最も使われているBIMソフトウェアは何でしょうか?
もちろん世の中にはいろいろなものがありますが、私はAutodesk Revitを使っています。 今回は「干渉チェック」についてシェアしたいと思います。
干渉チェックはなぜ必要?
そもそも、干渉チェックはなぜ必要なのでしょうか。
設計BIMから施工、竣工BIMまでの作業をする間、建物の多くの場所でパーツ同士のぶつかり合い=干渉が起きます。
例えば設備と意匠、設備配管と柱・梁などの構造とがぶつかっていることはよくあります。
このような干渉を事前に解決しなければ、施工の途中で干渉を解決するために余計な時間がかかりますし、間違った場所を再施工するのに不必要なお金もかかります。最悪工事期間も延びます。
これらの問題点を事前に把握し、利害関係者と協議・解決してリスクを最小限に抑えることがBIMを使用する理由の一つです。
干渉チェックの方法
干渉チェックの方法は以下の3つです(RevitをBIMプロジェクトの作成ツールとして使用する場合)。
- Revit内部にある干渉チェック、
- Navisworksの干渉チェック、
- BIM360のModel Coordinationモジュールの干渉チェック
図1 干渉チェックができるそれぞれの機能
干渉の場所を確認・解決する方法は、それぞれ以下のようになります。
- Revit内部にある干渉チェックの場合… Revitでそのまま確認ができるのでスキップ!
- Navisworksの干渉チェックの場合①… SwitchBack機能 : Navisworksで干渉しているエレメントを選択してSwitchBackをクリックすると、自動でRevitに移動して選択したエレメントが表示されます
- Navisworksの干渉チェックの場合②…SwitchBackを使わないで、直接Navisworks上でエレメントからIDを確認し、それを元にRevit上でエレメントを探すことができます(めんどくさいです)
- BIM360のModel Coordinationモジュールの場合… 干渉チェックの結果から一つ一つ指摘事項を作成して、Revit上で確認できます
図2 Revit上での干渉の確認方法
「クラッシュボール」での干渉チェック
では、NavisworksもBIM360も使えない場合はどうしたらよいのでしょうか? そんな時は、「クラッシュボール」という方法がおすすめです。これで干渉の位置をRevitで直接知ることができるようになります。
これから、Navisworksの干渉チェックの結果をDynamoを使ってRevitにインサートする方法を書きます。Revitで干渉の位置を見られるだけでなく、Revitのパラメータを使うことで干渉の状態も管理できるようになります。これはBIM環境で情報を使うためのテクニックです。
以下にこの記事で使うソフトのバージョンを示します。
- Revit version 2019 (図3はサンプルモデル)
- Navisworks 2019
- Dynamo 1.3.4
- Microsoft Excel
図3 建築と設備のサンプルモデル
Revitのモデリング(Revitのサンプルプロジェクトを使用)、ファイル変換(RevitからNavisworksへの変換)、干渉チェックのプロセスについての解説は省きます。
全体的な流れは以下のようなものです。
- Navisworksの干渉チェックデータをXMLファイルとしてエクスポート
- XMLをExcel形式に変換
- Dynamoスクリプトを設定
- Dynamoを使ってRevitモデルにクラッシュボールを挿入
- Revitでクラッシュボールを確認
Navisworks での干渉データのエクスポート
図4にあるように、建築のサンプルモデルと設備のサンプルモデルとの間に1,256個の干渉が見つかりました。
レポートタブに移動し、図5のように「コンテンツ」、「次のステータスを含める」にチェックを入れます。
今回は、新規・アクティブの干渉のみを使用します(クライアントの要求や状況に応じて、他のオプションを設定します)。「レポートを作成」をクリックし、XMLファイルをデスクトップに保存します。
Excel形式に変換
私が用意した変換用エクセルファイルを使用して、書き出したXMLファイル(Clashデータ)をエクセルファイルに変換してみました。
以下のGIFのように、エクセルファイルでCellA:2を右クリック→XML上で移動→インポート→NavisworksからエクスポートしたXMLファイルを選択します。
※書き出したXMLファイルをただ開いただけだと、整理されていない、わかりづらい状態になってしまいます。(図7参照)
Dynamoスクリプトの設定
プロジェクトにクラッシュボールを挿入する前に、Dynamoスクリプトを作ります。
以下はスクリプトのグループの一つです。
Revitモデルの正しい位置にクラッシュボールを挿入するには、何をすればいいのでしょうか?ご想像の通り、データが入っているExcelファイルをインプットし、さらにDynamoに読み込ませるべきシートを割り当てる必要があります。
スクリプトには、上の「Read from Excel」以外に、以下のような8つのグループがあります。
- 干渉のXYZ座標を抽出・そのデータのみを再配置
- メートル単位をミリ単位に変換
- プロジェクトの北と真北がある場合は、角度差を計算
- クラッシュボールを挿入
- クラッシュボールのパラメータに他のデータを挿入
Dynamoを使用したクラッシュボールの挿入
クラッシュボールを挿入する前に、そのファミリをRevitモデルに読み込ませる必要があります。
以下がクラッシュボールのファミリです。ボールの直径、材質、色、視認性のオン/オフなどのパラメータを設定しています。これらのパラメータは、Revitのデータを共有して仕事をしているチームには使い勝手のいいものになるでしょう。
全ての設定が完了したら、Revitモデルにクラッシュボールを挿入します。やることはファイルの選択と実行だけです。
Revitでクラッシュボールを確認する
ここでは照明器具と天井の干渉の一例を紹介します。普通、Navisworksで干渉チェックを行う際には、多くのユーザーはこのような類の衝突を無視するようにルールを設定しています。
見てわかる通り、クラッシュボールを使うと、干渉が発生している場所をRevit内で簡単に見つけることができますし、集計表の機能を利用してリスト化することもできます。
パラメータには干渉チェック日、干渉番号、グリッド位置が入力されています。「新規/レビュー中/承認済み/解決済み」のパラメータを使用してステータスを管理したり、RevitのワークシェアリングシステムでBIMオペレータやマネージャに干渉の存在を伝えたり、それを解消する役目を割り当てたりすることができるのも、この方法のいいところです。
干渉が解消、または承認された場合、図13の05.Ball Turn On/Offのパラメータを切り替えてクラッシュボールを見えないようにすることができます。
この記事が、プロジェクト内での干渉を管理する助けになることを願っています。
Dynamoは単にデータの移動や変換だけでなく、BIMプロジェクトにおけるRevit作業の作業能率の向上やデータ出力や分析などでも活用できますし、複雑な形状のモデリング作業も可能です。今後もBIMの世界では要注目のシステムだと思います。次回ももっと面白い記事を書けるようにがんばります。
使用したクラッシュボールファミリ、Dynamoスクリプトが欲しい方は以下をご覧ください。何か質問がありましたらコメント欄までどうぞ。 github.com
翻訳: kantaro.makanae