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株式会社ヴィックの技術ブログです。

建築パース雑談会、日建スペースデザインのビジュアルチームの皆さんと#1

建築パース雑談会です。今回は日建スペースデザインさんのデジタルデザインチームの方3人をお呼びして、どんなふうに仕事をしていらっしゃるのか伺いました。第1回目の今回は、お仕事の内容や制作の工夫をいろいろと伺いました。

登場人物

日建スペースデザインさんから:

石井雄太さん: デジタルデザインチーム所属、テクニカルマネージャー。アトリエ系設計事務所、ベンチャー企業を経て現職。静止画、アニメーション、実写動画などビジュアル全般が守備範囲。釣りオタ。

齊田悟之さん: デジタルデザインチーム所属。ビジュアル全般担当。9年目。ガジェオタ。

横田芙実子さん: デジタルデザインチーム所属。ビジュアル全般担当。2年目。Youtubeオタ。

シンテグレート・ヴィックから:

渡辺: シンテグレート・ヴィックの代表。ソーセージ作りがマイブーム。

松谷: ヴィックスタッフ。前職もCGパース製作会社。東洋大学非常勤講師。最近は梨とブドウをよく食べる。

有澤: ヴィックスタッフ。新卒でヴィックに就職、現在6年目。リングフィットを始めて1か月目。

蒔苗: シンテグレートスタッフ、ブログ編集担当。元アトリエ系設計事務所勤務。今更進撃の巨人にはまっている。

自己紹介

蒔苗: 今回は日建スペースデザインデザインの皆さんにお越しいただきました。シンテグレートに勤める僕自身は、そもそも建築ヴィジュアリゼーションについてあまり詳しくない所もあるので、基本的な所から改めて伺っていきたいと思います。まず、皆さんの自己紹介をお願いできますか?

石井: 私はもともとアトリエ系の事務所で、住宅の意匠設計からキャリアを始めました。その後UDSで設計・CGの両方をやっていました。そこからもうちょっとCGをやってみたいということで日建設計に移りまして、そこから今の日建スペースデザインに移って6年目になります。建築ビジュアライゼーションの仕事が中心になっていて、そのほかに広報、PCソフトウェアの管理、新しい事業や領域を探る、といった仕事も社内でしています。そして今日一緒にきてもらっているのが、齊田と横田です。年齢的に(ヴィックの皆さんと)一緒だと思ったのでこの二人に同席して頂きました。

左から齊田さん、横田さん、石井さん

会社について

石井: 日建スペースデザインは、日建グループの中でもインテリア専門の設計事務所になっています。ホスピタリティとイノベーションの大きく2つのチームがあって、ホスピタリティチームの方は主にホテル系やレジデンス系のデザインをしています。単にホテルといっても、ロビー、エントランス、客室、ルーフトップなどいろんな部分のデザインがあります。イノベーションチームはオフィス系ですね。例えばmixiさんやIBMさんのオフィスの設計をしています。

(日建スペースデザイン PROJECTS)

石井: で、ぼくらのチームは主にビジュアライズをしています。「デジタルデザインチーム」と言うと、形をプログラムで生成したり、最適化したりというイメージがあるかと思いますが、やはりインテリアの世界ではビジュアライズ、具体的なイメージの共有が非常に重要なんですね。そんなわけで、僕らのチームはCGやVR、CGアニメーションやモーショングラフィックス、最近は実写映像の制作までやっています。

チーム体制

石井: 我々のチームにはマネージャーが1名いて、実際に作業をしているのが東京で5人、大阪で3人の計8名です。増減もありますが、だいたい8人前後で活動しています。

蒔苗: 日建スペースデザインの会社全体では何名くらいいらっしゃいますか?

石井: おおよそ120名が在籍しています。そのうちデザイナーは70人くらいですかね。

蒔苗: つまりデザイナーが8人に1人くらいのバランスですね。なんか余裕がある感じ…

石井: そして、2021年に携わったプロジェクトはおおよそ70件くらいです。CGの静止画がメインで、その他にVRも3件、実写動画5本、イラストが6件。

渡辺: いいなぁ…うちも仕事増やさないと。

蒔苗: (笑)だいたい5日に1案件といった感じですか?

