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株式会社ヴィックの技術ブログです。

BIMで世界旅行

最近、飛行機の値段がかなり高いですよね? コロナがだいぶ緩和されて旅行が可能になったのはいいですが、手ごろな値段の便もたくさん出てほしいものです。 今日は、BIMをテーマにマウスを持って、お金のかからない方法で世界のいくつかの場所を回ってみましょう。 文章はできるだけ気軽に読めるように書こうと思います。

この資料は、去年社内ミーティングのためにインターネットと社内ライブラリーを参考にして作ったものです。

どこに行くか、世界地図から選んでみましょう。

以下の画像は直近の資料です。去年の資料と比べてみると、日本、EU、中国に注目すべき進展が見られます(0~2ポイントアップしています)。

https://ir.nemetschek.com/download/companies/nemetschek/Factsheet/2302_Factsheet_NEM.pdf, February. 2023

北欧

さて、今の時期ならオーロラが見られそうな北欧から始めます。

ノルウェーは、政府のプロジェクトを主管するStatsbyggがすべてのプロジェクトにBIMの使用を義務づけています。 2008年にはすでに6つのBIMスタンダードを導入しました。

フィンランドは、1950年代から建設でのイノベーションをリードしようと試みており、すでに長い歴史を持っています。 BIMを2001年から適用し始めており、部門別に整理されているcoBIMシリーズ(Common BIM Requirements)はよく作られたBIM要求条件だと思います。

COBIM Standards

デンマークは、2007年から公共建築に対してBIM使用の義務化をした最初の国です。 85%の建設関連企業がBIMを使用しており、FM分野でも運用が進んでいます。

スウェーデンでは、2000年半ばからエンジニアリング会社中心にBIMが使われ始めました。それ以来、最も先進的なBIMの活用が実務ベースで行われています。

シンガポール

少し暖かいところに移動しましょうか。 日本の建設会社もたくさん進出しているシンガポールです。

シンガポールのBuilding and Construction Authority(以下BCA)が発行したSingapore BIM guideは、多くのBIM関連の図書とEIRで参考に引用される資料です。 政府は建設業の生産性を25%向上させることを目標に、5,000㎡以上のプロジェクトに対してBIMによるRegulatory Submission(建築確認審査)を義務づけました。 これは建設された延べ床面積の92%に当たるものだそうです。

また、BCAでは”Integrated FM &Aggregated FM”を基金を用意して支援するなど、スマートFMのためにも努力をしています。

アメリカ

海を渡ってアメリカに行きます。

US Army Corps of Engineersは、2006年からプロジェクトに参加する施工会社にBIMの使用を義務づけています。またアメリカでは、National BIM Standardなどの多くのBIMガイド資料が発行されています。アメリカという国の特性上、連邦政府主導のBIMの義務的な使用はありませんが、多くの組織と地域政府では義務になっています。

※例えばLACCD(ロサンゼルス·コミュニティ·カレッジ·ディストリクト)は、納税者が承認した債券を通じて資金を調達する持続可能な建築プロジェクトにBIMを使用することを要求しました。 このプロジェクトには学区の9つのキャンパスに対する60億ドル相当の工事が含まれており、これまでBIMを通じてLACCDは工事費用1200万ドルを節減しました。 

米国の主要な設計者の100%がBIMを使用しています。私がデザインレビューをした中東のプロジェクトにBIMの義務付けはありませんでしたが、アメリカの設計者はBIMを通じて設計をしていました。 アメリカの施工会社の報告資料によると、BIMを通じて労働生産性25%向上、労働費用25%節減、5%工事費節減、5%工期短縮の効果があったそうです。

National BIM Standards US

LACCD BIMS

イギリス

大西洋を渡ってイギリスに行きます。

英国政府もまた、公共プロジェクトを皮切りにBIMの義務化を開始しました。義務化は他の国よりは少し遅い2016年からでしたが、BIMに関わるあらゆる標準化をリードしており、実務で多くの案件が一般化されてきています。 政府が発刊したConstruction2025では、建設業のビジョンが具体化され推し進められています。

Construction 2025-UK

以下に要約したUKBIM FrameworkのISO 19650シリーズは、現在ほぼすべてのEIR、BIM関連の図書に参考にされています。 日本のプロジェクトのEIRでも、ISO 19650-1、ISO 19650-2は多く言及されていますね。

  • ISO 19650-1 - 建物及び資産情報を管理する方法についての概念と原則を説明し、推奨事項を提供します。
  • ISO 19650-2 - 資産ハンドオーバー段階で情報管理要件を提供します。
  • ISO 19650-3 - 資産の運用段階に関する情報管理要件を提供します。
  • ISO 19650-5 - 建物情報モデリング(BIM) 内の機密情報のセキュリティを重視した管理に関する要件を規定しています。
  • PD 19650-0 - ISO 19650への転換に対する指針を提供し、UKBIMフレームワークソリューションパックに含まれています。

ドバイ

最後に、建設部門でのギネス記録を多数持っているドバイです。

ドバイ政府は2013年から建設プロジェクトにBIMの義務化を開始しました。 2015年にはBIMの適用対象をさらに強化しました。その内容を簡単に比較してみると、次のようになります。

                               2013年

                             2015年

·   40階以上の建築物

·   面積が300,000平方フィート以上の建物

·   病院や大学のような専門建物、

·   外国事務所によるすべての建物

·  20階以上の建築物

·  面積が200,000平方フィートを超える建物及び施設及び団地

·  病院や大学などの建物や特殊施設

·  外国事務所によるすべての建物とプロジェクト

弊社で行ったプロジェクトでも、建物の確認申請に必要なデータ作成をBIMでサポートしたことが浮かびますね。

ファサードのガラス面積算出、及び床面積の算出

中東では、BIMを国家資産を体系的、かつ効率的に管理するために必須のツールとして認識しています。 居住人口に占める自国民の割合が非常に低い特性上、国を運営する上でDX化を見過ごさなかったのだと思います。 比較的短い期間で国家システムを樹立したという背景があるため、デジタル政府への早い転換が容易だったのではないか、という意見もあります。

Dubai Images -Google

まとめ

ここまで、とても簡単ではありますが、BIMを通して地球を一周してみました。 ここまで取り上げてきた国を見るとわかるように、BIMを定着させるには、BIMを義務化する政府のリーダーシップが最も効果的です。

このブログを執筆する際に参考にした資料はここに挙げた以外にもたくさんあり、執筆の過程で引用の記載が漏れたものもあるかもしれません。また、万が一内容に誤りがあれば修正いたしますので、ご指摘を頂けるとありがたいです。

ブログとしては少々長い文章であったかと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。