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株式会社ヴィックの技術ブログです。

日本における干渉チェックの(誤)認識(Part2)

Part1から引き続き、断面目視は干渉チェックなの?という話です。 前回の記事はこちら

干渉

無過失責任と善管注意義務

個人的な経験として、干渉チェックを利用したのは生産設計段階がほとんどで、目視確認では漏れてしまうような問題箇所を機械抽出して命拾いしたことが多々ありました。

干渉チェックをやりたいと思うことこそあれど、「目視確認しかやってはいけない」と言われたら怖くてしょうがないのでは??なぜそんな危険な提案をするのだろうか?という疑問がありました。

よくよく話を聞いて冷静に考えると、契約と業務費が背景にあるようだということが見えてきました。

まず、生産設計は工事請負契約のためにおこなうので、責任の負い方として何があろうと建物を引き渡せる必要があります。

無過失責任という無謬性が求められる状況では、手を尽くしてリスクを管理可能な状況における干渉チェックは力強い味方です。

しかし、設計は無過失責任ではなく善管注意義務までしか負わないことから、専門技術者が検知不可能な問題が、設計図書に含まれない範囲に隠れていても、その責任は負いません(議論の整理のために非常に簡略化して述べているので異論もあるかと思います)。

この前提において、干渉チェックは非常に厄介な問題を呼び起こします。

旧来の図面ベースの業務であれば、図書の取りまとめを行い、その中で検証可能なことには責任を取るものの、図書に現れない場所で問題があったとして、設計業務の不履行にはなりません。現場で質疑に回答したり、施工図承認の際に解決していくことになるでしょう。

しかし、BIMを業務契約に含み、その具体的業務仕様として3Dでの総合調整と機械検出による干渉チェックが含まれていたらどうなるでしょうか?

EIRにおいてLODの設定がどうなっているか、総合調整で求められる水準がどうなっているか、様々な要素がありますが、いわゆるフロントローディングであり、設計業務のスコープが拡大する方向にあるということまでは言えるでしょう。

(機械的な)干渉チェックを実施する=設計スコープの拡大、善管注意義務の対象が増加することを意味するのです。

契約とEIR/BEP

設計費が相応に上乗せされない状態で、業務範囲を広げることは設計事務所にとっては経済的に苦しいものがあります。もし、業務費が旧来の設計プロセスとおなじであれば、追加業務を無償でできないという単純な話で、干渉チェックはできません。

ここで、日本国内の課題として出てくるのがBEPとEIRのやり取りが未成熟だという現状です。

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設計案件で契約前にEIRが示され、契約前BEPが発行されることはほぼないので、設計料が決まった状態でBIMの作業スコープを詰めるというようなことが起こります。

さらに、契約上BIMの利用が必須(詳細は別途協議)となっているとややこしいことになります。

設計契約と整合する形でBIMを使うことになり、すなわち、BIMによって業務プロセスを変えるのではなく、旧来業務の手段としてBIMを使おうという方向性になります。この場合、BIMとは業務のプロセスではなく作図手段です。

旧来業務でも設計者が気になる箇所は断面詳細図を書いたり、詳細図検討をするわけで、それをBIMを使って実行することを干渉チェックと呼ぶという現象がここに発生します。

着手前に契約がきちんと詰められる国外プロジェクトで干渉チェックとは何かという議論が起こらないのは、契約書とそれに付属する資料であるEIRで明確になっているからでしょう。

まとめ

このように、干渉チェックをめぐる認識の齟齬を見ていくと、プロセスとしてのBIM(ITを活用して仕事のやり方を変革し、業務を高度化すること)を目指すときにEIRが重要であることを再確認できるかと思います。

よいEIRを書くためには、発注者側も一定のリテラシーがなければなりません。さもなければ受託者側に法外な要求をして揉め事になるか、のらりくらりとかわされて旧来通りの仕事に落ち着くかの二択です。

また、明確な干渉チェックのワークフローをEIRに示されて、それに対応しなければならない設計者・施工者の立場では、一定のノウハウをもって業務に当たらないと事務的な手間だけが増えていきます。

干渉チェックを含め、BIMに関してのマネジメントを自社でやり切るのは簡単ではありません。そんなときはBIMコンサルタントを雇うという選択を考えてみてください。ご連絡お待ちしています。 info@vicc.jp