石井: 常に平行して様々なプロジェクトが動いているという感じです。

渡辺: 案件イコール枚数ってことではないですよね。基本的に1案件当たり複数枚描くことが求められる。

石井: インテリアの仕事では修正がかなり多いのと、同じカットでもテクスチャの違いなどに応じて、数パターン出すことを求められる場合が多いです。かなりスピード感が求められるんですよね。

仕事内容

石井: 実際の仕事ですが、まず静止画はこんな感じです。内観パースの制作が主です。

石井: 最近では、設計した室内全部を見せる説明的なアングルではなく、シーンを切り取ったような海外ビジュアルっぽいものを求められることがあります。そんな時は、より実際の写真というか、カメラで撮っているような雰囲気を出しつつ、いかにかっこよく見せるか考えながら制作しています。他にも小物のスタイリングも重要です。インテリアは小物一つでシーンが作られます。小物がホテルの売りだったりもするので、しっかり表現することを求められます。

蒔苗: 小物まで自分たちでモデルを作り起こすんですか?

石井: ケースバイケースですが、小物までやると時間がかかりすぎてしまうので、購入するか、社内のストックを利用していますね。ただ、家具は作り起こすことも多いです。例えばホテルのレストラン・バーエリアのパースなどでは、デザイナーが海外メーカーの家具を選ぶことがよくあります。そんなときは海外のサイトを見たり、場合によっては購入したりして精度の高いモデルを大量に置いていかないといけません。

蒔苗: 知らない世界だ…

石井: あと、マテリアルの表現にも凄く気を使います。やはりデザイナーが命をかけているところですし、お客さんも気にするところだからです。フォールオフ(光の減衰)が効いているマテリアル、レザーや金属の詳細な表現は僕らの腕の見せ所になります。

蒔苗: やはり家具やマテリアルの表現が肝なんですね。ヴィックではこういう家具や小物いっぱいのパースってやりますか?

松谷: あまりやらないですね。こんなに小物を入れるような、密度が高いパースの依頼はうちにはあまり来ないです。

渡辺: ヴィックがやっているものと石井さんたちがやっているものは、どちらも同じくらい大変なんだけど、大変さのポイントが違うと思う。大きなスケールの建築の場合は植栽や人の量が尋常じゃない。インテリアは小物や家具の量、さらに家具のディテールが尋常じゃない。

モーショングラフィックス制作事例

石井: 変わったところでは、モーショングラフィックスの制作も行いました。

齊田: ホテルの大浴場の設計を弊社のデザイナーがやっていたのですが、クライアントさんから映像をいれたいという要望が出てきました。ちょうどうちのチームでAfterEffectsを触り始めていたので、トライアルを兼ねて自分たちで作ってみようということになりました。

蒔苗: すごい、なかなか野心的なクライアントさんですね!

齊田: そうですね、初めからチャレンジングなことをしたいと言ってくださっていました。街や地域の特性を汲みながら動画のコンセプトを立てて、ストーリーを作り、動画コンテンツを作成していきました。動画全体は12分の長さになり、その中に4つのコンテンツを盛り込みました。映像のプレゼンテーションの時には、Lumionに映像を取り込み、事前につくった浴場のモデルに入れて、水面にどのような反射が映り込むかシミュレーションしました。

一同: へー!

使用ソフトウェア

石井: ソフトですが、モデリングには3dsMaxとプラグインのRailClone、Forest Packを使っています。静止画のレンダリングは主にV-Ray、動画はLumionとTwinmotion、ポストプロダクションはPhotoshopとLightroomですね。

蒔苗: 静止画づくりに使っているソフトはヴィックも同じですか?

松谷: ちょっと違って、ヴィックではメインのモデリングにはRhinocerosを使っています。レンダリングするときには3dsMaxで、ポストプロダクションはほぼPhotoshopですね。動画づくりではほぼ同じです。

渡辺: デザイナー自身がモデルを作ることは増えていますか?

