vicc blog

株式会社ヴィックの技術ブログです。

キャリア座談会--SUDARE 丹野さん, GEL 石津さんとvicc渡辺で語る④

前回まで3回にわたって座談会参加者の皆さんの経歴紹介を掲載してきました。今回から、現在やってることの中でも特にどうやって人を育てるか、あるいは人間の成長にどういうふうに貢献してくかについての会話です。

以前の記事のリンク

Vicc 渡辺さんより

【渡辺】 育成とか教育という前に。そもそも我々ってどういうスキルとかどういうバックグラウンドを持ってるのかというところを整理してみました。 うちの社員、シンテグレートとヴィックなんですけど、社員のバックグラウンドを見てみた。トータルで今までだいたい37人いて、大きく分けて新卒が10人で、中途が27人です。 新卒の中だと建築設計を勉強した人が6人で、建築情報学が3人で、建築工学が一人です。 中途の前職は、多い順に、アトリエ設計事務所が8人に、(うちはヴィジュアリゼーションの部隊がいるので)CG制作会社が5人、これは私を含めてですねで、それからBIMのコンサルで働いていたという人が3人で、これは基本的に海外ですね。 あとは住宅メーカーというのが2人、ゼネコン2人、組織設計1人、PMの会社の人が1人、あとは自動車メーカーが1人、その他4人はバックオフィスみたいなところなんですけど、大体こんな感じになったんですよね。 じゃあ、新卒中途を置いといて、どんなふうなことを学校で勉強したのかというところの専攻、建築の設計が23人、建設工学が6人で、建築情報学が3人でコンピュータサイエンスが2人、あとは土木が一人。私だけ全然畑違いのインダストリアルデザインという風になってるんですけど、大体こんな感じ。 この辺、SUDAREの方々はどんな感じなんですか。

【丹野】 うちは従業員としては4人、そのうち2人は元・清水のひとで違う会社に行って、今うちにいる2人です。

【渡辺】 ってことはゼネコンさん。

【丹野】 ゼネコン出身で、また違う設計事務所だったりに行ってその後にウチに来ているのが2人で、4人のうち残りの2人は積木製作からウチに来てる。

【渡辺】 ほぼ全員建築バックグラウンドって感じですか。

【丹野】 ただ、ゼネコンの二人のうち一人は建築バックグラウンドじゃないんですよ。建築バックグラウンドじゃないところから清水に入ってる。

何の専門なのかを聞いたけど、忘れちゃったな。

こういう人たちで積木製作の一人はゼネコンから積木に来た人。もう一人は設計事務所から積木に来た人で、うちに今いる。

【渡辺】 石津さんの所は一人なのでこの話を振ってもという感じかもしれませんが。

【石津】 手伝ってもらっている方がいるんですけど、コンピューテーショナルデザイン出身ですね。 2,3人いますけど、同じようなかたちでコンピューテショナルデザインを海外で学んでたりとか、国内でコンピューテーショナルデザインをやってたりとか。

【渡辺】 なるほど。 私に話をもう一回もどします。 なんでこういうバックグラウンドの話にしたかというと、建築情報学とか言ってもメチャメチャ間口が広くて人材を3つぐらいに絞れないじゃないですか。

今日は僕のプレゼンってこともあって、うちの場合、どうなっていくのというところから展開させていただこうかなと思ってます。 で、うちのビジネスとして今4つの柱があります。 これがうちのビジネスなので、あんまり他のことは僕らは分からない。じゃ今後、今のビジネスモデルを見てもらって、どうなっていくのかということを考えました。

  • モデリングスキルだけでは少し弱い(相当なレベルでないと厳しい)
  • 建設業での情報技術の知見をさらに深めていく
  • 現実を知り、BIMのマネージメント能力を高める
  • BIM以外の専門性を付加していく(企画、設計、施工、生産、維持管理など)

だんだんコモディティー化していること、各社内製化が始まっていること、スキルのレベルを判別しにくいので、(低質・低価格な)学生のバイトに負けるみたいなことって結構あったりするんですね、現実的に。

品質の違いを伝えるのはなかなか難しいので、厳しい世界も来るだろうなと、もう想定をしてるんですね。そうなるとモデリングスキルだけじゃなくて、建設業での情報技術の知見というのをさらに深めていくことで差別化しないといけない。

