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株式会社ヴィックの技術ブログです。

2023年 年頭のごあいさつ: PMVVと今年の展望

ヴィック・シンテグレート代表の渡辺です。前回のブログでは事業分野の整理と、各分野の昨年の総括について書きました。

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今回は会社のPMVVと、今年の各事業の展望について書いてみようと思います。

PMVVの策定

経営コンサルティングを受ける中で、会社としてPMVV(Purpose, Mission, Vision, Value)を決める必要があると理解しました。
そこで、社員全員参加のワークショップを行い、時間をかけて一つひとつ決定していきました。今会社に所属している全員に、企業のこのステージでしか経験のできないプロセスに参加してもらいたいと考えたからです。

Purpose=会社の存在理由

「テクノロジーと感性とコミュニケーションで建設の不可能を可能にする」

以下のようなステートメントもあわせて策定しました。

建設は人類最古の営みの一つであり、いつの時代にあっても我々の暮らしに本質的なものです。そこでは常に革新がなされ、時に穏やかな、時に絶対的な感動が生み出されてきました。我々はその革新と感動の歴史に携わり、建設を次のステージに進めていきたいと考えています。
そのためには、新旧・分野を問わず知識を深め、テクノロジーを学び、つなぎ合わせ、新しいソリューションを生み出していかなくてはなりません。
また、素晴らしい建設の創造には感性が欠かせません。感性があるからこそ感動を生む仕事をすることができるのです。我々は様々な経験、体験から感性を育むことに努めます。
そしてどんなに素晴らしいテクノロジーと感性をもってしても建設で革新をなし、感動を生み出すことは簡単なことではありません。建設は多くのスペシャリストが関わる壮大なプロセスでもあります。そこには対話を重ね、相互理解を深めるコミュニケーションが欠かせません。
建設で革新と感動の歴史を創り、世界を幸福で満たすことを目指して、我々はテクノロジーを学び、感性を磨き、コミュニケーションに努め、不可能を可能にするトップランナーであり続けたいと思います。

Mission=Purposeを実現するための行動

  • 10年以内に10%の建設費低減、建設会社の10%利益増、建設業界の労働者の10%の労働時間削減をめざします。
  • 先進的プラットフォームによって情報の流れをマネージメントできるBIMチャンピオンを5年で100人育てます。
  • 10年で世界トップレベルの10個の建築プロジェクトに参画します。

「建設の不可能」の達成は、建築や構造物を竣工させることだけではありません。落ち込んだ建設業の労働生産性を上げ、建築主、施工者、建設業界の労働者の待遇向上を果たすこともそれに含まれるはずです。

その達成にはテクノロジーと適切なマネージング・メソッド、それらを使いこなせる人の育成が欠かせません。BIMチャンピオンとは、「技術的なスキル、理論的な知識、およびBIM実装を改善するチームをリードして導くための動機を持っている人」だと私たちは考えています。スキル、知識、動機の三つを兼ね備えた人材の育成が急務です。

そしてこれらの人材や技術によって、驚くような建設プロジェクトに参画し、実現の一翼を担いたいとも考えています。このようなプロジェクトに呼んでもらえるような実力と信用を常に持ち続けなければなりません。

Vision=Missionを果たすために3年、5年、10年後に目指す姿

  • 建設のパラダイムを変え、全体最適化を目指す会社
  • 顧客といっしょに新しいことにチャレンジして共に成長していく会社

前回のブログでも述べましたが、BIMを使って仕事をするうちに業界の「全体最適化」を目標にしなければならないと考えました。そのためには建設業界の大きな構造改革、パラダイムシフトが必要と考えています。

しかし、新しいことを始める、何かを変えるということはやはり大変なことです。また、弊社だけで推進できるはずもありません。クライアントといっしょに新しいことにチャレンジするときには、リードすることもあれば、むしろ貴重な意見やアイデアをいただくことも多くあります。多くの技術が複雑に絡みながら日々進歩している現代では、顧客との関係はそのような”共に成長する”ものであるべきと信じています。

