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株式会社ヴィックの技術ブログです。

BIMの2D化

はじめに

こんにちは。チャーリーです。 数年前、アンタリアやパムッカレなどのトルコの名所を両親と一緒に旅行する機会がありました。 私は仕事をする国が変わる度に旅行に行っていましたが、このトルコ旅行では両親のドキュメンタリー動画を作るという、いつもとは異なる目的がありました。 写真をたくさん撮る過去の旅行とは異なり、旅行の過程で動画をたくさん撮影しました。 動画では被写体が連続的に動き、見えない音も一緒に記録され、瞬間の映像だけを記録する写真よりはるかに多くの情報が生々しく記録されます。 2D図面を写真、BIMモデルを動画に例えると、ある程度"Make sense"しませんか?^^

あちこちで聞く言葉

BIMと2D図面の関係はどうでしょうか? これまで様々なプロジェクトを経験してきた中で思い出す言葉があります。
「2D図面だけじゃなくBIMモデルまでも追加でチェックしなければならないなんて、仕事量が多すぎます。」
「2D図面の一般詳細図を基に施工会社が勝手になんとかしてくれるので、3Dで隅々までディテール検討をしてすべてを解決する必要はありません。」
「私は2D図面だけでも頭の中で十分に3Dに具現化して検討することができます。」
「私たちは今回のプロジェクトでBIMを適用して、2D図面を作ることが目的です。」
「私たち専門分野チームはBIMを使わなくても2Dで十分ですので、皆さんだけでやってください。」
「2Dで描く方がBIMを使うより早いです。」
「BIMでチェックするにはログインもしなければならないし複雑なのでスクリーンをキャプチャーしてPDFで送ってください。」
読者の方の中で共感する言葉もあるし、そうではないと思う言葉もあると思いますが...。 このようなフィードバックはBIMの現実を代弁するのではないでしょうか。

2D図面の優先順位

2D図面の地位は、過去数千年の建築の歴史の中で常に堅固に維持されています。 2D図面は契約的に認められ、基準となってきました。
プロジェクトの2D図面とBIMモデルに不一致が発見された場合、2D図面のほうが優先順位が高いことが一般的です。 BIMは2D図面の内容を補助する参考資料です。
このことは、これまで接してきた様々なEIRまたはBIM要件に書かれていたり、契約書を構成する他の文書(例:設計条件)に表記されていますが、BIMを契約上優位に置いたアプローチを使った例があるのかどうかは分かりません。

忙しい施工現場では...

2D図面の方がより慣れている現場の状況もあると言えますが、現場でもBIMデータの活用に対する意志が強いケースもますます頻繁に目撃されています。 現場の施工チームのように、複数回確認された正確な施工データを実用的に活用したい要員が他にいるでしょうか? 彼らにとっては「2Dにする」「BIMにする」が重要なのではないかもしれません。

現場が高性能PCで武装したBIMステーションでない場合を想像してみてください。 施工現場を訪問中に発見するA3用紙のBIMイメージ...。 図面を見てデザインを確認するために描いた3Dスケッチ...。
どんな表示方法かではなく、データへのアクセスのしやすさこそがデータを届けるときには何よりも重要ではありませんか?アクセスがしやすければ現場チームは必要に応じて3Dや2Dを柔軟に活用し、BIMデータの存在がそれを可能にするのです。
そのため、現場の場合はBIMデータのアクセシビリティによって、2D図面への依存度は著しく変わることがあると思います。