また、日本のBIMはツールの使用に限定されがち。しかし、オーナーBIMのような領域では、ツールだけでなく情報を有効活用するマネジメント能力が求められる。情報の利活用までを含めたフローを確立し、それをコントロールできる人材の育成が不可欠とされている。

最後に、BIM以外の専門性を付加していく方向性。 さっきのところに戻るんですけど、例えば生産設計でいうと、設計側に染み出していくのか。もしくは製作側の工場との連携とかに向いて、製作側の彼らの欲しいものをもっともっと汲み取って、もうこれでいいでしょうみたいな感じで出せるような知識を増やしていかないと、単純に学生との競争で負けるみたいなことが起こりつつあるなと思っています。 そういう人材を作って、伸ばしていかないといけないと思っています。

あとは去年みんなで話を整理したんですけど、うちのミッションとして、「BIMチャンピオンを5年で100人育てる」というのを一つ掲げたんです。 ミッションは3つあるんですけど、今日は一つだけ。

BIMチャンピオンとは、技術的なスキル、理論的な知識及びBIM実装を改善するチームをリードして導くための動機を持ってる人を指します。

必ずしもBIMマネージャーじゃなくてもいいので、技術と理解を持って動機を持って広めていける人というのがBIMチャンピオンという定義だそうです。

これを5年で日本で100人育てたい、これが我々の最終的な教育育成の一番大きな意味でのゴールにしてるんですね。 そのためにウチが何をやってるかというと、そんなに偉そうなこと言えないんですけど、社外での教育というのと社内での教育育成というのがあるんだろうなと思っています。

僕も含めて今3人くらい大学で教えています。 これをやらないと建築業界でちゃんとした、情報技術の活用というのが広がっていかないだろうなと思って、ちょうどお話もいただいたので教えています。

導入コンサルというのは当然BIMを導入したい人、企業に対してサポートさしていただくということで、BIMチャンピオン100人育てるというところの活動に直接的になっているところですけど、これもなかなか大変。 100人は無理かみたいな話もあります。

BIMチャンピオン100人を育てるためには、我々自身がちゃんとBIMチャンピオンになっていかなきゃいけない。そのための社内教育・育成というのは何をやってるかというと、まずインターンシップ。先の大学教育みたいなところとかぶるんですけど、ウチに興味があるし、もしくはこの業種に興味がある人を実際の仕事にアサインしてみる。あとは、インターンシップ用の専門のプログラムを作ってウチに来て経験をしてもらって理解をしてもらうというのをやっています。これをやることによって結構いいのは、うちの社内の人間が知見の整理ができて、社内教育にもなっているということですね。

あと、各種勉強会みたいなものはなるべくやるようにして、例えばライトニングトークを毎週やっています。また、去年くらいから社内でSECIモデルという言葉を流通させています。 やっぱり一人の知見だけにとどめていると、そもそも会社でやってる意味がなくて、ウチの場合はウチの方針として、会社をある程度のサイズまでにして、みんなで知見を蓄えていくってことで勝負しようとしています。
話が戻るんですけど、入社した時にオンボーディングを行って、ちゃんとうちはこういうことをやっていて、こういうことを理解してくださいみたいなことも当然やっています。

最後に、これも全部できてるわけじゃないんですけど、5ゲン主義で、僕が一番初めにサラリーマンになったときに上司からめちゃめちゃ叩き込まれたことです。 やっぱり原理・原則・現場・現実…あれ、現実が2つになっている。

【石原】 覚えてないのは大事じゃないんじゃないですか。

【渡辺】 いやいや、石原君、調べてください。 とにかく我々は「キーボードの上で叩いて」というところで終わっちゃうのは絶対に良くなくて、特に生産設計、リアルなものを作っていくってことになると、なるべく現場でモノを見る、触る、工場に行ってどうやって作ってるのかを理解することを徹底したい。長孔というものの理解がないと、そもそもリアルなモデルができないとか。

