2023/11/10にvicc社内で座談会を開催しました。 表題の通りゲストのお二人と当社代表渡辺で、自身のキャリアやその周辺の話題を扱っています。 その内容を伝えるブログ連載です。 キャリア紹介3人目、石津さんです。
GEL 石津さん経歴紹介
【石津】
お二方の素晴らしいプレゼンテーションの後で...私はどちらかって言うと、今、プレーヤーで、エンジニアで、まだ30代なんで、まだ学びながらやっていますみたいな立ち位置なんですけど、そのキャリアの話をさせていただければと思います。
私は、神戸大学の建築学科で意匠デザインをやっていて、そのあとワシントン大学に留学したりだとか、スイスのETHに留学をしてコンピューテーショナルデザインだとかデジタルファブリケーションの教育を受けて、その後、それを基にフリーランスで始めながら仕事をして、その間に一旦また企業に属したりして、またフリーランスで法人化したみたいな流れになっています。
著作
【石津】
自己紹介として一番わかりやすいのが、著作の2冊です。
『Parametric Design with Grasshopper』っていうGrasshopperの説明書みたいなのを書いていたりですとか、『Computational BIM with Dynamo + Revit』ていうので、Dynamo、BIMの自動化まわりをグラフィカルコーディング系の説明書を書いていたり、2冊ぐらい体系的な本を書いています。あとはArchi Future Webでコラムを書かせて頂いています。
タイムライン
【石津】
2012年にETHの修士に入って、2013年に帰国して、個人事業主からスタートしました。
その後に竹中工務店の設計本部、WeWorkのPxWe(WeWorkの一部のコンサルティング会社みたいなところ)でシニアデザインテクノロジスト(BIMとBIMまわりの開発)、一瞬CATIA系のBIM会社でもオートメーションスペシャリスト(CATIA系のモデリングというよりか、そのまわりのツールを作るみたいな仕事)、その後、起業する流れになっています。
スキルセット
【石津】 今、スキルセットとしては、結構転々としたので、色々会社に入る度に「これ覚えろー」って半年くらいすごい研修というか、もう必死で食らいついてソフトウェア覚えるとか、コーディング覚えるみたいなことを、広く色々やりました。
全部を覚えてる訳じゃないんで、このスキル全部今ありますって訳じゃないですけど、スキルセットとしてはソフトウェアスキルと、デジタルファブリケーションスキルみたいなのを持っていて、最近は結構ソフトウェア開発の方が多くなっていて、UnityのC#だったり、ウェブだったりみたいなのをやり始めています。
キャリアがまだ途中なので、こんなことが参考になるんじゃないかとは言えないですし、全然輝かしい経歴とかはないんですけど、珍しい経歴であることは自負してるので、そもそも建設業とかIT業界とか女性エンジニアが少ないこともあり、サンプルの一つになればいいかなと思って発表しています。
幼少期
【石津】 「そもそもなんで工学部とか行ったの?」みたいなことをよく聞かれるので持ってきたんですけど、子供の頃、私は6歳までかな、小学校に入る前までフランスにいて、その後に日本に帰ってきて生活をしているんですけど、浜松市出身なので帰国子女とかもいなくて、物心ついた時から結構、自分は周りと考え方が合うっていうのがあんまりなかった感じなんですよね、帰国子女だったので。
その中でも絵を描いたりだとか工作するのが好きだったりとか、運動はテニスやってたりボートをやったりとか、プラス市民合唱団みたいな市民ミュージカルの舞台に年に5、6回立つみたいな生活と、ゲームも兄弟がいるんで影響受けながら、割と女の子の遊びと男の子の遊びみたいなのを両方ごちゃ混ぜにしながらやってたりとか。
後は結構病弱だったので、読書とかもベッドで寝込んでいる時に割と読むのが好きで、どんな遊びも割と好きで、一人でいる時もみんなで遊ぶのも結構好きみたいな感じで、家庭の教育方針としたは「みんなはみんな、あなたはあなた」みたいな感じの家庭で育ちました。
学生時代
【石津】 高校の進路の時に「ロボットとかかっこいいよな、ものづくりって言ったらやっぱり機械、ITとかいいな」って思ったんですけど、「女性いないよ。1割もいないよ、100人中1人だよ。」って高校の先生に言われて、「いやー、それはな」と思って、バックグラウンドが結構色んなところに行ってたりしたので、都市とか文化とかに興味があったし、かつ理系のものも好きだったので、そういうものが混ざってる建築がいいんじゃないかなと思って、デザインで建築をやりたいなと思って建築を進路として選びました。
