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株式会社ヴィックの技術ブログです。

BIMの定義の変化(データ付き3Dモデルではなくプロセスになった件)について

一年ほど前にこのブログでこんな記事を出しています。

blog.vicc.jp

まとまった記事なのでぜひ参考にしてほしいのですが、一点重要な指摘があります。 BIMの定義の部分です。ちょっと情報が古くなっちゃったんですよね。

よそさまのブログを渉猟して、こんなものを見つけました。

www.s-housing.jp

強い表現が並んでいるので、若干読んでいてツライ気もしますが指摘している内容はわかります。

古いタイプのBIMの定義は「3D形状に属性情報をくっつけたもの」ということで、現在の国際標準規格では「情報マネジメントのプロセスであり資産だ」と言っているわけです。もう全然違う話をしているといってもいいと思います。

そう、BIMの定義はこの10年ほどで変化しています。

BIMで大事なことはマネジメント

日建設計の山梨さんが『BIM建設革命』(2009)を書いたり、AIAが『Integrated Project Delivery: A Guide』(2007)を出した頃には、3Dモデルに情報を載せたファイルを一つ作って、設計者も施工者が同じファイルを見るような考え方がありました。

2024年現在、いまでも国土交通省の資料などでは

BIMは、コンピュータ上に作成した主に3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築するものです。

と書いてあります(未来にこの記事からリンクを飛ぶと表現が変わっていることと思います)。

この定義から、現代ではよりプロセス重視、マネジメントを意識したものへと移り変わってきています。

例えばISOでは「意思決定のための信頼できる基礎を形成する、設計・建設・運用プロセスを容易にするための建設資産の共有デジタル表現の使用」をBIMと位置付けています。 cf. https://www.iso.org/obp/ui#iso:std:iso:19650:-1:ed-1:v1:en

これを見ると3Dとも書いてないし、属性情報がくっついているかどうかも気にしていません。

もちろん、3次元の立体がどうなっているのかが重要であれば、3次元形状は作られるし、属性情報を合わせてみることが求められれば「デジタル表現」の実態が「3D+属性情報」という場合もあるでしょう。

しかし、それ以上に意思決定を目的としていることや、デジタル表現が共有されていることの方が大切になってきていることは指摘したい点です。

BIMの話題の中でオーサリング(モデリング、情報入力や統合などの作業)に目が行きがちですが、意思決定のためにどんな情報交換をしたいのかを示すEIRや、共有の場となるCDEこそ重要です。

この記事も1年前に出したものですが、BIMはプロセスであることを強調しています。

blog.vicc.jp

1年であまり状況は変わっていませんが、少しずつEIRを発行する建築主の皆さんやCDEを利用した情報共有を実践するプロジェクトが増えてきている感覚があります。

3Dモデルをもとに図面化をすれば3次元的な不整合は減りますが、他のプロジェクト関係者と共有されない状態で作られた3dモデルにはその後の変更が待ち受けているのではないでしょうか?

せっかく効率的に作図しても、設計の手戻りがあれば全体としては効率化しません。

プロセスのマネジメントが大事なのです。

検索ですぐには出てこないのですが、一昔前にはBIMをBuilding Information Managementと説明する人たちもいた記憶があります。 こっちの方が良かったかもなと時折思います。

おまけ(モデリングのニュアンス)

「おいおい、マネジメントとか言っているけどBIMはモデリングだろ、3Dソフトで形を作ることが中心で何が悪いんだ!」と思った人のために補足です。

モデルという言葉には、現実のものを抽象化して表現するというニュアンスがあります。

例えば串団子モデルなどの構造のモデルを見て、建物が実際にお団子型だと思う人は多分いません。

www.bakko-hakase.com

データモデリングという言葉もあります。

www.ibm.com

BIMはデータではなくインフォーメーションという表現ですが、建築物に関わる情報がどのように交換されるかを分析して整理する行為(OIRやPIR、AIRからEIRを書いていく作業)などはまさしくモデリングなわけです。

3Dモデルとデータモデルが同時に存在することが多いのでややこしいですね。

オマケもつけたところで今回はおしまいにしようと思います。