この記事を読んでくださる皆さんはよくご存知だと思いますが、BIMの世界では、プロジェクトのタイプや目的に応じていろいろなの分野のチームが参加します。作業範囲によっては同じ分野のチームが作業を分けて進めることもあります。
今回の記事はこれに関係することです。あるプロジェクトでBIMオーサリングツールとしてRevitを使うとき、ホストモデルが「意匠モデル」、リンクモデルが「構造モデル」である場合を考えてみましょう。
その場合、ホストモデルの壁を貫通するリンクモデルの梁が多数発生することがあります。この時、壁と梁には干渉が生じていると言えます。その干渉をそのままにしておくわけにはいきません。しかし、壁面プロファイルを 1 つずつ変更したり、各梁のサイズに適合する開口部を作成したりするのは煩雑ですし、手作業で行うのは不可能かもしれません。そこで、Dynamoを使った半自動的な壁への開口部の作成方法を紹介したいと思います。
このコンテンツの Dynamo スクリプトを作成する方法は、以前のクラッシュボールの Dynamo スクリプトよりも簡単です。ただ、BIM モデリングと連携する高度な作業プロセスになります。したがってBIM モデルの調整について十分に理解する必要があります。 では始めましょう。
以下にこの記事で使うソフトのバージョンを示します。
- Revit version 2021
- Dynamo 2.6.1.
まず、とてもシンプルな壁と梁を、ホストモデルとリンクモデルにそれぞれ作りました。
リンクモデルの選択とエレメント抽出
Dynamo スクリプトの一部を下に示します。複数のリンクモデルがある場合は、特定のキーワードを使用して必要なモデルのみを選択し、そのモデルからデータを抽出します。(図2参照)
また、図3でのグループのスクリプトではホストモデルからジオメトリ(データ)を抽出しています。
次に、Revit 要素をDynamoジオメトリに移動します。(図4参照) 転送されたデータを使用して、ホストモデルとリンクモデルの間に干渉があるかどうかを分析し、干渉の場所、適切な開口部のサイズのデータを抽出して、開口部を作成することができます。
干渉した壁のリストを作成
このDynamoスクリプトでは、リンクモデルの梁要素と直前に抽出したホストモデルの壁要素との干渉を識別し、リストを作成しています。(図5参照) その理由は、干渉の原因となっている梁と壁を正確に特定し、干渉している梁と一致する壁要素を順番にリスト化するためです。
開口部のサイズと配置位置を抽出
干渉梁と一致する壁要素のリストを順番に作成したら、適切な開口部のサイズを抽出し、正確な配置位置を特定します。(図6, 7参照) また、このスクリプトではパラメータを使用して、開口部の周囲に余裕分のスペースを設定できます。今回は各幅と高さをそれぞれ10mmずつ設定しています。
開口部を作成
これで、ホストモデルの壁に干渉する梁のための開口部を作成する準備が完了しました。あとはただDynamoの実行ボタンをクリックするだけです。実行して結果を確認してみましょう。( 図8参照)
Dynamoスクリプトが適切に設定されている場合は、Dynamoを直接実行しなくても、Dynamoプレーヤーを使用して処理に必要なパラメータを設定する事で、より簡単に実行することができます。ぜひ実際にやってみてください。
読者の方はお気づきかもしれませんが、壁を貫通する要素であるダクト、パイプ、ケーブルトレイなどの場合にも、この梁と同様のプロセスで干渉を避けた開口部を作ることができます。 また、この記事で紹介した方法は、設計段階だけでなく、施工段階でも活用できます。例えばこの開口部では建具(窓)のファミリーを利用しました。そのため、Revit上で集計表に活用することもできますし、データを使用して、壁の施工前に施工準備を行うために、事前に建築図面上の全ての開口部にマークを付けることができます。これにより、施工が終わってから開口部を壊して直すような、不要な作業を削減することができます。
使用したDynamoスクリプトはこちらです。 github.com