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株式会社ヴィックの技術ブログです。

ジオメトリエンジニアの複雑形状建築探訪#2 「ホテル阪神アネックス大阪」

ふらりと目に留まる複雑形状建築───。

矢部です。今回の複雑形状建築探訪は大阪です。といってもわざわざ見に行ったというものではなく、散歩していてたまたま見つけたホテル阪神アネックス大阪のファサード部分です。

福島駅前 : ホテル阪神アネックス大阪のファサード

看板周りの白いうねうねした部分を分析してみようと思います。 うねった部分に寄って確認してみました。

ファサード見上げ

分析してみた

まず短冊形の板金をねじって製作された単位部材によってファサードが構成されていることが確認できます。ファサード全体が上下に2分割されており、単位部材が横方向に均等配置されています。

部材端部をよく見てみると、中央の分割部分は部材が90度ずつ回転して固定されており、上下端部はすべて向きをそろえて固定されています。

なぜ中央で90度回転させて固定しているのでしょうか? 分析してみようということで、いくつかのパターンを作ってみました。 まずは実際の通りに作ったモデルの中央部分の拡大画像です。↓

ファサード中央部

中央部で隣り合う部材を90度回転させているのが不思議に思ったので、試しに端部向きをすべてそろえて固定してみました。↓

ファサード中央部の固定向きを揃えたモデル

なるほど、端部の固定向きを揃えると、隣り合う部材のねじれの向きがそろってしまうんですね。 ファサード中央の分割部分に帯状の分断部分が入っているような印象を受けます。

しかし、それならば部材のねじれの始点位置をずらせばいいのでは?と思い、固定向きをそろえつつ、部材内のねじれ始点位置をずらしたパターンを作ってみました。↓

中央部の始点をずらしたパターン

なるほど、ねじれの始点位置をずらすと、余計に分断部分が大きく見えてしまうんですね。

ファサード全体を引いて観察すると、このパターンでは上下に分断されている印象を受けます。↓

引きで観察してみる

つまりは、実際の形状では部材の固定向きを交互に回転させることで中央の分断を目立たなくさせているのではないかと思います。

元のファサードを改めて引きで見てみると確かに中央の分断が目立たないようになっているような気がします。↓

ホテルと同様のファサードモデル

まとめ

これらの考察をまとめると、

  1. ねじれの見せ方を工夫したい
  2. 中央付近での分断を目立たなくしたい

上記の二つが浮かんできました。 これらを解決するためにあれやこれや考えてたのかなと想像します。 その結果、部材のねじれの始点位置をずらすのは上下端で負担しているのですかね。

下端のねじれ始点がずれている

考察終わり。

分析にあたってGHを作ってみました。パラメータとアンチパターンも用意してみたので触ってみてください。

github.com

結び

しかしながら、ぼーっと歩いてても複雑そうなものが目に留まってしまうという現象は個人的に興味深いです。

求人を探してる時にバイト募集のポスターがよく目に留まったり、虫好きな人がすぐに虫を見つけられたり、大量の視覚情報から関心のある情報のみを選択的に取り出して認識することを「選択的知覚」というらしいです。

選択的知覚を自覚してしまい、普段自分が何考えてるかわかってしまい恥ずかしい気分になりました。皆さんは何を知覚してますか?

終わり