2024/08/29に建築学会大会に参加しました。
BIMに関して材料・施工のセッションで学術講演として発表しました。
専門工事業者向けのRhinoを基軸とした建材生産のマネジメント手法に関しての報告です。
査読のない大会発表はアカデミックキャリアになるわけでもなく、論文執筆に比べるとはるかにハードルが低いわけですが、技研をもたない中小企業としては強い気持ちがないとできないことでもあります。
長期的にはちゃんと査読論文を書くようなところまでアカデミックな活動をしたいというのが会社の大方針です。
今日はviccがなぜ研究活動や学会を重視しているのか、掘り下げてみたいと思います。 (具体的な発表内容はまた別の機会に)
なぜ学会に参加するのか?
わたしたちの会社の存在目的は「テクノロジーと感性とコミュニケーションで建設の不可能を可能にする」ことです。その目的にいたるためのミッションとして3つのミッションを掲げています。
- 10年以内に10%の建設費低減、建設会社の10%利益増、建設業界の労働者の10%の労働時間削減をめざします。
- 先進的プラットフォームによって情報の流れをマネージメントできるBIMチャンピオンを5年で100人育てます。
- 10年で世界トップレベルの10個の建築プロジェクトに参画します。
最後の一つは別ですが、学会で発表することで社外の人々とも知識の共有が行われ、建設業の効率化や、BIMチャンピオンの育成には貢献できるのではないかと考えています。
今回発表した内容を知っただけですぐに10%利益を増やせる会社はないでしょうが、今までうまくいかなかった仕事を発想転換するきっかけになる人はいたかもしれません。
知識の共有は「私たちは分かち、ともに学ぶ」という会社の価値観にも合致します。
普段からブログで発信したりはしていますが、自社運営のweb媒体でリーチできる範囲は狭く、いつ消えてしまうかもわかりません。
一方で、学会大会で発表することで、広く多くの人の目に触れ、梗概集の形で図書館に収蔵されれば数10年後にも読むことができます。
発表してすぐにわかったメリット
第一に、会場で質疑をもらうことで、自分たちが持っていない視点からフィードバックを得ることができます。
「専門工事業者というと色々あるけど、設備サブコンのようなものを想定したらいいのか、それとも別の工事種別か?」というような質問をいただいたことで、「表現を改めた方が良かったかもな」と振り返るきっかけになりました。 (設備BIMの話題として読むとかなり頓珍漢な内容になってしまうので、意識して書き分けた方がよさそう)
また、これは事前に想定していた質問でもありますが、「ゼネコン側としては独自のシステムで情報を蓄積されるとどうしたらいいか想像できないが、接続の方法はあるのか?」という趣旨のご質問があがり、これは次の段階で考えなければいけないこととして念頭にあったので、課題の設定が間違っていないことの確認ができました。
わたしたちの部屋は温かい雰囲気で、質問の内容は的確でありながら優しい口調だったので、緊張して臨んだ身としてはありがたかったです。
第二に、すでにお付き合いのあるお客様と会場で再会し、ビジネスチャンスを掘り起こすというわかりやすいメリットがありました。
その他、他の発表者の取り扱っている内容でなんとなく世の中の人が興味を持っていることがわかる面もあり、井の中の蛙にならないために外の世界を知ることは意味があります。
次の目標と今後の期待
最初にも書きましたが長期的には査読論文を書きたいですね。
自分たちがやっていることが本当に「建設の不可能を可能にする」ことであれば、その取り組みを論文の体裁でまとめて世に出すことは意義深いものです。
また、研究発表のために自分たちのやっていることを整理して「なにが先行事例と違うのか?」を考えることはビジネス面でもコアバリューを探る取り組みになるのですが、えてしてこの手の思考は独りよがりになりがちです。
「わが社の技術は圧倒的にイノベーティブなものです!!」というと夜郎自大かもしれませんが、論理をもって科学的新規性のある研究ができているかどうか、第三者からジャッジしてもらえれば、それは一方的な主張ではなくなるわけです。
viccには技研はないので、日常業務と並行して取り組まねばならないという高いハードルですが、少しずつ前に進んでいきたいと思います。
今後の期待として、アカデミックな場に露出すると普段とは違う人との出会いもあるので、共通の関心を持っている企業や研究機関の方とのコラボレーション(実物件でも共同研究でも)が発生したらいいなという思いもあります。
営利企業なのでお仕事も待ってます。
今回報告した内容は私たちが普段の仕事で使っているシステムと既往のCDEとの比較のような側面があり、システム自体の開発も進めていく必要があります(質疑にあった、既存のCDEソリューションとのフェデレーションなど)。
これはとりもなおさず、日常業務に誠実に取り組むということでもあります。
とりあえず、1年後の学会も何かしら発表することになると思うので、私たちのやっていることに興味を持ってくれている皆さん、大会会場でお会いしましょう。