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株式会社ヴィックの技術ブログです。

2024年 年頭のごあいさつ: 昨年の振り返り

皆様明けましておめでとうございます。

株式会社ヴィック / シンテグレート合同会社代表の渡辺です。年頭ですので、昨年の振り返りと今年の展望について、2回に分けて書いてみたいと思います。

ヴィック / シンテグレートとしましては、2023年は、ここ数年取り組んできたいくつもの大型プロジェクトがそれぞれ竣工を迎えることができたという印象です。お客様側の担当者より無事に竣工しましたという連絡を頂いたり、SNS等で関わっていたプロジェクトの写真が流れてきたりするたびに、達成感や喜びを実感することができました。一方で、我々の関わっているプロジェクトの規模が大きくなり、また、企業のBIM推進サポートなど、責任の大きさも感じるようになってきました。

建設業界全体としては、国交省の後押しもあり、BIM活用を中心としたデジタル化を推進していきたいという気配を強く感じています。しかしながら、プロジェクト単位やフェーズごと、クライアントごとや部署ごとに BIM 活用への取り組み方に差ができているとも感じました。同じプロジェクトでも関わるプレーヤーの足並みが揃っていないことは昨年の年始の記事でも描きましたが、改善の兆しが見えてきているものの、やはりゴールへの道のりは長く遠いと言わざるを得ません。

以上ざっくりと所感を書いてみましたが、まずは一昨年に事業モデルの整理・言語化をすすめた株式会社ヴィックの事業モデルごとにそれぞれ振り返りを書いてみます。

オーナー BIM

業界を展望すると、国交省の後押しや万博での発注者からの資料提示もあり、EIR/BEPなどの言葉は少しずつ普及し始めていると思います。しかし、用語は知られるようになった一方で、概念の正確な理解やオーナーの事業に資する成果を挙げるところまで取り組めている事例はまだ少ないように思います。当社としても、BIM マネジメントというものを建物オーナーであるお客様に提案し、一緒に取り組み始めることができた段階です。この領域はこれからもっと加速していきたいと感じていますが、まずは順調に走り始めていると思います。

設計・施工 BIM

大手設計事務所の BIM推進のサポートや、大手ゼネコンの実プロジェクトでのサポートを行いながら、業界全体としてBIMデータの効率的な活用に関心が集まっているという印象を受けました。BIM推進のサポート業務に関しては、大手企業では数年前のゼロからのサポートは少なくなり、BEPのアップデートや浸透、BIMマネージャーの育成、CDE(Common Data Environment)の整備やDynamoの効果的な使い方といった高度なものにニーズが移ってきています。一方で、中小企業からの問い合わせも増えており、これまでの大手主導のフェーズが変わってきている印象もあります。もちろん国交省主導のBIM加速化事業の貢献度は大きいと思います。また、設計や施工会社だけでなく、確認申請でのBIM活用もスタートしており、やはり業界全体での取り組みにフェーズが変わってきていると感じています。

生産設計 BIM

万博プロジェクトや再開発などをはじめとした、複雑形状のプロジェクトは今年もいくつもお話を頂き、お客様と共に取り組むことができました。いくつものプロジェクトをこなす中で、社内でのノウハウの集約や、新たなチャレンジをできたので、チームとしての力の高まりを感じています。昨年は、膜素材の案件を複数こなし、これまでの木、鉄、ガラス、コンクリート系に加えて、新たな建材のプロジェクトを経験することができました。生産設計において、素材の特性を知ることはデータ製作においても非常に重要で、単一素材だけでなく、複合的な組み合わせにも適切な設計サポートができる体制が整いつつあると感じています。また、現場や工場での作業を間近でサポートする機会もあり、複雑形状のプロジェクトを最初から最後まで並走できるチームに近づいていると思います。

ビジュアリゼーション

ビジュアリゼーションに関しては、これまで以上に指名を頂くことが増えてきました。「勝負案件なのでぜひお願いします」というような託され方をされることが多くなり、ヴィックのクオリティに大きな信頼を頂くことが出来ているのではと嬉しく思っています。一方で、設計者以外でも、デベロッパーや行政関係者からも連絡を頂きました。その他にも施工手順を示す動画の製作や、形状やマテリアルをなるべくリアルに確認するためのデジタルモックアップなどの仕事も多くいただき、様々な建設フェーズのビジュアルを製作し、自分達としてもアウトプットや表現の幅を増やせた年であったと実感しています。弊社だけではないと思いますが、金額面も以前より改善され、また、5年前では建設業でよくあった今では言えないような無理な働き方をしないと対応できないような状況も改善されてきたと感じています。もちろん働き方改革の効果もありますが、社内でも効率化に本気で取り組んだ結果だと思います。我々のPMVVで決めたミッションでもありました。