【石原】 あと一個は現物でした。

【渡辺】 そうでした。 一方で、姿勢も考えなきゃいけなくて、ウチが気をつけてるのは「与えすぎない、揃えすぎない」ことを気をつけています。 全部揃えて出しちゃうと、どうしても「それは教わってません。教わってないからできません」とか「言われてないのでやりません」みたいなことを言う人はいるんです。 それはウチみたいなちっちゃい会社で新しい技術とか、その考え方を世の中に広めていこうという人材として、不適合になってしまう。 でも難しいですけどね。 「揃えすぎない」とか言いながら知見のシェアみたいなことになると、その辺のバランスも難しいんですけど、そこを気を付けてやろうってことをやってます。

大学教育って多分あんまり細かいこと教えないで、何かフレームワークというか勉強の仕方を教わるとか、考え方みたいなものがあると思うんですけど。導入コンサルになると、もう現実的にちゃんとできるようになってもらわないといけないので、細かいことまでのサポートするけど、社内教育に限というとそんなにやりすぎないようにしないと、待ちの人間が増えちゃうなと思っています。 一応これがうちの人材育成というプレゼンテーションでした。

SUDARE 丹野さんより

【石原】 順番で丹野さん。

【丹野】 今の話と毛色が違うんですが、ざっくりですけど普段の業務の流れの中でどういうスキルが必要かみたいな話からさせていただきます。 例えばこういう曲面の形、複雑な形の時に基準線形をつくらなきゃいけないという時に、最初はモデリングの知識が必要だと思います。RevitだろうがRhinoだろうが同じことで、まずはその形を作れる。

次に、その形を調整しなきゃいけないというようなことが起きた時は、ジオメトリーの知識。幾何形状の知識が必要だと思います。

更に、例えばその中で目地の位置を調整しましょう。これって一個一個手でやってる場合じゃないし、この計算全部自分でやるの?というわけにいかないので、プログラムの知識が必要だと思います。ちょっとプログラムって言い方が正しいかは置いといて。

で、建築なんで、実際、そんな線だったり面だったりするわけじゃないので、厚みがあって、その中には色んなものがあって、クリアランスをとらなきゃいけなくて、みたいなことをやらなきゃいけない。ここで建築の知識が必要になってくると思います。

ここまで何となく建築情報系の仕事をする時(BIMの仕事でもいいんですけど)必要だと思われる知識を挙げてきて、僕が今までやってきて一番難しいなと思ったのが建築の知識です。他はほっといても覚えられるんですよ。ウェブでも何でも検索すれば色んな情報あるし、覚えてくれって言えば覚えられるんですけど、建築の知識だけはなかなか覚えられない。

【渡辺】 建築の知識って一言で言って何だということになりますか。

【丹野】 例えば設計行為一つとっても、何からスタートすればいいかみたいなことって、実は教科書にも載ってない、調べも出てこない。現場がどこから始まるのかってことを誰も教えてくれないので。こういう知識というのを教えるのがすごく難しいなって、今も思っていて、人材育てていくという時に、僕が今一番注力してるのは建築を教えることです。

他はもう「自分で学んでくれ」ってしか思ってないんです。 僕ぐらいの世代になってくると、彼らの方が絶対、吸収が早いので、同じことを勉強したら、彼らの方が早く覚えるんですよ(笑)。ただ、建築の知識だけは経験値でしか積み重なってこないので、どれだけ多くのものを見たかとか、どれだけ多くの経験をしたかというのがやっぱり一番大きいのかなというのを思うので、ここだけは教えられることを教えていくんです。

僕は聞かれたら答えますけど、あとは自分で考えて学んでという風にしています。 次、これはとあるプロジェクトのフローなんですけど、こんな複雑な仕組みで仕事が流れていってます。建築主がいて、デザイナーが海外だったりして、そこに日本の設計事務所があって、今度現場とか生産側として製作業者さんがいて施工会社があってて、ウチがそこに入ってモデルでどうにか処理しましょうみたいな、渡辺さんとほぼ同じようなことをやってると思うんですけど。

【渡辺】 スダレさんはいつも工程の上流側に入れるから羨ましいなとも思ってますけど。

【丹野】 そうですね。

【渡辺】 そこが大きな違いかも知れないですけど。

【丹野】 こういうことを普段やってるんですけど、僕がここで必要だと思ってるのはコミュニケーション力。いろんな方々と会話をしなきゃいけないので、ここで黙ってるとただ言われたことをやるだけ。仕事にならないので、ここで発言をできるとか、必要な情報を聞き出すというコミュニケーション力がないと、知識があったとしても、それを活かせないと僕は思ってます。だから、例えば、スタッフと一緒に打ち合わせた時は最初の皮切りぐらいは話ますけど、あとはできるだけ黙ってるようにしてます。僕が喋っちゃうとそこで解決しちゃう可能性があるので。