石井: 増えていますね。若い世代中心ですが、ゴリゴリに細かくモデリングする人もいますし、躯体までモデリングしてスケッチする人や、LUMIONやTwinmotionでレンダリングまでする人もいます。

Lumionでの制作事例

石井: ソフトの使い分けですが、例えばLumionは植栽などの環境づくりが得意なので、植栽の表現が重要な物件の場合に使っています。あと、最近はTwinmotionも試していますが、レタッチ無しでここまでいけるのかと驚きました。レンダリングもかなり早くて、6000pxだと30秒くらいで終わってしまいます。

一同: 早い(笑)

石井: 時代の変わり目が見えた感じがします(笑)最近はVRの作成も少しずつ増えてきています。ツールとして主にTwinmotionをつかっています。空間への光の入り方とか気持ちよさをお客さんに体感してもらうのにはいいですね。ただ、VRに得意不得意な人がいるのが難しいところです。得意な人はサクサク入っていくのですが、不得意な人はだいたい壁に埋まって動けなくなるんですよね(笑)

石井: この図の半分から下は動画のところですね。撮影データやLumionからデータを持っていってPremiereで編集しています。実写の動画をやっているので、音声の編集にでAdobeのAuditionを使っています。実写動画については後ほど…。そのほかにも色々なソフトウェアを研究中です。

社内勉強会

石井: 社内勉強会は最近やり始めました。デジタルデザインチームはDDsという略称があるのですが、DDs 3PUN Cookingという会を毎週月曜日にやっています。これは、スタッフ1名が自分のやっていることを3分で伝えるものです。3PUNのPUNには、Process: 過程・工程・方法、Utility: 役立ち・実用性、Narrative: 物語という意味を持たせています。

蒔苗: 内容はどんなものが多いですか?

石井: 例えばMax関連の情報だったり、Lumion、Twinmotion、Adobe系、Windowsのショートカットだったり、日々のお役立ちみたいなものも含めて共有しています。

実際の勉強会資料

実際の勉強会資料

石井: これが実際にやった会のスライドですね。個人的なLumionとTwinmortionの比較ですが、こういうのは実際ソフトを使ってみないとわかりません。誰かがやってみて、それをみんなに共有したほうが、みんなが同じ障害にぶつからずに済むと思いますし、クオリティの底上げにもつながると思います。

蒔苗: ヴィック、シンテグレート合同でも「ライトニングトーク」という会で、プロジェクト紹介やノウハウの共有をやっています。ただ、一回あたり30分くらいかかっていて、もはやライトニングではなくなってしまっています(笑) 面白いからいいんですが、3分と区切るのもいいですね。

石井: 僕らの会社は月曜に会議が多くて、時間があまりとれないんです。なので限られた時間で的確に情報を伝える意味でも、短く区切ったほうがいいと思っています。

松谷: ヴィック単体ではNotionにいろいろまとめていますね。プロジェクトをやっている間、起こった問題やリサーチしたくなったことを書き溜めておいて、プロジェクト終了後にリサーチや議論をして、Tipsとしてまとめています。

話を聞くvicc, syntegrateメンバー(左から有澤、松谷、蒔苗、渡辺)

話を聞くvicc, syntegrateメンバー(左から有澤、松谷、蒔苗、渡辺)

制作の標準化、効率化

石井: 制作の効率化という点では、ジオメトリの作成、修正でRailCloneを使っていることが挙げられます。

蒔苗: RailCloneっていうのは、Maxのプラグインですか?

石井: そうです。ノードベースでジオメトリを並べたりするパラメトリックモデリングプラグインです。


石井: インテリアの場合、マテリアルを割り当てた後でジオメトリをランダムにしたり、ルーバーのマテリアルをランダムにするなど、素材感を持たせた上でのデザイン検討が多いんです。RailCloneを使うと3dsMax上でジオメトリの編集ができるので、素材感を当てた上での確認がやりやすいんですよね。

蒔苗: なるほど。

石井: フローリングとかのムラ感とか、壁のパターンやアートを作るのにもRailCloneを使っています。素材が入った上でのいい塩梅を探していく感じです。

蒔苗: このプログラム的なものは、社内で共有されていますか?

石井: 物によっては共有されています。例えばフローリングのヘリンボーン。モデリングが少し面倒なんですが、テンプレートをつくっておいてこの範囲に並べてねって指令をあたえれば楽にできます。使われることは多そうなものは共有を心がけていますね。


今回は以上です。次回は新人研修の内容や、パース表現の違いについてあれこれ伺います。お楽しみに!