大学時代のポートフォリオをパラパラ見てみるんですけど、こういう感じが当時のポートフォリオで、割と建築設計みたいなものをやってました。 割とというか遠藤秀平先生のところなんでガッツリ建築設計の方なんですけど。 神戸大学で遠藤秀平先生に出会う前って、学校の授業ってすごいアナログだったんですよね。 神戸大学ってコンサバティブな大学として知られていて、土で模型を作るみたいなのが流行ってるくらいに、割と手描きだとか、「手で描きましょう、手で描かないと図面を受け取れませんよ」みたいな感じだったんで、私の時代、3年生ぐらいまでは、もう何て言うか色鉛筆とかパステルでどんだけ上手く描くかみたいなのを頑張ってました。 そういうところから遠藤先生に出会って、「もっと世界を見た方がいい」と言う風にアドバイスをもらって、ワシントン大学の交換留学を決めました。 ハスキーていう犬がアイコンになっている大学なんですけど、そこでデジタルとの出会いと言うか、デジタルファブリケーションの簡単な授業がありました。 ある授業が、デジタルファブリケーションだったんですが、レーザーカッターで出さなきゃいけないとかCNCに出さなきゃいけないってなると、データが必要です。そのデータを手で作ってるとすごい大変だよねって言うので、Grasshopperとか、作るためにプログラミングを学びたいというのがありました。
Grasshopperの授業もあったし、ウェブの授業もあって、そこでプログラミングに触り始めました。 プログラミングって今まで、もっと計算とかITみたいな遠いものと思ってたんですが、ものづくりまわりもプログラミングっていうところで、自分の中ではスッとやってみたいなと思って始めた感じですね。
それをやってみて、1年しかなかったので、交換留学だけじゃなくてちゃんと2年ぐらい勉強したいなと思って、奨学金が取れたので、スイス連邦工科大学で勉強することになります。 Processingでデザインツールを作るとか。 3Dプリンターで、3Dプリンティングが主流になった時にどういう家を作るかみたいなものだったり。
土地をアナライズしてソフトを作って、自動都市みたいな計画を作ってみようみたいな授業だったりだとか。これはグループで一つの都市を作って、ある人は屋根だけプログラミングしてとかいうのをガチッと混ぜるみたいなのをやってたり。 マテリアリティって言って、建築って言ってもスタンダードな建築って言うよりかは、センサーだとか音が鳴るだとか、触ったら反応して熱くなって色が変わるみたいな、そういうインタラクティブな建築みたいなのを作ってて、その時に電子工作とか、Arduinoとかそっち系のものも学びながら、 こういう木の、木目調にひたすら削るみたいな作品を作ってみたりだとか、結構デジタルと、手動でグリグリ、何十時間もワイヤーを留めて作品を作ったりとか、ボルトジョイントみたいなものを自作して実際に作ってみたりだとか。 機材がすごい整っていたので、作りたい放題、やりたい放題、CADから出せるものは何でも出しますみたいな感じで、楽しく製作していました。
【丹野】 テーマってどのくらい設定されるんですか。
【石津】 そうですね。モジュールが8個になってて、哲学の授業とプログラミングの授業とファブリケーションの授業っていうのが大きな枠で3つあるんですね。
その中のファブリケーションの授業だとしたら、マテリアルを、丸太を渡されて自由に使っていいよみたいな感じでプロダクトを作るみたいな感じです。
テーマもざっくりと決まって、何作ってもいいよみたいな感じではあります。 なのでロボットでドアを作ったりとかしたりしてました。 ここでもやっぱり1、2年なのでそんなに経験としてはまだ足りないなと思いつつ、帰ってきました。
最初のフリーランス時代
【石津】 日本に帰った時に生かしたいなって思ったんですけど、なかなか場所がなかったので、プログラミングやったしフリーランスでなんとなくソフトウェアとかアプリとかできるんじゃないかと勘違いをして始めました。
Unityのこのアプリを作り始めるみたいなのが2014年で、これは堀川淳一郎さんと一緒に作りました。スタートアップがやってる、中のいろんなブランドが入ってるやつを、着せ替えができて、お金が出せてみたいな。
当時はまだVRとかARとかが珍しかったので、AR/VRバブルみたいなのが落ち着いて、割と色んな仕事がありました。 ここでシステム開発というかアプリ開発みたいなのを学ばせてもらうというか、一緒にやらせて頂くみたいなので、データとモデルとそれを作るためのプラットフォームとかあとウェブアクセスとか、そこら辺のことを2年間ぐらいやったんですよ。
「うぉー」と一気に詰め込むみたいな時期も多いです。
その間にコンピューテーショナルデザイン業務として、国立競技場で「モデルを作れる人がいないから」と呼んで頂いて、やり始めたのが建築系で取れた初めての仕事です。