【石津】 チャンスを作るわけですね。

【丹野】 後からお客さんが電話をかけてきて、「丹野さん何とかしてよ」ってことはあるんですけど、それでもじっと我慢して発言をしないで頑張ってもらい、このコミュニケーション力を育てないと続かない。大手の会社なんかにいてやっていく分には何とかなるかもしれないですけど、我々のような会社とか仕事をやっていくには必要です。

【渡辺】 深く賛同します。 【丹野】 これもあるプロジェクトに関する組織図なんですけど、大規模再開発でエリアが4つくらいに別れている時に、ここでマネジメント力というのが出てきます。いろんな会社とやっていく時にコミュニケーション力もあるんですけど、言ってることが違ったり、何人かのスタッフを違うプロジェクトに突っ込んだりすることが起きてきて、その時にはマネジメントの力がないと、一人一人はうまくいってるのに、なぜか全体でうまくいかないみたいなことが起きるかなと思ってます。 全然話が変わるんですけど、僕はそもそもプロジェクトって別々にやるんじゃなくて、3Dは3Dでちゃんとマネジメントするところが、どこかにくっついて全体マネジメントしないと、せっかく作ってるモデルがバラバラに活用されて、同じことを何回もやってるよねってことが起きると思っています。こういうやり方をして、施主さんもそれをちゃんと運用に使ってくれれば、作ったモデルで終わらないんじゃないかなとも思ってるという話なんですけど、そんなことを考えてると胆力というのも必要です。 これを実現するためには相当な我慢をして粘り強く説いていく。

【渡辺】 先週のArchifutureのコラムも胆力的な話ですよね。

【丹野】 私、あのコラムこういうことを書くこと多いんです。普段の鬱憤なのかもしれないですけど(笑)。ジョブホップしていい会社に行くとかは全然いいと思うんですけど、自分のスキルを上げて行くというのはいいとして、我慢できる人じゃないと継続的に仕事ができない。我慢すりゃいいってことじゃないんですし、我慢て言い方はおかしいか、継続するという方が適切ですね。 「なんかもうこういうのめんどくさい、ダメよ、どこか行こう」みたいなことを繰り返さないで、少なくとも竣工ぐらいまで継続できるという人じゃないと、プロジェクトが回らないなというのもありますし、長くやってると実は見えてくる世界もあるんじゃないかなという意味でも、胆力を持って自分の理想を着実にやっていってもらいたいんです。

【石津】 胆力って育つんですか?イメージとしては。いろいろな方を見てると思うんですけど、胆力というのは…わたし今30代中盤なんですけど、そこから50代にかけて伸びるものなのか、それともそういうのってもっと何か特性みたいなのが強いものなのか。どうだと思いますか、経験値から鍛えられるものなんでしょうか。

【丹野】 どういう過ごし方をするかによっても違うんですけど、すごく元も子もない言い方をすると、年齢が上がっていくと守るものが出てくるので、逃げられなくなるから胆力が出てくるというのがあると思う。

【石津】 たしかに。すぐに違うところへ行けないですよね。

【丹野】 あと受け入れてくれる先がないからここで頑張るしかない。

【石津】 そういう意味でずっしりと。

【丹野】 そういうのもあると思うので。

【石津】 責任もありますしね。

【丹野】 ただ、自分の何か理想を掲げてプロジェクトに取り組むみたいな時にはやっぱり好きなことだったら人間頑張れるってあると思うんですね。それは年齢の問題ではないかなというところもあるので、僕はスタッフというか、若い子達には「せめて建築を好きになってくれ」って必ず言いますよ。 建築が好きじゃない人が、この業界でこれやっていくのはちょっとハードルが高すぎるなと。

