新年あけましておめでとうございます。
2025年を迎え、改めてこれまでの歩みを振り返りつつ、新しい年への抱負をお伝えしたいと思います。気がつけば、ミレニアムから四半世紀が過ぎ、建設業界も大きく変化を遂げてきました。昨年も弊社にとって多くの成果と課題を得た1年でしたので、その振り返りと今年の展望を共有いたします。
昨年の振り返り
1. 設計施工BIM
設計から施工フェーズにおけるBIM活用支援では、国内外のプロジェクトで成果を上げました。とくに顕著だったのは、国際標準レベルのBIMマネジメントと英語対応が求められるプロジェクトでした。
国内案件として、データセンター建設プロジェクトに参画しました。施主が外資のケースが多いこの分野では、BIMによるプロジェクトマネジメントが必須であり、EIR(情報交換要求事項)やBEP(BIM実行計画)を基にした厳密な管理が求められます。弊社の強みである英語対応+BIMマネジメントが評価され、さらなる受注を見込んでいます。
海外案件では、中東のレジデンスプロジェクトにおいてBIMマネジメントを支援しました。中東はBIM発注が進んでいますが、設計会社は世界中から集められ、BIMへの対応が十分でないケースも見られます。このプロジェクトでは、設計者が作成したデータの管理やBIMマネジメントをサポートし、プロジェクトの成功に貢献しました。
2. 生産設計BIM
昨年は万博関連プロジェクトと高級ブランドのファサードが中心的な役割を果たしました。
「いのちの遊び場クラゲ館」を含む6案件に参画し、とくに膜構造の生産設計で新たな知見を得ました。この経験により、ガラス、コンクリート、木材、鉄、膜構造といった主要建材の生産設計BIMを幅広くカバーする力を備えることができました。
ブランド系の店舗のファサードの生産設計でも、足掛け3年かけてサポートしてきた大型案件が今年竣工します。ここ5年ほどで話題になった超大型案件を複数件こなし、「複雑形状+大型案件」においては他社に負けないアドバンテージが出来たと自負しております。今年はさらに設計から施工、生産設計までのデータ連携を強化していきます。
3. オーナーBIM
昨年から注力しているオーナーBIMサービスでは、数件の発注を受け、着実な一歩を踏み出しました。発注者主導のBIMの必要性はますます高まっており、特にEIR策定や運用支援を通じて、今後も成長が期待される分野です。
4. 導入サポート
プロジェクトサポートと別に、導入サポートも継続的に伸びてきており、こちらも今後さらなる受注が見込まれます。
5. ビジュアリゼーション
コンペ案件を中心に安定した受注をいただき、クライアントから高い評価を得ました。特に、鳥取県立美術館竣工時には槇事務所の担当スタッフの方と現地を訪れ、ビジュアリゼーションの意義を再確認しました。
また、年末にはノルウェーのMirによる講演を通じて業界の最前線を学び、新たな視点を得る機会にも恵まれました。
6. 教育・アカデミック活動
慶応義塾大学SFCでの講義、建築学会での学術発表、建築情報学会での活動など、教育と学術分野への貢献も続けています。こうした取り組みは業界全体の成長に寄与するものと信じています。
7. 社内活動
去年の年頭のごあいさつでも述べましたが、会社としてさらに成長していくために社内制度の整備を進めています。去年は「人事評価制度」と「プロジェクト評価制度」を作り、運用を開始しました。
それぞれ「評価」に関することなので繊細な部分はありますが、社員と会社の正しい成長のためには絶対に必要なものです。
また、育休制度も対象者全員が利用したことで、すっかり会社の制度として浸透したと思います。
今後も育休制度にとどまらず、より働きやすい会社になるように制度の拡充に努める予定です。
今年の展望
2025年も「建設プロジェクトの全体最適化」を目標に掲げ、以下の方針に注力します:
1. 各分野の融合
設計施工BIM、生産設計BIM、オーナーBIM、ビジュアリゼーションといった分野をさらに深めるとともに、それらの融合を進めます。これにより、プロジェクト全体を俯瞰しながら詳細な運用を支える体制を構築します。
2. 人材育成と組織力の向上
社員のマルチスキル化を図り、プロジェクト間での柔軟な人員配置を推進します。例えば、ライノ+GHに長けた生産設計プロジェクトの担当であっても、EIRやBEPといったBIMマネジメントに関連する知識は有効ですし、RevitやCDEの知識も必要です。
これにより、社員個々の成長を支援するとともに、会社全体の総合力を高めます。
3. BIMマネジメントスキルの強化
日本ではBIM運用の高度化が進む中で、正しい運用スキルの必要性が高まっています。ライノやRevitでのデータ制作はもちろん重要ですが、それらを運用するマネジメントがなければ、折角のデータも意味がありません。今後の日本のBIM活用に必要なのは間違いなくBIMマネジメントのスキルになります。
弊社では以前からBIMマネジメントをしっかりサポートできる体制を作ってきており、今後もそのニーズに向けてさらに体制を充実させていく予定です。
最後に
BIMは業界全体で普及が進む一方、その本質的な活用に課題が残っています。昨年秋のArchi Futureのテーマのひとつに、「ぶっちゃけ何がどこまでできてるのかを自問するときでは」ということがあったと運営メンバーの方々から聞きました。日本のBIM元年とされる2009年から15年が経ち、CADからBIMへの移行や、干渉チェックや図面生成、可能な限りの自動化といった機能活用に努力が重ねられてきました。しかし、この取り組みによって建設業界は本当に効率化したのか、クリエイティブになったのかという問いが、業界全体で聞かれるようになっています。
経営層からは投資に対する費用対効果を求める声が強まる一方、現場ではBIMに対する正しい理解が不足している中で、即効性のある成果を求められる苦境も見受けられます。
現在、BIM活用は新たなフェーズに突入していると感じています。今後は設計・施工フェーズでのBIMデータ活用だけでなく、そのデータを経営判断に活用できる形で情報化し、全体最適化を目指すことが重要です。
弊社もこの方向性に向けて、BIMのさらなる進化を支援するサービス体制を強化していく予定です。
ヴィック・シンテグレートともに今年で創立10周年を迎え、さらなる新たなフェーズに入ったと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。皆さまのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
株式会社ヴィック 代表取締役
シンテグレート合同会社 代表社員
渡辺健児