皆さんごきげんよう。CDE入門三回目です。
前回までの記事↓↓
さて、今日の話題は名前です。
弊社社長の名前はワタナベなのですが、日本人の名前の中でも表記のバリエーションが多い苗字の一つですね。
渡辺、渡邊、渡部、渡邉…
情報マネジメントの観点で言うと、フィルタリングや検索の際に完全一致か曖昧一致かというところで悩ましいことになるので、合意されたルールが大切になります。
ガラス、Glass、 Gls、glsといろいろなレイヤ名が存在して、絶叫した経験に思いをはせながら読んでください。それでは本編へどうぞ。
命名規則とは
名前の付け方と言っても指定の仕方は色々あります。
「わかりやすい名前をつけること」の一言でもルールと言えばルールですが、解釈の振れ幅が大きすぎるルールはあまり意味がありません。
大きくは3つのルールがあると運用しやすいという経験則があります。
- 区切り文字
- 区切られた領域(フィールド)ごとに載せる情報の種類
- 情報の表記方法
- 文字数の制限
- 文字種別の制限(アルファベット、大文字-小文字、数字、特殊文字の禁止)
海外案件を担当したことがあれば、謎の3文字略語が並んだレイヤ名やファイル名に出くわしたことがあるのではないでしょうか?
PRJ_VCC_L34_AXX_DS_S_0002.pdf
このような名前です。
この場合はアンダースコア(_)が区切り文字で、PRJやVCCなどがフィールドに載せられた情報です。
略号表がどこか(EIRやBEP)にあり、それと突き合わせて読み下すことになります。
書くときは楽ですが、人間(特に英語圏以外)が読むと暗号のようなので国内では嫌われがちです。
時たま、「こういう略語の形式がBIMの国際標準であるISO 19650シリーズで定められているんだ」という人がいますが、それは少し違います。
ISO 19650では「名前の付け方が合意されて共有されていること」は求められている一方、具体的ルールは国別の付属書(National Annex)などにしかありません。
そして、日本ではまだ付属書が整備されていないので、少なくとも日本においてISO 19650で決められた名前の付け方というのは存在しないのです(2024年6月時点)。
俗にISO 19650式の命名規則として認知されているのはイギリスの国別付属書で書かれているルールです。
命名規則がなぜ必要か
わかりやすい名前がついていればいいのに、なぜ細かいルールを作るんだ?という疑問が出てくるかもしれません。
わかりやすい名前というのは人それぞれだから、というのが大きいですが、その他の理由に情報としての処理のしやすさがあります。
一つ例を挙げてみましょう。
- VICC本社新築工事-実施設計-構造-X5-軸組図_(承認済み).pdf
- 【承認図】VICC本社新築工事_DD図_STR_梁伏図_1FL.pdf
この二つの名前を見たとき、建築関係の仕事をしていればどんなデータなのか、何となく想像できます。
十分「わかりやすい名前」の範囲ではないでしょうか。
しかし、これらのファイルが何千、何万とあるフォルダを分析することを考えてみてください。
たとえば、プロジェクトの共有フォルダに存在する、承認済み実施設計構造データのうち、PDFが何個あるか知りたいのだとします。
承認図フォルダをあけて一つずつチェックするというのも、理論上はできますが...やりたくないですね。
また、人間が打ち込むとタイプミスがよく起こります。
日付の数字などで20241112、202411112が混ざっていると意外に気が付かないものです(1が一個多い)。
ここで、命名規則があると非常に簡単に分析ができます。
たとえば、区切り文字はアンダースコア、フィールドは物件名_プロジェクトのフェーズ_担当チーム_部位…などと決まっていると、 ファイルの名前からフィルタリングしていくことができます。 上の図は先日社内のとあるフォルダの中身を分析したものです。 ある種類の3dmファイルがとても多いことがわかりました。
命名規則が共通化しているからできることです(分析のためにTableauというBIツールを使っています。この辺の話はまた後日)。
分析というほどのことをしなくても、Excelのデータツールなどで試してもらうとよくわかります。 ね?区切り文字が違うだけで面倒なことになっているでしょう?
その他、検索をすることだけを考えても、必死に「構造」で検索していたのにお目当てのファイルには「STR」と名前がついていたのではいつまでも見つかりません。
ルールを覚えられない問題
こんな声が聞こえませんか?
「ルールが守られていれば後から使いやすいなんてことは知っているよ。ルールを覚えたり、守ってもらったりが大変なんだ。理想だけ言ってればいいんだからコンサルってのは楽な仕事だよな!」
そうですね、いや、コンサルティングは楽じゃないんですけど。
覚えられない、説明しても聞いてない、守るつもりだけどうっかり間違えてしまう、ルールとはそういうものです。
そんな時は機械の力を借りるのが良い方法です。
ようやくタイトルの内容にたどり着きました、CDEでの命名規則の強制適用です。
ACCやBIM360の場合のやり方はHelpに書かれています。
若干癖があるのでコツがあります…頑張って設定してください。
「えええええ、やり方は説明しないんかーい!」
(そういう時にコンサルティングを委託できるviccという会社があるので問い合わせてみてください。)
さて、上手いこと設定ができると、ファイルのアップロード時に命名規則に合わないファイルはこんな画面が出てきます。
この際、候補の中から選ぶ形式であれば、渡辺、渡邊が入り乱れることはありません。
すごく便利ですよね。
一部は選択式ではなく入力式にしなければならないこともあり、BIMマネジャーやコーディネータが修正をすることもありますが、強制適用されているとかなり下準備ができます。
現代的なCDEの便利な使い方の一例です。
CDEが単なる共有フォルダではなく、BIMプロセスのなかでマネジメントのために使われることがよくわかりますね。
今回は以上です。次回もお楽しみに。