【石津】 たしかに。

【丹野】 情報が好きなんだったら、正直ゲーム作ったり、ITに行った方が絶対給料もいいし楽なんですよ。楽じゃないかもしれないけど。

【石津】 きっとゲームとかITの方がコンペティティヴかもしれませんけど、ここでやりたいみたいな、好きか嫌いかみたいなことは大事ですよね。 【丹野】 それでさっきの組織の話で、何で人材派遣取ったかって言うと、現場に常駐させてる。現場とか得意先の会社に半常駐させてるということをやってます。理由が2つあって、まず一つは単純に派遣業を持って派遣じゃないと相手の会社に入れないというすごいシンプルな理由。社内に入れないんですよ。会議室までしか。

【石津】 そうなんですね。

【丹野】 一緒に仕事をしなきゃいけないとか、仕事をしたいという向こうの要望があっても叶えられないので、しょうがなく派遣業をとった。もう一つは、社員にいろんな経験をしてほしいというのがあります。 大体、派遣する先は大手企業さんですけど、大手の中に入ってその人たちと一緒に動くと、彼らが何を考えてるのか理解できるので、その先の自分が仕事をやるという時に「あのお客さん、多分こう考えてるんだな」って分かるんじゃないかと思います。知らないとこに突然派遣で行って、その中で仕事をするので、コミュニケーション力も必然的に磨かれます。そんなようなことを考えながら、お客さんからの要望があった時は派遣をして、フルでは居れないんですけど、半常駐くらいで経験を積んでもらっています。コミュニケーション能力とか、もっといやらしい言い方をするとコネを作って帰ってきて、というようなことを考えています。

今後、人をどう育てていくかというような話がこんなところですね。 最後に。とはいっても、やっぱり学ぶ力を持ってもらいたいというのが、石津さんの話とか、石原さんとかのTwitter(X)のポストもそうですけど、見て「こういうことをやったらこういうことできるのか」って思ってほしいんですよね。 これを思わないで、僕が言ったことだけ聞いてるスタッフだと、こういう小さい会社だとなかなか成立しないなとは思っているというのが、私の人材系のお話でした。

【石原】 ありがとうございます。では、さいごに石津さん。

GEL 石津さんより

【石津】 うちは社員がいるわけじゃないんで。どう育ってるかみたいな人材育成系の話って言われた時に「まあ、そんな立場でもないしな」と思いつつ、悩みながらスライドを作りました。 人を育てるというよりかは、自分がどう育ちたいみたいな話で、最近意識してることが話せるといいかなと思ってきました。やっぱり私がやってるものって、基本的にエンジニア系なので情報の移り変わりも激しいですし、勉強しなきゃいけない量がものすごく増えている。日々葛藤しながら仕事してるんですけど、そういう時って何もできないんです。

不安から学ぼうとしているので、あんまりいい結果を生まない、自分が何者か分からなくなる。なので、子供とか見てて思うんですけど、興味を持ったものを手にとるように学びたいというのが理想形としてあって、不安で動けなくなったときは、与えられてる選択肢内で「どっちがいい?」って言われた時にYES/NOで学ぶみたいなことを心掛けています。

大学を出たてのときとか、何もできないじゃないですか。やってみたいという気持ちしかない。でも、何も持ってない状態でやらしてくださいって言わないといけない状態なので、どっちかって言うと私みたいな立場としては「最初は誰でもビギナーさ」というのを一回飲み込んでやり始めるみたいな。そういうのを思って勉強とかしてます。

私は大学で先生を見た時に、「自分がこんなもんやってても凄い人がもう何百人もいるじゃん」みたいなことを思いつつ、でも先生に言われたのが、「あなたはまだ1年目、2年目でしょ?僕は10年やってるんだから」ということ。「ああそうだよな」って思いながら、自分がやりたいことをやりなさいってことを教育で受けて、そういうのって大学教育すごい素晴らしいなというところです。 できない人をいかにできると思わせるかというか、背中を押して「でも、あなたがその人材になるのよ」「でもあなたはそれをやって行くのよ」そういう謎の看板みたいのを掲げてくれるって意味で凄くいい効果があるんじゃないかなと思います。 なので私が今、色々製作で取り組みつつ、「建築の知識足りないな」であったり「エンジニアリングの知識がたりないな」なり、常にこう知的ジャイアンにボコられる状態みたいなのが、毎日起きているんですけど、そういう中でもできるだけ50代ぐらいになった時に「チョットできるよ」という大学で教えられるようになりたいなという目標みたいなのがあります。