元々はもっと複雑な形状の案だったんですけど、BIMモデルはあるけど、Rhino側でいろいろできる人が欲しいっていうことでした。 それ以前も「コンペに出すために1ヶ月一緒にやりましょう」とかは結構たくさんあったんですけど、長期で建築に関わったのはこのプロジェクトが初めてでした。 それも終わって、まだ2017年か18年ぐらいは日本ではそんなにロボットアームで色々やってますみたいな研究は出てなかったので、もっとロボティクスとかのワークショップを日本でぜひ開催したいなと思っていました。 ETHの友達を呼んで国際ワークショップみたいなのをSFCでやって、SFCでやった後にRobArchっていうカンファレンスに出して、これは竹中にいた時に参加させて頂いたんですけど、ワークショップを開催したみたいなことをやったりしてました。
会社員時代
【石津】 2018年から竹中工務店で会社員をスタートして、その後にWeworkへ転職して働きました。BIMみたいなことをそこで初めてちゃんとやらせて頂いて、今までやってきたソフトウェア開発とBIMとジオメトリ系のエンジニアリングみたいなのが結構つながってきて、やりたいものが段々出てきました。
GELの仕事
【石津】 ソフトウェア+オンプロでのコンピューテーショナル業務みたいなのを仕事にしたいなと思い始めました。 シンテグレートさんとも一緒にやらせて頂いた、このスタジアムとかが、独立、フリーランスになってから頂けるようになって、なんとか滑り出しができました。
ハイブリッド木造CO2削減検討アプリ
https://geometryengineeringlab.tech/index.php/project/woodx/
同じ時期にアプリ開発みたいなのを大林組さんと一緒にすることができました。
何個か他にもやってたりするんですけど、これはハイブリッド木造CO2削減検討ツールみたいなものです。
最初の最初に2014年にやってた着せ替えアプリの延長じゃないですけど、こういう「営業の人が簡単に建物を作って設定とかコンフィグを変えていくアプリ」みたいなのを作っています。
従来のS造と比較して、提案しているクリーンクリートを使ったらどれだけCO2削減になるかみたいな営業用ツールのようなものです。
パラメトリックモデルツールを独自に開発しています。
これがすごく好評で、似たようなものを見たいっていう案件が結構来ています。
やっぱりBIMソフトはすごい難しので、営業さんが使うとかざっくり検討するみたいなのだと、やっぱりインタフェースも難しい面があります。 こういう簡易BIMじゃないですけど、「機能はすごい絞ってるけど、すごい簡単に操作できる」系のツールを結構今は作ってますね。
最近、BIMオーナーみたいなところからもやっぱり来て、建築主さんがどういう情報を得たいみたいなのってそんなに多くなかったりするんですよね。 それを、大規模開発だったらうちじゃないので、もっと「〇〇と△△と□□だけ分かればいいんだけど、BIMモデルはあんまりないので、モデルを作りながらシステムを作りたい」みたいな小さなプロトタイピング案件が来てたりします。
なので、やることが決まっていたら大きい会社に頼めば早いんですけど、やることを定めるというか、どんなものを作りたいかなっていうのを一緒にやりながらっていうくらいだと、うちは要件決めずに作っちゃっうんで、一緒に作りながらっていうのが出たりします。 先日、というか去年関わらせて頂いた、コンピュテーショナル業務。 小堀哲夫さんのところでやらせて頂いたりとか、継続してこういうコンピュテーショナル業務もやったりしています。
現在の状況
【石津】 今、現状は従業員増えるかなと思って事務所を借りてみたんですけど、幼児達がいっぱい来ちゃってます。 たくさん来たんですけど、すっごいちっちゃい子達だった。 子育てと仕事っていう意味では結構バランスよく楽しくやらせて頂いていてます。 予期してなかったけど、借りて良かったかなって感じです。 デジファブのレーザーカッターも買ってみました。そんなに使ってないんですけど、子供だけは使ってるんで、デジファブも内輪では楽しんでます。
まとめ
【石津】 キャリアのまとめとしてはスライドのようになります: 当時そんなにどこに所属するみたいなのは無かったのでフリーランスで始めて、でもやっぱり企業ってすごいじゃないですか、やっぱり大きい仕事をやってみたいっていう憧れで会社に属したり、スタートアップで一発上げるぞって思ってそれがなくなったり、みたいなとかありましたけど、単発を経験して、フリーランスに今は戻って、今はかなり安定していていいなーと。
3年ぐらいやれていて、スタートアップに2社所属したんですけど、その頃はやっぱり人もすっごい早く増えるんですけど、もう
【渡辺】 早かったですよねあの時。
【石津】 早かったです。 なので今の方がじっくりツールを作れたりとか、「長期でやりましょう」って言ってくださるお客さんとかもいて、「7、8年で結果が出ればいい」と思うみたいな案件とかもできて、安定しています。 これからできるかどうかは分かんないですし、いつまで続くかっていうのは、スタートアップ見てても予期は出来ませんが、一番今が安定してる状況だなっていうのを感じています。
GEL石津さんの経歴紹介でした。
今回で経歴紹介編はおしまいです。 次回からはキャリア開発の話に移ります。