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株式会社ヴィックの技術ブログです。

建築パース雑談会_槇事務所松田さんと鳥取で話してきました#1

槇総合計画事務所様が設計した鳥取県立美術館が竣工を迎えたとのご連絡を頂き、6月半ばに鳥取の現地に見学会へ行ってきました。ヴィックとしてはコンペ時から実施設計時までパースや動画の制作、またPRイベントでのVR/MRコンテンツの出展を行いました。

僕らが手掛けたビジュアルを見ながら表現に関する事やこの美術館の魅力、槇事務所の姿勢等様々な内容を聞かせて頂きました。

鳥取県立美術館とは

人々が集い、楽しみ、交流や活動し、とっとりのアートを発信する拠点として、鳥取県立美術館の計画が進行中です。鳥取県立美術館パートナーズ株式会社(大和リースを代表とする企業グループ)によって整備運営がされており、2025年春に開館予定です。デザインアーキテクトは槇総合計画事務所です。詳しくは下記を参照ください。 tottori-moa.jp

参加者

松田浩幸さん:株式会社槇総合計画事務所所属。鳥取県立美術館の設計及び工事監理主担当。

渡辺健児:ヴィック代表。サウナ巡りにハマっている。

松谷一樹:ヴィック所属。最近休日は近くの図書館でのんびり過ごしがち。

有澤雄介:ヴィック所属、東洋大学非常勤講師。休日はデッサンしつつ市営プールに行ってダイエットをしようと目論んでいる(だけ)。

照井悠大:ヴィック所属、昨年ヴィックに加入。最近ブルーピリオドを一気読みした。

松田:よくぞお越しくださいました。

渡辺:本日はよろしくお願い致します。

渡辺:私たちの中では槇建築ってボリュームの絶妙なバランスがあると思っていてこの鳥取県立美術館も同様に感じていました。この建築でこれまでの作品と異なって新しいのはどのような点になるのでしょうか?

松田:そうですね。僕も槇事務所20年程度なんですが、学生の頃の槇建築の印象はなんとなくこう端正とか、整った建築だという印象を持っていました。 ある種ストイックな。例えばディテールとかも槇事務所としてボキャブラリーがあって管理されていて、システマティックに形状が決まっていくのかなという想像をしていたんですね。

渡辺:はい。

松田:ディテールを考えていくと毎度毎度同じような表現になっていきがちですが、そこを目指している集団では無いんだろうというのがようやく今頃分かってきたんですよね。 各個人が各個人の視点で、非常にチャレンジングなことを毎度毎度どのプロジェクトでもやっているというのが、スタッフとしてみた槇事務所の印象です。
クライアントや周辺環境とかでもそうですけど、様々な要素に対して真面目に真摯に向き合うとやっぱり同じ答えにはたどり着かないんだなっていうのがよく分かります。

一方でさっきこの建物で渡辺さんがおっしゃって頂いたような「槇建築だね。」という評価を頂いた点を考えると、もしかしたらそれは最初に申し上げた「端正」というものの扱い方なのかなと。特に槇事務所は建ち姿とかですね。
それと都市の中でどういう在り方をするかとかですね。 少し一歩引いた視点というのをかなり意識をして持っている組織だと思います。

渡辺:ダイアグラムみたいなパースがあったじゃないですか。建物の中に小さな空間が点在するような絵だったと思うんですがそのようなコンセプトが端的に表現された絵という事になるんですよね。

コンセプトパース

松田:そうですね。

渡辺:「大屋根の下で生まれるアクティビティ」というコンセプトがありましたが、そんな細かな空間の上に大きな屋根が乗ってきたのはどのような方針だったのでしょうか。

松田:そうですね。実は計画の初期は今とは違ったデザインでした。 最初はもう少し空間が卓越して見えてくるようなデザインの方向性だったんですが、計画の中盤で先ほど申し上げた『一歩引いた視点』から見直した際に、おおらかな屋根の下に賑やかな場所も、静かになれる場所も、同時に成り立つような、まちの中の大きな家のようなイメージを持つに至りました。そこで、全体を包み込むような大屋根をデザインの特徴として、それ以外の箇所をなるべくシンプルに丁寧に納めていくことを心掛けました。

渡辺: なるほど。

松田:場所としても、デザインとしても賑やかであることの重要性や良さは十分理解をしたうえで、さらに空間や材料等のヒエラルキーを考慮しながら、一つ一つ丁寧に取捨選択をした結果が槇建築と言っていただける所だと思います。微細な操作の連続なんですけどね。例えば屋根とパネルの作り方、取り合いなど。

渡辺: 例えばあの大屋根の端部の斜めの45度ですか?