実際のコンピューテーションになると、背中を押してくれる人がちょっと少なくなる。「君はなれるよ」って言ってくれてる人はそんなにない。「いやでもそういう人材に君はなるはずだよ」みたいな謎の自信をもっていいんじゃないか。なので、やれないことたくさんあるけど、なんかやれる気がするという状態に持っていくというので、私たちのコンピューテーショナル人材に求められてるものって「できる気がする」と、「せめて私だけは」みたいなところかなと思ってたりします。 今現実やってる人たちってパニックというか、「おお」ってなってる状態だと思うんですけど、それを何とか私は会社として、こういう人ができる人材育成として、専門家の学習によるフローベースの解決案というのと、小さなアプリによるユーザーのエンパワメントによる解決案という2軸でソリューション提案をやっていきたいなと思ってます。

学習によるフローべースの解決案だと本の執筆だったり、フリーの勉強会の実施だったり、企業向けの研修とか大学の研修みたいなのはやっています。

本で学ぶことの利点みたいなのを考えると以下のようになります:

  • 体系的に学べる
  • 興味がある章からはじめられる
  • 何度でもはじめられる
  • 周りと比べて劣等感を感じず、自分のペースでできる
  • まとまった情報が手に入る
  • これを読めばできるはず、というお守り効果
  • 本を図書館で借りたら無料、購入しても数千円で費用が安い
  • ビデオや対面講習よりも、文字を読むスピードの方が早いので効率よい

そういう意味で本って効率いいよねと思いながらやってたり、企業用講習とかは、企業向けにRhinoのモデルの作り方から教えて、Grasshopperまでやりますみたいなのをやってたりするんですけど、設計者の方、建築設計者と構造の方を対象にやったんですけど、自分で結構すぐにできちゃうんですよね。 昔と違って、今は教材も体系化できてるし、どういう方法で教えてったら一番パッとできるようになるかみたいなのが、こっちでもすごい考えながらカリキュラも組んでたりするんで、Grasshopperぐらいまでだったら誰でも効率よくできるんじゃないかと思ってたりします。そういう状態になるまで、大学教育も含めて教育が後押しすべきなんじゃないかなと思いながらやってるところです。

本も書いてて、何で企業用講習とかまで対面で行ってるのか? 集団で学ぶことってめちゃくちゃ利点があるなと思っています。

  • 辛い宿題も周りがやってることで乗り越えられる
  • 文化が育つ
  • 集団の中でのリーダーが現れる
  • 今まで興味がないけどやってみると自分の興味があると気づく
  • 新しいことに挑戦しやすい
  • 失敗しても周りがフォローアップできる
  • 定期的な学習習慣をつくりやすい
  • 向き不向きを相対的にみれる
  • わからないことを聞きやすい
  • 自信を失わずに学習を継続しやすい
  • チーム自体がそだつ
  • 関係性を構築できる
  • アイディアが浮かびやすい

例えば私が対面で一対一で1人に教えちゃうと、もうその子は圧しか感じないんですよ。できる人とできない人みたいな2項対立になっちゃうんで、「自分なんてやったってしょうがないし」みたいな気持ちになっちゃう。それが10人いたら、10人できない人と1人できる人がいて、マジョリティーになれるんですね。

DynamoとかGrasshopperとかそういうツールがある中、なんでアプリ?ていう話なんですけど、

  • GH、Dynamoではユーザーの学習が必須(人に要求するよりも自分たちの成長を求めたい)
  • GH、Dynamoを管理するのは困難
  • GH、Dynamoの再利用が困難
  • GH、DynamoのUIが直感的には難しい
  • 建築主や現場の人など、CADに慣れていない人へも情報を届けたい
  • CADやBIMに慣れていない人へもツールを届けたい
  • 自分たちのツールをつくり、アプリを作品として向き合いたい
  • 使い捨てのコードを書くのではなく、アプリ作成を通して長くコードと向き合いたい
  • 既存のソフトのプラグインではなく、小さくても自分たちのツールを作りたい
  • データフォーマットを決めることが高くて自由度が高い
  • ユーザーインターフェースを考えるのが楽しい
  • 企画からシナリオつくりまで誰とつくるかを一緒に決めれて楽しい

