皆さんごきげんよう。 CDE入門シリーズの最終回です。 そして記念すべき100本目の記事です!!
これまでの記事はこちら
今回はまとめとして、ここ数年で目にした具体的なCDEプラットフォームを比較しながら紹介しようと思います。
はじめに(このブログの中立性について)
今回紹介するサービスの運営会社には、弊社viccと協力関係にある企業があります (弊社が販売代理店となる企業を含む)。
ただし、株式会社viccは2024年現在、独立資本で経営されており、以下に示す製品を自らの利益を目的として推奨するものであはありません。
中立な紹介となるよう心がけますが、読者の皆さんは割り引いて読んでください。
なるべく網羅的な紹介
以下、なるべく幅広く紹介していこうと思います。
なんらかのプロジェクトのEIRに指定があったり、設計事務所や施工会社のBIM担当の方々との情報交換の際に話題に上ったものです。
ただし、OneDriveやBox, Google Driveなど汎用のファイルストレージは除いています。
各社の製品紹介ページの情報に加えて、実務上の感想や口コミも書いていこうと思います。
ISO 19650準拠を表明しているもの
大きく分けて、単なるストレージではないCDEの中でもISO 19650に準拠してプロセスをサポートできると表明しているものとそうではないものがあります。
プロジェクト規模や担当するBIMマネージャーの技術力によって選択は変わりますが、ISO 19650準拠か否かはひとつの判断基準です。
-Autodesk BIM360/ Construction Cloud
言わずと知れたAutodesk製品なので、デファクトスタンダードの感があります。
特に設計事務所、ゼネコン設計部で利用される印象ですね。
CDE入門シリーズでも説明の際に例として使うことが多かったものです。
様々ファイル形式を受け付けますが、Revitと連携して利用することで大きく力を発揮します。
ライセンスにいくつか種類があり、利用したい機能を含むものを選ぶ必要があります。
しばしば質問されることで、混乱しやすいのですが、BIM360とACC (Autodesk Construction Cloud)は別の製品であり、機能にも差(3D viewで書き込みができるか等)があります。
いずれBIM360はACCに統合されるといわれつつ、いつBIM360がなくなるのかはよくわからないという状況です。
BIM360も開発が続いているようなので動向を注視していきたいところ。
-Bentley ProjectWise
とある海外案件で指定があったものです。
BentleyとありますがMicrostation以外のファイルフォーマットでも対応しており、
「Autodesk製品以外はProjectWiseで」という使い分けがなされていました。
ユーザー事例を見ていると橋梁や鉄道など土木系のプロジェクトに親和性が高いようです。
価格は問い合わせとのことでコスト透明性がやや気になります。
-Procore
国内ではほとんど見かけませんが、アメリカ市場の建設フェーズではよく使われているものです (検索するとredditのスレッドがよく出てくる)。
多機能でカスタマイズ性が高いのと、アメリカの建設プロジェクトの商習慣に適した機能拡張がなされているようです。
ただ、日本向けのローカライズがなされている様子が見受けられず、日本国内でアメリカ同様に広まる予感はしません。
米系外資のプロジェクトオーナーがEIRに盛り込んだ場合などに、アメリカ以外でも使うシーンがあるので知っておいて損はないでしょう。
契約形態が個性的で、建設事業者の前年度売上高などによって価格が決まるようです。
このあたり、なるべく多くのサブコンやメーカーをCDEに呼び込みたい、というシーンではうれしいところですね。
口コミでは「急激に売り上げが落ちた年にライセンスフィーが払えないので使うのを止めた」という声を目にしたので、興味深い契約形式ではあるもののの、不安感もあります。
ISO 19650への対応を進めている or 事実上準拠しているもの
この記事を書くために改めて調べて気づいたのですが、意外なほどISO 19650準拠と謳っているサービスが少ないようです。
ここからは、ISO 19650に準拠しているとは言明していないけれども、利用可能なものがいくつかあるので紹介しようと思います。
-Dassault 3D Experience
BIMというよりは製造業向けのPLM(Product Life cycle Management)として認知されているサービスで、CATIA, ENOVIAなどのパワフルなソフトウェアを内包しています。 建設業に特化したものではないためか、ISO 19650という文字は見受けられませんが、豊富な機能があるので建設プロジェクトのCDEとしての利用が可能です。
ただ、やはりCATIAでモデリングをしていないとその恩恵を100%受けられない印象があり、モデリングはRevitで実施して3D ExperienceをCDEとして使うというシナリオは想定しにくいように思います。
巨大プロジェクトでのデータのハンドリングなどで一日の長があり、特殊なプロジェクトで力を発揮する印象です。
-CATENDA Hub
日本ではGlobal BIMさんがローカライズや代理店業務を行っており、某スーパーゼネコンの影を感じてしまうわけですが、施工現場では広く受け入れられているようです。
アカウント数の制限がない定額制なのが心強い点です。
公式サイトでISO 19650に準拠という表現が見当たらないのですが、ステータスの設定などはISO19650を意識したものが採用されています(もし記載を見つけた方はコメントなどで教えてください)。
Rebro対応などローカライズがなされている点も好感を持てます。
-Trimble Connect
SketchUpのイメージが強いTrimbleですがCDEを出しています。
かなりシンプルな印象で、機能的にも今回紹介する中ではミニマムかもしれません。
機能制限はありますが、無償で試せる範囲(PERSONAL)があるので、まずは触ってみたいという方にはお勧めです。
協力会社に無償のPERSONALアカウントを作ってもらえば、費用負担なしで閲覧ができるのも魅力です。
試みにRhinocerosのファイルをアップロードしたところ、プレビューが表示されなかったので個人的にはそれが物足りない点でした(ACCなどではプレビュー可能)。
-Oracle Aconex
建設業界外の人からするとOracleのような有名IT企業が出しているサービスが安心感があるのでしょうか?
国内のプロジェクトでは見かけた記憶がないのですが、検索すると日本語ページも出てくるし、5年ほど前のArchifuture Webのマガジンでも言及があります。
ITに感度の高い建築主の皆様から引き合いがありそうな雰囲気を出しています。
海外では、事業主の要望としてマイルストーンごとにAconexに保管して進捗管理をするという指定がある場合もあります。
ACCや3D Experienceと違い、特定のソフトウェアとの結びつきが薄いので元請けや事業主のCDEとして選ばれやすいのかもしれません。
サプライヤー文書の管理など、3Dモデルに限定されないプロセス管理の機能が豊富です。
-Asite
もともとはBIM向けのサービスというより文書マネジメントを主としていたもののようですが、3Dデータのプレビュー機能などを拡張してCDEとして利用できるようになっています。
このサービスは国内では目にする機会がなく、海外でもそれほどシェアが大きくない印象です。
時折見かけるので、名前だけは載せておきます。
-Revizto
Revitみたいな名前だけれど別のものです。
とある海外案件で利用可能なCDEの一つとして指定されていました。
これも名前だけは出しておきます。
入門編のまとめ
BIMという言葉が広まって10年以上たち、何らかの形で使われつつ、いまだに3Dモデリングを活用した製図のような認識で語られることも多いわけですが、その真価はプロセスの変革による効率化にあります。
CDEはBIMのプロセスの舞台となる重要な要素です。
Zip(パスワード別途送信)でデータをやり取りするのをやめて、CDEで共同作業ができるプロジェクトを増やしていきたいですね。
興味を持った皆様ぜひ取り組んでみてください (困ったときは有能なコンサルタントを頼むのも選択肢です!viccという会社がいいらしいです!)。
これにてCDE入門完結です。
長らくのご愛読ありがとうございました。