入札提案書におけるBIMの比重
入札段階でBIM要件を読み違えると、受注後に是正が困難なコスト増大や工程遅延を招くことがあります。
その原因はBIMの技術力不足ではなく、入札書類全体の構造を十分に把握できていないことにあります。
入札時の明細書を見ると、BIMが項目として記載されている場合があります。しかし、BIMは特定の成果物ではなく、プロジェクト全体を支えるワークフローそのものです。これを他業務と分離して評価・積算する考え方は、現在のプロジェクト遂行とは整合しません。
過去の経験から、BIM業務費を別に記載する場合、プロジェクト全体で占める割合は大きくありません。 しかし、今やBIMは業務プロセスの基盤として広範な影響を与えるため、その理解が不十分なまま進められた入札は、後工程での手戻りや追加コストとして顕在化します。
技術提案では「BIMを緊密に連携させた業務実施方針」を提示することは、技術トレンドに遅れを取らず、プロジェクト遂行能力そのものを示す指標となります。
EIRを補完する入札書類に隠れたBIM要素
プロジェクトの進行のため、発注者は設計者や施工者を決定するために一般的に競争入札を行います。 発注資料には、発注者が求める要件が明確に示されていますが、BIMに関する要件は必ずしもEIRのみに記載されているわけではありません。
過去の海外プロジェクトの施工入札書の構成と進行過程は以下のようになります。
現在広く用いられているEIR(Exchange Information Requirements)という文書は、プロジェクトのBIM要件を全般的に扱う中心的な文書となっています。しかし、実際の入札書類では、複数の文書で構成されています。これらの文書間にあるBIM要件の不整合を、質疑応答(Tender Clarification)を通じて発注者に確認し、明確にする必要があります。
こうした文書間の不整合は、入札書類が複数の担当者によって作成され、十分なクロスチェックがなされないまま発行されることに起因します。
したがって、入札書類全体を把握し、発注者が構想している業務スコープとBIMの要件との文脈を理解しなければ、良い提案書を作成することはできません。 BIMを「2D to BIM」と認識し、「3Dモデルの追加提出である」というBIM見積もりはもはや通用しないため、誤ったアプローチはプロジェクトのワークフローを崩し、不要な遅延や追加の経費支出という悪循環を引き起こします。
BIMは業務プロセスそのものであり、その理解の不足は入札段階では見えにくくとも、プロジェクト遂行段階で顕在化します。
入札提出物の準備
まず、入札は情報戦です。具体的には以下の要素が絡み合います。
- 入札参加者の動向把握(※提案依頼の購入履歴などから得られる市場情報の収集を含む)
- 戦略的な交渉と判断(強力な競合の出現に応じた案件の切り替えや、サプライヤーとの金額交渉)
- 財務的リスクヘッジ(マージンやコンティンジェンシーの設定)
施工入札の場合、競争力を高めるための施工計画や資材調達に創造的なアプローチを取り、リスクヘッジに徹底した検証を行います。
当社は入札書と提案書に関する情報の重要性を強く認識し、厳格な機密保持を基本としています。
1. BIM関連事項の横断的レビュー
クライアント(当社に業務を依頼した設計者または施工者)が共有した入札書を受け取ると、レビューを通じて複数の文書に含まれるBIM関連要素を抽出します。 膨大な入札図書を網羅的に精査するため、クライアントができるだけ多くの入札書類を共有することは効果的です。 PDFでBIM関連のキーワードだけを検索しても見落としが生じるため、BIMがどのようにプロジェクト実行に組み込まれているかを可能な限り把握することを重要視しています。
抽出された不明点や不整合については、質疑応答(Tender Clarification)を通じて発注者への確認を行い、積算条件と実行条件の齟齬を事前に解消します。
2. 提案書提出計画と作業分担
BIMがプロジェクトの遂行に与える影響をクライアントチームと共有し、技術提案書の作成に考慮されるようにします。
プロジェクトチームとBIMチームの構成やコミュニケーション、ワークフロー、作業ツール、提出物の承認プロセスなどの方向性が整理できたら、具体的な提出物の作業計画を立てます。
3. 提出物の準備
Pre-BEP(Preliminary BIM Execution Plan)は、ISO 19650に基づく要件として求められる場合があります。 Pre-BEPの提出は2018年のISO19650発行以前にもありましたが、ISO19650はベストプラクティスを反映したものだと考えています。
施工入札の場合、競争力のある施工計画を説明する4Dシミュレーションの提出物もあります。 その他、BIM提案書、BIMアセスメント、BIMポリシー、過去の作業例などをクライアントと協議し、担当作業が滞りなく準備され、BIMに関する提案が一つのセールスポイントとなるよう業務を遂行します。
4. 提案書提出後とプロジェクトの受注
発注者はショートリストを作成し、入札者を招待してプロジェクトの実施案を確認します。 入札者が構成したプロジェクトチームの能力を対面インタビューでチェックし、キーパーソンであるBIMマネージャーも発注者の質問に適切に対応します。
技術力が確認されると、金額の確認と調整を経て発注者は受注者を決定します。 当社は技術的な指示と過去のケーススタディを基にBIM分野をサポートします。受注者特定と共に始まる動員期間は、BIMチームの主要メンバーがプロジェクト設定を準備し、実務チームの業務開始に万全を期すことを目的としています。 BIMチームの立ち上げが遅れると、業務の進行における大幅な手戻りとコスト増大を招きます。 特に施工プロジェクトでは、初期に必要な施工情報を施工チームと早期に協議し、タイミングを逃さないように注意する必要があります。
まとめ
BIMのコスト的な比重が(特に施工入札の場合)大きくなくても、全体業務への影響は大きいです。
当社は各プロジェクトを独自のものとみなしています。 例えば、既存の発注者が次のプロジェクトのために修正されたEIRを提示することもあり、同じ建物タイプでも、当社クライアント(設計者・施工者)のBIMスキルが異なる場合があります。
したがって、入札準備からプロジェクトBIMの実行に至るまで、要件を十分に反映し、最適なBIM実装ソリューションのためのカスタマイズされたアプローチを適用します。 これには、(以前のブログ記事で説明したBIMプロセスマネージャーを含む)BIMコアチームの構成や、BIMアドバイザリーサービスの提供範囲の設定などが含まれる場合があります。
直近のデータセンタープロジェクトの業務は、Pre-BEP作成を含む入札支援を行いました。 発注者は外資系で、入札書類およびプロジェクトは英語で作成されています。 過去のいくつかのデータセンターも海外の発注者であり、プロジェクトの公式言語は英語で進められました。
海外プロジェクトの設計提案書作成、施工提案書作成および入札提案書評価など、過去の経験から、入札には人的資源と多大なコストの投資が伴うことを当社はよく認識しています。 応札段階でのパートナーシップは様々な形で実現可能で、貴社の入札準備に参加し、質の高いプロジェクト受注を確実なものにするためのパートナーとして、プロジェクトの成功を実現します。