は、最初に独自の原点を設定し、名称を分かりやすく変更することをおすすめします。

これは、CATIAでは異なる「Axis System(座標系)」を重ね合わせて参照設定を行うことができるためです。デフォルトの原点をそのまま使用すると、後に異なるモデルをアセンブリする際、参照点が混乱しやすくなることがあります。また、オブジェクト間に参照関係がある場合、「Relation(関係)」がコマンド欄に表示され、参照履歴を記録できます。

Axis Systemの追加
モデル中の物件管理

④ 個人的な感想

CATIAとRhinoを比較すると、大きな違いの一つは「再編集のしやすさ」です。 Rhinoでは、異なるデザイン案を試したい場合、レイヤーを分けて管理する必要があります。一方、CATIAでは、同じコマンドを何度でも編集し直すことができ、モデリングの過程で異なるバリエーションをリアルタイムに試すことが可能です。

ただし、CATIAはモデリングプロセスの中で非常に広範囲な変更が可能なため、「どのパラメータが可変で、どれが固定なのか」を明確にすることが重要です。また、参照オブジェクトの命名や順序の管理も慎重に行う必要があります。

もしGrasshopper(GH)を扱えるRhinoユーザーなら、CATIAはGHよりもさらにビジュアル的なパラメトリックモデリングツールだと感じるかもしれません。私にとってCATIAの面白さは、実際の製造と実験的なモデリングの間にあるような感覚です。

実は、GHのような作業スタイルを体験したい場合、3DEXPERIENCEにはオンライン版の「xGenerative」やオフライン版の「Visual Scripting」というアドオンがあり、パラメトリックデザインと管理が可能です。

もし「Rhino + GH」が、想像してから形にする"モデリングの冒険"だとしたら、「CATIA」は一歩一歩着実に踏み固めながら開拓していく作業のようなもの。踏み出した足跡はすべて辿ることができるし、その過程も明確です。そして「CATIA + xGenerative / Visual Scripting」の組み合わせは、しっかりした地盤の上に、さまざまなルートを加えることで、より多様な可能性を探ることができると言えます。

こうした違いを体感することで、異なるソフトウェアの設計プロセスを見直すきっかけにもなりました。特に、ファイルの管理方法や命名規則、オブジェクトの分類、参照システムの構築といった点で、新しい視点を得ることができました。

新しいソフトウェアを学ぶことは、単にツールの操作を覚えるだけでなく、新しい「データの整理・管理の仕組み」を学ぶことでもあります。本記事が、CATIAを使ったことのない方にとって少しでも参考になり、異なるソフトウェア間の交流が深まるきっかけになれば幸いです。