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株式会社ヴィックの技術ブログです。

2024年 年頭のごあいさつ: 今年の展望

株式会社ヴィック / シンテグレートジャパン合同会社代表の渡辺です。先週は昨年の振り返りについて書きました。

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今回の記事では、今年の展望について書いてみようと思います。

まず日本の建設業のDX関連をとりまく状況として、国交省のBIM加速化事業に昨年度の80億円から縮小されたものの、来年度も60億の予算を付けることが昨年末に発表されました。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001716006.pdf

昨年のArchiFutureのパネルディスカッションで国交書の宿本尚吾氏が熱く話されていたように、国策としても相当な覚悟でBIM化をバックアップしています。これに呼応するように、業界のBIM化への取り組みもステージが変わってきました。これは当然弊社の事業にも追い風にしたいところです。昨年あたりからアナウンスしているところですが、弊社の事業展開としては、これまでの個別最適化をプロジェクト全体での最適化に繋げる活動を展開していきます。つまり、設計事務所やゼネコンに対する、Revitを中心とした一般的なBIM案件対応や導入サポートや、複雑形状案件におけるサブコン対応、または各ステージでのビジュアル制作といった、個別ステージでの最適化から、それらが連動しながらプロジェクト全体での最適化を実現するための活動を行っていくということになります。そのためには「オーナーBIM」の展開が鍵となります。

オーナー BIM

全体最適化の鍵と申しましたが、まだ啓蒙活動が重要なステージだと考えています。そのため、まずは様々な媒体で登壇や投稿を継続して行います。プロジェクトとしては、発注者の視点からの有意義なBIMを実現するため、EIRの発行などBIMのプロセスを形式上ではなく実利的な意義のあるかたちで行いたいと考えています。これまで、国外事例でのマネジメント文書をそのまま転用したために、国内での受注側の技術的環境から形骸化してしまう事例をいくつか見てきました。オーナーの立場からのBIMではありますが、直接のクライアントだけでなく受託者や受注者とも協調して業務にあたれるよう心がけたいと思います。また、プロジェクトライフサイクルの中で竣工前の建設段階と竣工後の資産管理段階があります。当社は建設段階を中心とした業務に携わって来たことから、資産管理段階に関する知見は相対的に薄いため、より包括的・高品質なサービス提供を目指し、2024年以降長期的な視野で社内での研究を強化していきたいと考えています。

設計施工 BIM

これまでの設計会社やゼネコンのBIM推進はEIRがない中でのBIM活用となっていました。つまり自身の業務範囲内の改善や効率化ということになっていたはずです。しかし、今後、EIRがオーナーから発行されるようになると、それに対応したBIM活用が必要になります。まずはEIRを読み解き、BEPを書き、オーナーに承認してもらいそのルールに沿ったBIM活用になっていきます。文章にすれば簡単ではありますが、既存の仕事のやり方や組織体制にまで影響が及ぶことは必至で、それは容易いことではありません。つまり、弊社のサポートもその対応が中心になってくると想定しています。具体的にはBEPの整備とその運用サポートが多くなってくると想定しています。弊社はもともとEIRとBEPなきBIMは本来の姿ではないと発信してきており、EIRからBEPの作成、その運用をサポートできる体制を数年前から整えておりました。一昨年までは、この部分に関してのクライアントからの興味はそれほどでもありませんでしたが、去年あたりから徐々にEIR/BEPの言葉が流通し始めました。今年からは、BIM推進サポートの中身が変わってくると思います。
具体的には、BEPの整備をはじめとして、BIMによる確認申請等の省力化、また、FMへ連携等、これまでのモデルを作るだけのBIMから、全体最適化へつながるBIMへのサポートを進めて行ければと思います。

生産設計BIM

昨年は大型案件の竣工が相次ぎましたが、今年は万博案件も施工が進んできており楽しみなところです。生産設計BIMは、主に複雑形状を取り扱うBIMです。これまで木造、鉄骨、ガラス、プレキャストや現場打ちでのコンクリート系の素材などのプロジェクトに関わってきましたが、昨年から膜を使用する案件を多く経験し、これでほぼ全ての素材を経験したと考えています。素材が変われば設計や施工も変わり、最適化を含むデータ製作やデータマネジメントの手法も変わります。プロジェクトのサイズも内装から超大型案件まで経験してきました。日本の建設業において、複雑形状に関してここまでの経験値をもつ組織は弊社を除いて多くはないと思います。今後はさらなる業務の効率化と高いクリエイティビティを両立すべく、これまでの経験値や暗黙知を集約していきます。
また、これまではサブコンの生産設計業務に並走してデータを製作することが主な業務でしたが、今後は、設計業務や製作現場との連携をより高めていきたいと考えています。業界として弊社のようなスキルへの理解がまだ十分とは言えず、非効率な仕事がどうしても発生してしまいます。これにはお互いの業務への理解が欠かせません。
これまでは外装のサブコンがクライアントとしては圧倒的に多く、つまり、生産設計段階や施工段階からのサポートが殆どとなっていましたが、今後は組織設計事務所やゼネコンからの受注も増やし、プロジェクトの上流から下流までの継続的なサポートを提供していきたいと思います。これは、オーナーBIMからつながる全体最適化への貢献にもつながるものです。

