こんにちは、VIZチームの照井です。 今回は前回紹介した日本アーキテクチュアル・レンダラーズ協会(以下JARA)http://www.jara-net.com/、American Society of Architectural Illustrators(ASAI)https://asai.org/で私が過去に出品した作品について解説したいと思います。
ここで今回取り上げますが、こちらの作品
まずこの絵、台湾の商店街や銀山温泉からインスピレーションを受けて作成したもので現実にある場所ではありません。仮想の景色です。
絵に何が書かれているか見ていきましょう。 朝雨が降る中、瓦屋根の雑踏とした街並みの中を傘をさして歩く女性が一人。 両サイドにはぼんやりと灯った提灯や窓灯りが見えます。すでに消えているものがあり、夜営業は店じまいといったところでしょうか。 構図的には画面奥への一点透視といったところ
ここでこの絵のどんなところにこだわっているのか少し解説します。 まず構図について見てましょう。
構図だけを見ればおおよそ赤で書いた一点透視と手前に人という組み合わせに見えます。 しかしこの絵にはもうちょっとこだわっています。
パースラインにわかりやすく色を付けてみました。
実はこの絵は建物のパースラインが1点でそろっていない消失点が複数ある状態となっています。 なぜこのような手間をかけているのか次に解説します。
まず人間の目はコントラストの強いものに目がいきやすいという性質があります。 画像を遠くから見た時の印象として明度で単純に白黒化するとおおよそこのようになります。
白と黒だけにするとわかりやすいですね。目を引きやすいです。
しかし、わかりやすい図形、マークはわかりやすいがゆえに一瞬みただけですぐに鑑賞者が観た気分になってしまう恐れがあります。 なので鑑賞者がもう少し引っかかるようなフックをつくります。
ボリュームだけで少し誇張して解説します。
左側の建物には角度をつけて意図的に整列を崩しています。 綺麗に整列しているよりも、あえて規則性を崩している分だけ鑑賞者は情報を処理する為に画像を長く眺めます。 通常の1点透視よりも奥に行くにつれてすぼめているので、より没入感を出して主観的な効果がでるように狙っています。
この細かな視線誘導のテクニックは昔から西洋絵画でもよく用いられています。
消失点をずらすことで鑑賞者に不穏さや不安定感をあえて感じさせています。
透視図法を学ぶ為の製図の授業では、もちろんこのような操作を行わなくてもよいのですが。
普段私たちが歩いている道の縁石も綺麗な直線で揃っているということはめったになく、多少歪んでいますし、そもそも人間の目は左右に分かれているので視野を補正して見ているということもあり、多少の歪みがあったほうが人間の目は自然に感じます。
CGは正確さ、規則性、整列が得意ですが、CGにあえてアナログ的なテクニックを取り入れています。
元のモデルを真上からみると一目瞭然です。
平面操作したbefore、afterを比べてみましょう。 画像をスライダーさせて比べてみてください。 スマートフォンの場合は画像が上下に分かれます。
同業者からもそんな事していたのと驚かれます。
今回はおおまかな構図のお話をしましたが、これ以外でもこだわっている箇所が多数あります。 1つずつは難しくないことですが、細かいこだわりの積み重ねの上で目を引く画像ができていきます。
先日の11/3の記事の中で「選択的知覚」という言葉が出てきましたね。 ジオメトリエンジニアの複雑形状建築探訪#2 「ホテル阪神アネックス大阪」 https://blog.vicc.jp/entry/visiting-geometric-architecture-2
効果的に知覚を誘導することも私たちが大切にしている要素の一つです。 あまりにも一目でわかるような視線誘導にしてしまうと逆に不自然にみえてしまうのですが、 遊び心を持ちながらひっそりと取り入れています。
VIZチーム 照井悠大