神宮前駅西街区再開発 / 名鉄都市開発株式会社

ビジネスモデル以外の観点での振り返りもいくつか書いてみます。

レクチャー

日本建築学会建築生産小委員会主催の「建築生産セミナー」や、ボーンデジタルでの講演、某設計事務所での新人研修など、いくつかの機会に恵まれ、我々の仕事や、その中での問題意識や取り組みに関してお話ししました。
特に建築生産セミナーでは、近い分野の有識者の方とのディスカッションを含めて、非常に有意義な時間でした。また、ヴィックのすべてのビジネスモデルにおいてお声がけを頂くようになり、それぞれのビジネスモデルにて一定の評価を頂けているのではと感じています。

建築生産セミナーでの登壇に関しては、下記の記事に詳しく書いています。
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教育活動

昨年に引き続き、私渡辺の慶応SFCでの非常勤講師や、何人かの社員も非常勤講師や学術支援職員を通じての教育活動に携わることができました。私自身は慶応SFCにて「建築技術論」と称して、建築構法を主軸にしながらも、デジタル技術が構法的にどのような変化をもたらすのか、という内容で講義と演習を行っています。ヴィックとしては、各ビジネスモデルごとで教育に携わろうという目標があり、ある程度は目標が達成されてきていると感じていますが、これは継続的に取り組んでいきたい分野です。
また、教育機関での活動以外でも、会社としてインターンシップの受け入れをしていますが、過去に来ていた学生から、途中からやっとなんとなく仕事の全体像をつかむことができたというフィードバックが上がっていたので、まず全体像をざっくりと把握できるようなプログラムを作成しました。参加した学生からも概ね好評だったので、今後も継続していく予定です。

インターンに関しては、下記の記事に詳しく書かれています。
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ブログ

今読んで頂いているブログについては、1年間ほぼ毎週更新で55本もの記事を書くことが出来ました。読んでいます!いつも楽しみにしています!と声をかけてくれる方が増えてきました。今年も皆様に読んでいただける記事を書けるように社員一同頑張っていきたいです。
さらにはブログ発のトークセッションをいくつか開催することができました。杉原聡さんや石津優子さんをはじめとする業界をリードする方々に快く参加いただき、限られた時間ではありましたが議論できたことは素晴らしい成果であると思います。ブログとトークセッションに関しては、ヴィックで定めたPMVVの中の「私たちは分かち、ともに学ぶ」の実践であり、これも継続的に取り組んでいく予定です。

PMVV

ヴィックでは、2022年に社員全員参加でのワークショップを経て PMVV を決めました。しかしながら、全社的な浸透度はまだ目標に達してはいません。ある程度は想定していましたし、様々な理由はあると思いますが、理由のひとつとして、それらをベースに働く姿勢を評価する仕組みの策定が追い付かず、決めたPMVVに対して各個人がどうであるかということを測ることができていないことがあると考えています。これについてのアクションは今年前半の社内的な一番のターゲットと考え、具体的なアクションを起こしています。まあ、どちらかというとシャイな社員が多く、私も含めてこういうのを声高らかに唱えることに対する気恥ずかしさもあるとは思っていますが。最近、社訓なるものを額縁に入れて壁に掛けてあるのにはそれなりに意味があるのだなと私自身も思ってきました。

育休

最後になりますが、会社として大きかったことの一つとして何人か社員が会社としては初めて育休を取得したというものがありました。大変な部分もありましたが、仕事の非属人化や残った社員の成長などプラスのことも多く、非常に良い経験になりました。今後も希望する社員に対して取得を認めていこうと思います。

育休に関しては、下記の記事に詳しく書かれています。

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以上、いくつかの観点でそれぞれ振り返りを書いてみました。業界としてはデジタル技術を活用した効率化や新たな価値創出が盛り上がりを見せた年であったのではと思います。会社としては、一昨年からの継続的な取り組みの成果と課題が見えてきた年であったと思います。

次回の記事では、2024年の展望を書いてみようと思います。