Value=社員が大切にする共通の価値観、顧客や社会との約束

  • 私たちは愉快な冒険者
    • 私たちは未知のことや新しいやり方が好きです。これまでの慣習や常識を気にせず、好奇心を持って変化を楽しみます。同時に、うまくいかなくてもへこたれない忍耐力も持っています。粘り強さは新たな地平にたどり着くために欠かせない姿勢だと信じます。
  • 私たちは直観的科学者
    • 私たちは科学的な思考を重んじます。合理性、客観性、学術的な知識を大事にし、間違いがあれば立場の違いにかかわらずすぐに改めます。同時に直感も大切にします。科学的思考によって磨かれた、あてずっぽうではない感性がときに道しるべになるからです。
  • 私たちは分かち、ともに学ぶ
    • 私たちはチームで支えあうことを大事にします。一人だけで考えることを嫌い、社員それぞれの達成、失敗から学びを得ることを重んじます。そのため、互いに誠実であること、多様性を尊重すること、支えあえる環境を作ることに努めます。社員同士にとどまらず、クライアントともそのような関係性を築くことを目指します。

「建設の不可能を可能にする」ことには大きなやりがいや喜びがありますが、多くの失敗や苦しみも伴います。そのような困難を楽しみ、科学的思考や時に直観、何よりも仲間と支え合うことで乗り切りたいと願って、このようなValueとしました。

以上が我々のPMVVです。この活動に参加して本気で議論してくれた社員を誇りに思っていますし、全員参加という手法が弊社のカルチャーをすでに表していると思います。このような価値観を元に、今後会社を運営していくことになります。

今年の事業展開

最後に今年の事業展開についても、各分野ごとに概要をお話ししたいと思います(まだ詳細を検討している段階ですが…)。

オーナーBIM

これは建築主対象のBIMです。BIMを有効活用して建築主の利益を最大化し、建設の「全体最適化」を成し遂げるカギになると思っています。日本の施主はまだBIMの活用とそのメリットにあまり気づいていません。EIR(発注者情報要件)の策定支援、BEP(BIM実行計画書)の確認などを通して、建築主にBIMの効果を実感してもらうことに注力していきます。

設計・施工BIM

これは設計者・施工者対象のBIMです。RevitやArchiCADを用いて、設計・施工の生産性を向上する業務です。これまでもそうでしたが、弊社では単純なBIMモデル作成にとどまらず、BIMの情報活用に注力していきます。今年もプロジェクトを通じた業務と、会社全体のBIM推進サポート業務が主になるでしょう。また、社員の語学力や経験を生かして、海外の建築主とのプロジェクト遂行もサポートしたいと考えています。

生産設計BIM

わかりやすく言えば、弊社がこれまでおこなってきた複雑形状のファサード関連のBIMです。今年も引き続き重要な事業になりますが、設計や製作との連携をさらに強化し、データマネジメントの知見をさらに深めていかなければならないと考えています。

プレファブBIM

前回の繰り返しになりますが、この分野には弊社が代理店業務を行っているCATIAの活用ポテンシャルがあると考えています。CATIAは航空産業や自動車産業を中心に製造業で広く使われており、工場との連携が良いのです。実際にプレファブメーカーへの導入の動きがあり、自社工業を持っているような建設会社への活用にメリットがあります。この分野は中長期な視点が必要ではありますが、弊社のCATIAを通じた知見を活かしていけると考えています。

ビジュアリゼーション

去年までも多くの著名建築家や大手設計事務所のためのビジュアル製作を行ってきましたが、今年はそれにとどまらず、BIMとビジュアルのワンストップサービスの体制をさらに拡充していきます。また、これまで建設業で培った知見を活かし、ゲームやメタバース関連の業務を増やしていきたいと考えています。

最後に

以上が今年の事業概要でした。こうしてみると手広くやりすぎているような気もしますが(笑)、建設プロジェクト全体でデータ連携を行ってこそ全体最適化を実現できるという思いから、このような事業構成に至っています。今年もさらに各事業の人員を増やして事業の深度を深め、事業ごとの連携も促進し、「建設の不可能を可能にする」ことに邁進していきたいと思います。今後の展開に注目していただけますと幸いです。