こんにちは、新入社員の篠原です。そろそろ入社して1年になるので、そろそろ新入社員ではないかもしれません。
以前書いたブログで、パラメータ空間を使ったモデリングについて説明しました。
この記事は、曲面形状を実現させるにあたってモデリングをするときに役に立つ生産設計BIMの知識の一つです。Grasshopperでのモデリングを確認しながら幾何学的なエッセンスについて紹介しました。
こういったモデリングは、曲面形状を切り抜いたりする以外にも様々な側面で役立ちます。
今回は、Vanke pavilionをテーマにパネルの割り付けについて、パラメータ空間を使った解き方を紹介します。

[Lunna Campos, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons]
つくるもの
最初に、これから作るものを見せます。忙しい方はここだけを見てください。
RhinocerosとGrasshopperのモデリングで、下のモデルを作ります。


この完成品はこちらからダウンロード可能です。ぜひ試してみてください。
つくり方
ここからは、幾何学的なエッセンスを紹介しながら、アルゴリズムを理解しやすいように細かく見ていきます。
1.基準の自由曲面をモデリングする
最初に、パネルを割り付けるための曲面(NURBS Surface)を作成します。
ここはGrasshopperで作る必要はなく、Rhinocerosでのモデリングで十分です。

2.パネル割りを抽象的に表現する
まず、曲面間の変換*1を使って、平面で整えたパネル割りを自由曲面に割り当てることを前提に、図中の左上の割りつけを抽象的に考えていきます。

最初に作った自由曲面のうねりに沿うようにパネルの向きが決まっているようです。

[Luca Nebuloni, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons]
なので、次のAとBうち、Bの方法で平面のパネル割りを整えます。

上の、Aのパターンを斜めにずらしてBのパターンに変形するイメージで、まずはグリッドを作ります。

グリッドをShearで変形させます。

最初のグリッドの縁に合うように整えます。

最初のグリッドの外形から左右にはみ出す部分を取り除きます。

これでBのパターンを作ることができました。
次に、これを自由曲面に割り当てていきます。
3.つくった割り付けを自由曲面に割り当てる
最初のグリッドを覆う、XY方向のNURBS曲面(図中の「グリッドの外形」)でメッシュ頂点のUV座標を取り、その座標を自由曲面で評価して点を取得します。
Bパターンのメッシュのトポロジーを引き継いで、取得した点でメッシュを作成します。このあたりの処理は曲面間の変換の考えがそのまま適用されていますね。

形が見えてました。次は、うろこ状の外装を表現していきます。
4.パラメータ空間の性質を使って、形状を整える
次に、このように帯状の形状を作ってみましょう。

このようなうろこ状の外装を表現するにあたって、自由曲面上のメッシュからうろこの向きを取得します。
ここで、平面上で作ったBのパネル割が便利です。
この記事で紹介した考え方を使って、平面情報から自由曲面上のうろこの向きを取得してみましょう。

「2.パネル割りを抽象的に表現する」で、左右にはみ出す部分を取り除いたメッシュ面に対応する、Shear変形前のメッシュ面を取り除きます。

取得したメッシュのエッジをの向きと、X方向のベクトルとの内積を評価して、縦方向のエッジを抽出します。

自由曲面に割り付けられたメッシュは、平面上のメッシュと同じ構造を持っているので、縦方向の抽出をあてはめ、自由曲面上のうねりの向きに沿うエッジを抽出します。

ここで、「3.つくった割り付けを自由曲面に割り当てる」と同様の方法で、オフセットされた自由曲面に対してもメッシュを作成します。

抽出した縦方向のエッジをメッシュ面の中でX座標で並び替え、対応する抽出(インデックス)の一つ目をオフセット後のメッシュに、二つ目をオフセット前のメッシュに適用させてエッジを取得し、これを使ってサーフェスを作成します。
この処理によって、うろこ状のひらひらを表現しています。

平面上で作った情報をうまく流用することで、自由曲面上で簡単に情報を取得することができました。
平面の情報を使わない場合は、メッシュトポロジーの操作や、自由曲面上の座標を使った数値処理など、難しいアルゴリズムを考える必要があろうかと思いますが、それをスキップすることができました。
おわりに
今回は、NURBS曲面のパラメータ空間について、実務への応用を想定しながら確認しました。
ヴィックでは、生産設計BIMの仕事において、様々な知識に基づいて情報を整理しています。複雑形状でお困りのことがあれば、ぜひ弊社にご連絡ください!
*1:「曲面間の変換」について、以下のブログの「地球と火星を比べる」に詳しく書いています。