松田:45度でもないんですよね。

渡辺: 絶妙な角度だなと思ってるんですが、ここからちょうど左側を見るとちょうどあそこが一直線に見えるんですよね。 あれ以上屋根のラインが寝ていたら多分ちょっとこうカクンって逆に沿って一瞬気持ち悪い造形になるのかなと思いながら…とか、この辺はもう明らかに当然意識するってことですね。

屋根と軒天が一直線になるライン

松田:ご指摘頂いた『どこから、どのように見えるか』は常に気にしながら形に反映させているところではあります。

今の大屋根の話でいうと、大屋根の印象的な木格子天井が見る人の意識にすっと入ってくるように、まわりに取合う素材や形を出来るだけシンプルにつくり、精度よく施工がされるデザインという工夫によるものです。例えば、アルミパネルと笠木の目地がぴったりと合うように整理し、屋根の陰影を映す外壁を白い塗装で仕上げ、ガラスカーテンウォールの整然としたサッシや構造のモジュールと合致した丁寧なおさまりが挙げられます。

この静的な美しい佇まいがあるからこそ暖かみのある木格子天井が引き立てられ、美しい姿が実現しています。

渡辺:でもそれって結構難しいじゃないですか。我々もBIMチームが生産設計のデータを作っているんですけれどあれがいかに難しいか…槇建築を見ているといつもさりげなくきちんと収めている。

松田:ありがとうございます。揃えるというのは建物の構成がシンプルになればなるほど難しくなりますね。

渡辺:それはどういう理屈なんでしょうか。

松田:目立つんですよね。設計時にディテールの精度を5mm、3mmで精度で考えているのか、15mm、25mmの精度で考えているのかとかそういうところがあるんですけど、場所によりますが仕上が10mmぐらいずれるとシンプルな建物の方がより目立ってきちゃう。 パッと見で今回この建物は非常に構成的な建物かと受け取られるんですが、各所大味にならない、雑にならないことをかなり意識的にやったところがありますね。

渡辺: 今言われてハッと思ったんですけど、正面の大きな壁面は他のボリューム同士の大きさのバランスとディテールの密度との微妙なバランスをとっているんだなと感じました。

松田:おっしゃる通りです。私個人の感覚ですが建物を考える時に1/500、場合によっては1/1000とかで都市的なスケールで考える事があります。また建物の姿や在り方、周りの外構との関係性を考える場合は1/50から1/100ぐらいの建物のスケールで、具体的な形状を考える時は20分の1ぐらいのスケールで物を考えるようにしています。それで、1/20の場合は何を考えるのかというとまさに渡辺さんがおっしゃったように壁面の面積がこれで大丈夫かとかこの風除室の大きさが周りと比べてどうだとか…サッシの割り付けだとかのバランスを考えています。

渡辺: 2次元で考えているんでしょうか?

松田: 常に3次元で考えています。ただ説明する時にはどうしても図面ですることが多いので、A3用紙は他の人と会話をする材料という感じです。 その次に10分の1とか5分の1とかいわゆるディテールって呼ばれるものを考えます。1分の1でもいいんですけどね。色んなスケールをいったりきたりしながら考えるんですが、その中でも1/20から1/50程度のスケールの検討に多くの時間を費やします。

槇事務所は都市に対してとか造詣が深いとかディテールが綺麗だねというようなお話ばかりが挙がりがちなんですが、槇事務所は1/20ぐらいのバランス感覚で考えるのがとても重要だと考えており、それが槇の言葉にあるヒューマンスケールというお話に繋がっていくのかなと思います。

松谷:コンペ時のパースを描いている時、変更が入っても大きいプロポーションが変わらない実感が僕にはあったんですが、コンペ時にも1/20の感覚を持っているという点が自分の中で凄く腑に落ちました。

松田: そうですね。プロポーザルのコンペとの違いで言うと、今回PFI事業でかつ美術館というビルディングタイプだったのでクライアント側のオーダーも発注時にかなり出揃っており、変更される要素っていうのが比較的少なかった。 通常だと設計時にクライアントと対話をして要求をヒアリングし反映するタイミングが基本設計になってきます。 その中で形が変わったり機能が変わったりする事があるんですけど今回はそうではないプロセスだったので比較的同じような空間としてできたというのは大きいですね。

スケールの横断については設計という行為の中ではとても自然に行う流れなんですね。 普段僕らはご飯を食べる時にお茶碗を持って、お箸を持って、口に運んで咀嚼して、というように一つ一つ考えながらやらないのと同様の感覚です。

有澤:日常的な行為ということですね。

渡辺:それは槇事務所の中で、何か言語化されたものがあるんですか?