前作ったより今回作ったやつの方がやっぱり上手にできてるなとか、一緒にディスカッションしながら、企画からシナリオ作りまで楽しいみたいなというのがあって、今アプリづくりすごい楽しいなと思ってます。

とはいえ、アプリを作ってた大学にいたわけじゃないので、やっぱり勉強しながらやっています。

  • 本で学ぶ
  • ビデオチュートリアルで学ぶ(Udemy/Youtube、オンライン教材)
  • ChatGPTで学ぶ
  • ワークショップに参加してみる(時間的な拘束をつけて学ぶ時間を確保)
  • ハッカソンとかオフラインワークショップに参加(人にあうとモチベーション維持しやすい)
  • コミュニティ(TAECをつくってみた)
  • たまに触ってみたツールをTwitterにあげてみる
  • 勉強して学んだ一部をまとめた記事をZennなど情報共有ブログにあげる
  • まだ理解できないだろうなと思う技術も触れてみる
  • 今必要だなと思う技術も触れてみる
  • 将来基礎になりそうな数学も学び直してみる
  • 子供が将来アプリ作りを聞くかもしれないと思いながら学ぶ 私はIT系の勉強会とか国内で行ってみたんですが、女性めちゃくちゃ浮くんですよね。で嫌な思い出とかもしたので、自分で作っちゃえばそういうのないので自分で作っちゃった。TAECはこんな感じで、年齢も所属も専門も性別も人種も世代も全部取っ払って、みんなが学ぶ場みたいな、勉強会をしたいなと思って作り始めた。ハンズオンでというのも、自分の場合は一緒になんかするのが楽しい時間だったりするんで、してます。 とにかく本が好きで、最近買ってわからないけど、読んでみる本です。それと、Architctural Designというコンピューテーショナルデザイン系が載ってるイギリスの雑誌がすごい好きで、学生時代にすごい読んでたので、こういうのにやっぱり影響されているのかなと思いつつ電子化しました。 最後にというか、ネタとして持ってきたんですけど。最近、この『危ない子育て』という本を読みました。タイトルが「犯罪心理学者は見た」みたいな感じなのでセンセーショナルなんですけど。でも向き合うという面ですごくいいなと思いました。

子供を育てるとか、自分自身を育てるでも一緒だと思うんですけど、支配と服従、拒否と保護ってなっていて、過保護型は先回し何でもやる。先ほど話もでてましたけど、そうすると何にも自分で考えなくなっちゃうし、甘やかしでどんどん与えてあげたりするとわがままになっちゃうし、高圧的に接して「何かしろ」って言ってもただ言うこと聞くだけになっちゃうし、かといって、何にも世話しないと何にも愛されてないなみたいになっちゃって、何にも意欲がなくなっちゃう。

根本になんかこうマネージメントに通じるなと思いながら、結局何が正しいってないんじゃないかなって。子供を育てるとか人を育てるって、なんか行き過ぎちゃう。極端さをやめよう、できるだけ中立みたいなのに行ければいいかなと思っています。 何でそういうことを考えてるかというと、ソリューション提案の手札というのを考えているからです。 整理されていない問題ってやっぱり行動しかない。事例があると調査が出てきて、もっと何件かあれば分析ができる。もっと1000件とか1万件とかの中で分類ができるみたいなことを言われていて、自分たちが今与えられているプロジェクトが行動系なのか、それとも調査系なのか、分析系なのか、分類系なのか。何にもないんだったら、まず動いてみるしかないよねみたいな。そういうのも考えながら多分、その仕事というか作業をやっているかなと思っています。

ちなみに、私は準備が足りなくてもやっちゃう方だったりするんですけど、行動もやっぱりそういう意味では有効だし、かといってもう沢山事例があるのに何も調査もせずに、これなんですかというのもおかしいから、そういう管理可能な問というのは、ちゃんとベストプラクティスを見て、どういう風にしたらうまくいくかみたいな。そういうのはやっぱりちゃんと見るしみたいな、そういう感じでやってるんじゃないかな思っています。

【石原】 ありがとうございました。

育成編の話題提示でした。
次回、座談会の最後、質疑応答とフリートークです。