Rhino は建築だけに限らず、プロダクトや自動車、ジュエリーなどの様々な分野で広く利用されています。多様なユーザーの、多様な使い方に対応するために、非常に考えられて設計されているように感じます。
ツールバーやファンクションの配置、精度や、ショートカットなど、各人の使い方に合わせて、細かくカスタマイズできることが数え切れないほどあります。
今回は、弊社のスタッフが「ポップアップ」ツールバーをどのように使っているのか紹介します。
ポップアップとは
ポップアップは、お気に入りの機能のコラージュのようなもので、いつも使っている機能を並べることができます。さらには、自分で作成したファンクションに自分でアイコンを描いてそれをポップアップに登録することもできます。
ポップアップは、マウスの中ボタンをクリックすることで表示され、並んでいるアイコンをクリックするとそのファンクションが実行されます。
マウスの左ボタンまたは右ボタンを他の場所でクリックすることでポップアップは消えます。
ポップアップの設定方法
設定は簡単です。
既にあるファンクションをポップアップに登録する方法
- マウスの中ボタンをクリックして、ポップアップのツールバーを呼び出す
- ポップアップの上部をクリックして、フローティングツールバーに切り替える
- その後、「CTRL」を押しながら、追加したい機能のアイコンをドラッグアンドドロップで配置すると、ポップアップに新しい機能が追加される
自前のファンクションを登録する方法
- マウスの中ボタンをクリックして、ポップアップのツールバーを呼び出す
- ポップアップの上部をクリックして、フローティングツールバーに切り替える
- ポップアップのアイコンの無い箇所を右クリックし、New Button を選択する
- ファンクションの名前、アイコンを設定し、マクロを記述する
社内でのポップアップの利用状況について調査
社内ではポップアップを使っている人とそうでない人の比率は、1:1くらいでした。 使わない理由を聞くと、「この機能を知らない」「設定方法がわからない」「コマンドを直接入力することに慣れている」などが多かったです。また、エイリアスの設定にこだわっている人もいるようでした。
こだわりのポップアップ
何人かのメンバーのポップアップを見せてもらいました。ポップアップに配置しておくのにオススメのファンクションも聞いています。
アイリス
オススメ
- AddGuide: モデリングを補助するために一時的に無限の線(ガイド)を追加する。ガイドは、ビューポートで点をピックしている間だけ表示され、その間は、近接オブジェクトスナップと交差オブジェクトスナップが自動的に有効になる。
- SwapHide:Hide されているものとされていないものが反転する
イヴォン
オススメ
- Layer, Current:カレントレイヤーを設定する
- SetLayerToObject:今選んでいるオブジェクトに合わせて、カレントレイヤーを変更する
- SelLast:Import 含めて、最後に変更されたオブジェクトを選択する
良平
オススメ
- SetView toolbar : 表示切替関連もろもろ
(編注:良平さんはパース制作の経験もあるので、表示切替が多いのでしょうか?)
アラストゥ
オススメ
- UndoSelected:選択したオブジェクトを Undo する
- Set CPlane to Surface:作業平面をサーフェスに設定する
- Set CPlane to World Top:作業平面をワールドトップの作業平面に設定する
- Set CPlane to Object:作業平面をオブジェクトに設定する
ポップアップには何を置くべきか?
何人かの例を見ると、いくつかのパターンがありそうです。
- モデリングのサポート
- プロジェクトにより異なるかもしれませんが、モデリングの効率化はとても大事です
- ディテールチェック、レンダリングや表示設定など
- モデリングと同じくらいチェックも大切なので、チェックしやすいように用意すると良いと思われます
- ミーティング向け
- チェックと似ていますが、例えば手早く適切に寸法が測れるとミーティングもスムーズに進行します
ちなみに、今回見た感じだと、「Place Target」を設定している人が多かったです。
このファンクションは、大きな建築モデルをハンドリングしつつ、細部を拡大したいときに、ビューの真ん中にあるオブジェクトに焦点を合わせるのに役立ちます。
(編注:自分は ZoomSelected で似たようなことをやっているような気がします)
おわりに:インターフェースをカスタマイズする理由
世の中には、たくさんのモデリングの方法や、モデリング方法論に関する議論もあります。そして、私たちはモデリングにおける自分なりのスタイルをそれぞれが持ち、それは各人のカスタマイズされたインターフェースにも表れていると思います。
カスタムされたインターフェースというものは、今回取り上げたポップアップだけにとどまらず、ショートカットのコマンドや、さらにはマウスやキーボードといったハードウェアを含めて、各人のスタイルに合わせて構成されているはずです。
インターフェースをカスタムすることのメリットは、単にモデリングを速くすることだけでなく、作業での操作ミスを減らすこともできるはずです。さらには、チームメンバーに同じ環境を共有することで同じ速度、同じ精度で作業を進めることも可能になるかもしれません。
モデリングは、時間や集中力、忍耐力が必要な長く複雑なプロセスになることもあります。さらに、高機能なソフトウェアを利用していると、未知の設定やオプションなど知るべき考えるべきことが多くなります。今回の記事のための調査を行なった中で、問題意識やいくつかのアイデアを社内で共有することができました。
読者の皆様のモデリングの品質向上に関して、この記事が有用なアイデアの一つになることを願っています。
(編注:エイリアスも知りたいなと思いました。次はそのあたりの記事はいかがでしょうか? アイリスさんへ)
翻訳・編集 : Naoki Yoshioka