BIMto2D

BIMの成果物として2D図面

海外のBIMプロジェクトを見ると、成果物の中で最も優先するのは3Dコーディネーション、すなわち干渉チェックです。 よく3DBIMと言いますよね。 「BIMをする=干渉チェック」から始まると言えます。 もう一段階進むと、4DBIMや5DBIMなど(時間や費用情報を追加したBIM)となります。 2D図面の作成を含む成果物は、目標として定めたレベルの3Dコーディネーションが終わった後に、完成度や効率性を引き上げて作り出す結果の成果物です。
一方、日本のいくつかのBIMガイドラインの様式を見ると、BIMコーディネーション関連のチャプターが含まれていない場合があります。 そして、BIMツールで2D図面をどのように作成するかに関心が高いという感じがします(ここで2D図面作成とは、すべての内容が100%近くBIMツールで完了することを意味します)。このようなアプローチは、一部の図面はBIMツールにし、一部は既存の2Dツールで作成するため、マルチソースのプロジェクト情報が存在する確率が高くなります。 一度このように進行して時間が経つと、BIMと2Dの不一致が誘発する様々なリスクが大きくなります。 BIMツールを運用できるリソースが不足していれば、残り少ない提出期限までに2D情報をBIMモデルに反映し、図面を修正する業務負担が重くなるでしょう。

ダイヤグラム1: 2Dベースの図面作成とBIMベースの図面作成が平行に進行 (青: 2Dベースのリソース、オレンジ色: BIMベースのリソース)

ダイアグラム2: BIMをシングルソース化して2D図面を作成 (青: 2Dベースのリソース、オレンジ色: BIMベースのリソース)

*ベース図面: BIMモデルで作られたラインと自動的に入る寸法及び注釈

シングルソース化した2D図面の作成は、BIMで図面の下図を用意し、2Dツールで図面を完成させる流れです。 効率性の高い一部の図面は、BIMツールで完成します。
BIMに基づく下図は、設計チームが利用するために信頼できるものであるべきであり、BIMデータの品質を高いレベルで管理することによって実現されます。

ところで...

2つのダイアグラムの本当の違いは、BIMがインテグレートされた設計プロセスであるかの観点です。
BIMをシングルソース化するということは、設計チームの業務がBIMプラットフォームを通じて持続的に展開されていくということです。

ダイアグラム3: BIMがインテグレートされた設計プロセス

現在、クラウドベースのCDEは資料を共有する基本的な機能の他に、プロセスを管理するすばらしい機能がますます強化されています。 作業中の資料の共有範囲やバージョン履歴を管理し、設計の変更された部分を自動的に比較でき、問題点の把握および記録やコミュニケーションが3D環境で行われるよう支援しています。 2D図面で解決されていない部分が建物の一部に隠れているなら、結局設計者は後からでも解決しなければならないでしょう。
BIMツールを既存の2D作成ツールの代替物としてではなく、プロセスの代替物として扱わなければ、既存の業務方式よりも仕事だけが増え、効率性も落ちるため、先に話したようなフィードバックが出てきます。
BIMツールを直接扱うリソースを確保することも重要ですが、プロセスを理解し、実務に必要な機能に関する担当業務に合わせたトレーニングを行うことがより重要です。 このような内容をまとめて、一般の設計者/エンジニアが知っておくべきBIMデータの実務活用指針のようなガイドがあっても良いでしょう。

オープンな心で...

日本でもずいぶん前から良いBIM関連ガイドラインと参考用テンプレートがあふれ出ています。 2025年大阪万博もBIMの設計段階適用を現実を勘案した水準で必須化していましたし、建築設計三会のBIMガイドラインに基づきビジネスモデルによって変更を加えてスタンダードな文書を作ったという会社もあります。 単純化したEIRとBEPも一例ではないでしょうか。 BIMがどのように日本化されていくのかを判断する尺度となるこのような資料を用いて、我々は海外の経験と比較しながらどのように望ましいBIMプロセスを実現するかを常に研究しています。 BIMを2D化するのも一つの壁を越える過程かもしれません。 BIMが2Dに取って代わるには、官公庁の建設行政の変化、慣習のように維持されてきた実務習慣の変化、新素材による画期的な施工技術の開発など多くの変化が必要でしょう。
ただし、現状でもBIMをシングルソース化するプロセスへと改善し、その結果として2D図面を作成し、またプロジェクトチームのBIMデータへのアクセシビリティを向上させることは十分可能だと思います。
BIMは既存の実務プロセスを手入れしなければならないので、手描き図面からCADに作図のツールが移るよりもっと広いオープンな心が必要です。
勇気を出して心をオープンにしたなら、おそらくその次の段階は思ったよりも簡単にできるでしょう。