ビジュアリゼーション

オーナーBIMがプロジェクト全体の方向性をつくるビジネスであるとすれば、ビジュアリゼーションは各ステークホルダーやフェーズをつなぐ潤滑油のような役目を果たすと思います。近年のデジタル技術の発達により、従来のパース製作だけなく、様々な表現が可能になってきました。また、AI技術の進化により、美しいクオリティのアウトプットが一瞬で大量に生成できるようにもなりました。
そんな中、ヴィックのビジュアリゼーションチームの目指すところは明確です。圧倒的なクオリティと高いコミュニケーションによるサポート、そして弊社のBIMチームとの高度な連携です。生成AIによるビジュアル製作は設計事務所を中心に活用が始まっていますが、現時点ではデザイン検討段階での利用が中心です。しかし、実際のクリエーションでは主体性を持って考える人間がまだまだ主役です。そんな中、我々が考えるクオリティとは、単に美しい、早いだけのビジュアルではなく、人々のクリエーションの痕跡が見られるようなものを理想としています。クリエーションはコミュニケーションと言ってもいいでしょう。仕事の質はコミュニケーションによって大きく変わります。ヴィックのビジュアルは、関わった人間が納得して自信をもって表現できるコミュニケーションツールでありたいと考えています。この部分は弊社のPMVVにもあるように、ビジュアリゼーションチームだけでなく、弊社のすべてのビジネスモデルで大切にしているところです。アウトプットは技術の進歩とともに変わりますが、この本質は今後も変わりません。
具体的な業務方針としては、建築に限らず都市計画や土木設計など分野にこだわらず、コンぺ等に向けたいわゆるビジュアル制作だけではなくコンセプトを表現するビジュアル制作や、デジタルモックアップや施工手順動画といった施工段階でのサービスなど、建設プロジェクトにおける幅広いフェーズへのサポートを拡充していきます。

ここまで各ビジネスモデルの展望をお話ししましたが、その他の業務方針に関してもお話ししたいと思います。

対外発表

これまではレクチャーに呼んでいただき、そこで話すということが殆どでしたが、今年はこれまで以上に我々発で何かを発信出来ればと思っています。具体的には建築学会、建築情報学会といった学会への論文や報告の投稿、また、このブログの更新や自社企画の座談会などの開催などを通して、我々の学びを業界へ還元していくことができればと考えています。
これまでもレクチャーや座談会、寄稿依頼などお受けしてきましたが、準備は苦労しますが毎回必ず学びがあり有意義な時間を過ごすことができました。お気軽にご声掛け頂ければ幸いです。

PMVV

振り返りの記事でも触れていますが、社員全員で決めたPMVVに対して、具体的行動や姿勢の体現を示し、それを会社として評価する仕組みの策定というのが経営陣としての近々の目標です。現在、人事評価システムを新しいものにすべく整備を進めていますが、PMVVへの評価もここに組み込まれる予定です。そして、評価する仕組みの運営とともに、PMVV がよりカルチャーとして浸透するようなアクションを取っていければと考えています。

ヴィックの PMVV はこちらの記事で紹介しています。
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最後に、2024以降の会社の方向性

2015年に発足した会社ではありますが、これまでクライアントより頂いた難題に応えるべく必死にプロジェクト対応をしてきました。気が付けば20人を超えるチームになり、クライアントもそうそうたる名前が並び、誰もが知るようなプロジェクトを頂くようになりました。しかしながら、我々の目指すゴールはまだ先にあります。我々はBIMという技術を中心として日本の建設業を次のステージに進める役割を担っていきたいと考えています。そのために一昨年からビジネスモデルとPMVVの整理から着手しました。これらを達成するためには人員も少なくても50人は必要と考えています。しかしながら、そのためには今の段階で整備すべきことがあります。普通の会社であれば普通に整備してある様々な制度が弊社にはまだ存在してないものがあります。あったとしても今のステージには見合っていないものもあります。具体的には人事評価制度とプロジェクト評価制度です。人事評価制度を整えることにより、全員が正しく成長できる仕組みを整えます。プロジェクト評価制度があれば、プロジェクトから正しく学び、次のプロジェクトへ活かすことができるようになります。幸いなことに、今いるメンバーのモチベーションは高く、成長への意欲も強いと感じています。そういった気持ちを正しい制度でサポートしていくことで、より強い個人をつくり、結果的には強いチームになり、クオリティの高いサービスの提供出来るようになり、さらに良いプロジェクトを呼び、引き続き優秀な人員に来てもらえるようになります。

このような良い循環を作り、会社としてしっかりとした土台をつくり、よりクリエイティブな仕事に集中し、より飛躍できる年にしたいと思います。

以上