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株式会社ヴィックの技術ブログです。

半年の育休を振り返って

どうも、しがない会社員、石原です。

優良企業の社員なので育休を取得しました。 半年余りの育休を振り返って、会社の社風が伝わる要素など織り交ぜつつ、転職希望者の獲得という下心で一筆したためようと思う次第です。

育休はとれないものらしい

世の中の男性陣は育休をそもそも取らないし、取っても育児をせずに遊び惚けているとのうわさで、

新生児室の看護師さんが「え、半年もとるんですか?…ご実家の協力とか全く得られない感じですか?」みたいな反応だったので、何となく自分の行動が異常な気がしました。

周りの友人たちも、福利厚生充実のスーゼネ勤務でも父親は三か月とか2週間とかごくごく短い時間しか育休をとらないようです。
(だれかガツンと休んでいる人いたかな?)

「うちの職場だと育休とれないんだよ~」という声も複数聞きましたが、国家の定める制度なので取れないというのもおかしな話ですよね (世の中の情実は理解していますがウチは中小企業だけどなんとかしているんだし)。

この数年、採用人事や後進の育英、業務内容の言語化や組織化(個人として仕事をするのではなくチームへの知的蓄積と共有の文化醸成)に取り組んできたつもりだったので、自分が休んだくらいで仕事が回らないとは思いませんでした。

個々のプロジェクトのなかで見れば、替えの利く歯車でしかないので、自分がいないと回らないというのは思い上がりでしょう。

妊娠期間を利用して十分な根回しをして、人員の配置を調整するともに、数か月かけて手持ちの仕事の内容を誰かしらに共有していたので、お客さまのいる仕事には大きな滞りがなかったはずです。

一方、「鳴かぬなら、いないんちゃうか?ホトトギス」と思って生きているので、会社の中で自分にしかできなそうなことといえば、業務をかなり広い視野でとらえての分析とカイゼンですが、それは数年単位で効果が出るものなので、「半年事務所にいなくても大した影響はないだろう、むしろ自分がいないことで何が止まるか分析できる」くらいの感覚でした。

野望と誤算

さて、いざ休もうとなって実際にハードルだったのは家計でした。

育児休業中は給与が出ませんが、雇用保険から育児休業手当が出ます。 とはいえ、給与が完全に補填されるわけではなく、上限もあるし、時間の経過で減額されます。 特に180日過ぎたところで給与の半額までしか出ないので、これはきつい。

育児休業時に受けられる公的扶助と労働して得られる給与や貯蓄とを天秤にかけると、半年くらいしか休めないなと金勘定をし、 もともと出産から通しで180日の休業を計画していました。

しかし、出産に予定日はあれど、想定よりずいぶんと早く(2か月近い早産)生まれたので産後パパ育休と育休とに分割して取得することにしました。

制度的には届け出の期日や、分割して取得する場合にも一括して申請しなくてはいけないケースと後追いでいいケースなど、割とややこしいのですが、 事前の相談のうえで柔軟に対応してもらえたのは、手前みそながら良い会社だなと思うところです。

育休の合間、妻はぐったりしているし、子どもはNICUに運ばれていくし、『ブラックジャックによろしく』を思い出して不安だったのを覚えています。

実体験

実際に休みに入って、息子も退院すると、ずっと家でおむつ替えやミルク授乳、沐浴を繰り返して、段々脳が縮むのを感じました。 産後に産婦がマミーブレインという状態になることはよく聞きますが、父親にも脳の萎縮が生じるらしく、単なる睡眠不足ではなく実際に何かしらの変化があったようです。

初めて子どもを授かった父親では「脳の容積が減少する」という研究結果 - GIGAZINE

出産という一大事を乗り越えた妻と比べれば大したことをしているわけではないのですが、なんとなくぼーっとした状態が続きました。 粉ミルクの量が増えるにつれて、自分がスプーン何杯分を哺乳瓶に入れたのかわからなくなったり、何をするために立ったのかわからなくなったり。

夫婦交代勤務で8時間ずつ寝るというのも試しましたが、不都合も多く途中でやめました。

結局、就寝後は妻が対応し、夜明けごろにバトンタッチし、10時くらいまでワンオペというのが我が家の落としどころでした。

乳児検診に行った保健所で、おむつ替えをしていたら授乳室兼用ということで途中で追い出されたり、予防接種などで病院に行くと主に説明の対象となるのは母親で、父親というのは新生児中心の世界では重要度の低い方の脇役なのだなーと感じることが時折ありました。

そんな経験から、自分は育休をとりましたが、バリバリ会社で働いてベビーシッターを雇うのも個人の自由だなと思いいたりました。

子どもにものごころがついてから、どれだけ向き合う時間をとれるかの方が重要かもしれません。

育休は仕事のためになるか?

自分が育休にはいる少し前に、国会で育休中のリカレントというような議論があったので自分でも試みてみました。

といっても学校に通うわけではなく、ドラッカー経営学の書籍を何冊かかって精読を試みただけです。 しかし、2時間おきくらいにランダムに絶叫する乳児の相手をしながら曇った脳で読書をしても、明晰な知性など得られるわけもなく、

「眠い…経験談を延々と語って抽象度の高いありがたい話が続いている…眠い…」

といった状態でした。

ある程度生活のリズムが出来たころに多少文章を書いたりもしましたが、「知的な営為には一定の時間的集中が必要」というドラッカーの箴言だけが心に刻まれました。

仕事を離れる時間が取れることで俯瞰的な視点を得られた気もしますが、子どものいない3連休の方が効果は高いでしょう。

言語的コミュニケーションが不可能な相手と向き合う育児自体が、マネジメント能力の向上に資するという意見も耳にしましたが、 それをいうなら人生のすべては学びに変えられるので、ことさらに育休をとることを勧める理由にはならないでしょう。

総じて、ライフイベントに際して自分の意思を尊重してもらえることで、落ち着いて仕事に取り組めるという本質的な効用が大きい気がします。 これはおそらく、介護休暇であれ、慶弔休暇であれ共通しているのではないでしょうか。

この点、我が社は話をすればできる限り柔軟に対応しようという姿勢があります。

結びに代えて

育休は終わったんですが、育児が終わらないんですよね、むしろ始まった。 育休とったのはよかったと思うんだけど、これからどうやって子どもとの時間を確保したり、子どもの成長に寄与できるかがむしろ問われている(保育園の送り迎えとか)。

一個人の話はさておき、今後、他の社員が育休をとりたくなったときに1年くらい抜けても大丈夫なように、会社のレジリエンスを高めたり、逆に「育休をとらないぜ!」という選択をした社員や、結婚していない社員が割を食ってしまわないよう、多様性が尊重されるような企業文化の醸成に努めていきたいところです。

末筆ながら、渡辺さんはじめ、まっとうに育休が取れるよう協力してくれた皆さんに謝辞を記して筆を置こうと思います。