松田:言語化されてはいないですね。

渡辺:それはもう脈々と受け継がれてるんですね。

松田:そうですね。それがもしかしたら、渡辺さんが一番最初におっしゃった「槇建築だね。」っていうところに繋がるのだと思います。

渡辺:そうなんですね。大体いつもこれが槇建築だなと思うのがあって、例えばサッシュのディテールを見てもやはりそれは感じるし。細かい箇所に関しては毎回同じじゃないとは思うんですけど。

松田:違うんですよ。

渡辺:何なんでしょうね、全体のプロポーションを見た時に「あ、槇建築だよね。」っていう感覚があるんですよね…ちょっと移動しましょうか。

上:現物 下:パース

渡辺:本当にもうそのまんまだね。さっきの松田さんの話だと従来の設計プロセスの場合は色々要件を聞きながら設計変更するので変わっちゃうのはしょうがないんだけれど、変わったとしても多分槇建築が押さえる要素があるのではないかと思います。

松谷:槇建築の場合は、空間やディテールのスケール感が終始あるクオリティーを保ったまま出来上がるのかもしれませんね。

渡辺:PFIは初めから全部後出しじゃんけんなし、という形式でやる訳じゃないですか。松田さんその辺りどう思われますか?

松田: そうですね。特にパースに対する向かい合い方が大分違うかなとは思います。 私が学生の頃はパースを作る前に模型だったんですよ。 槇事務所で、「模型で作れないものを実際にも作れない」というのを、過去に先輩に言われたことを今思い出しました。 模型で成り立たない庇は実際にも作れないし、模型で成立しない階段は実際にも成立しないとか。 構造的な問題とか空間の大きさの問題とかですね。

渡辺:そうなんですね。

松田: 模型についていうと槇事務所の模型って精度高いねってよく言われるんですが、一方ですごく正直に作ってるんですよね。 あえて柱を無くして見せるというように無いものとして扱っていくというより、真面目にあるべき要素は全部作っていく。 例えば模型写真やパースの表現上のテクニックとして、柱を取って表現する場合がありますが、それは空間の広がりやアクティビティーを表現するために行うものです。槇事務所では空間のあり方と同時に構造や施工性なども同時に考えながら検討するので、真面目にあるべき要素はすべて作っていくという手法をとります。その上で空間性を模索するのですね。

渡辺:なるほど。

松田:なので3DCGやパース等の表現に対しても、向き合い方としては多分同じなんじゃないかなと思います。 特段突飛なアプローチをしないというか。

渡辺:我々は3Dでモデルを作る行為はPCを介して行っている訳ですが、柱があって壁があって屋根があって…みたいな事を意識しながら作る事は多分今の松田さんがおっしゃった模型作りともしかしたら通じるところがあるのかもしれない。

松田:そうですね。

松谷:槇事務所さんから3Dモデルや図面だったり頂いて、それを3Dとして正確に立ち上げた時に湧き出てくる「槇建築らしさ」はあるけれども、 ケースによっては柱を一本抜いたりしながら、あえてこうした方が伝えられるよねっていうパースを描く場合があります。 でも槇事務所さんの建築の場合、それをしてしまうと空間が壊れてしまう。

渡辺:そんな事恐ろしくてできるわけない(笑)。

松谷:空間を正直に表現する事で伝えられる要素が多いんだと思います。

渡辺: そうだね。他の設計事務所の場合、ちょっとこれは柱を抜いて広角にして…みたいな時はあるけど槇事務所ではあり得ないし、これまでそういった必要性に駆られる状況はありませんでした。

有澤:そこに槇事務所としての誠実さとか正直さの姿勢をもの凄く感じるんですよね。

渡辺:それは設計全体に対する誠実さだね。アウトプットが模型であってもパースであっても動画であってもVRであっても整うという。 アウトプットは何でも設計行為の結果だしね。

松谷:このコンペをやっていて僕がアングルを撮ってた時、もうどこから撮っても美しいんです。 だからこそ静止画で撮る時、本当に最強のベストのアングルを撮らなければいけないみたいな強烈なプレッシャーがかかるんですよね(笑)。 太陽光の当て方や影面の位置によって槇事務所さんが綿密に考えられた面や線の構成が崩れてしまわないように…とか。 それを構図の中に収める時の緊張感たるやいなや…。

松田:ふふふふ。

松谷:槇事務所の建築のアングルを撮り始める時、最初はかっこいいなから始まるのですが、でもどこかで不意に問われるんです。 誰でも描ける絵ではないぞ、と(笑)。

松田:3階からのパースでしょ?それって。

松谷: そうです(笑)。

松田: あの時はすみませんでした(笑)。

松谷:いやいや!色々思い出してきました。 当初1階のアングルもあり得た時に、天井の見せ方や手すりの見せ方、周辺環境の見せ方等々…かなり苦心しました。

松田:これは難しかった。そうそう難しかったね。

松田: コンペのパース、いわゆるプロポーザルとかでもいいんですけど、シーンを切り取った絵が最近の風潮だと思うんです。 我々建築家サイドは説明したいのでなるべく説明できる内容にどんどんしていこうとするんだけど、そうするとやっぱりつまんない印象の薄いパースになりがちで、絵のダイナミズムと説明的な要素を同時に求めるじゃないですか。 コンペの場合は印象がパンと入る方が効果的で、そうすると建物の形状をデフォルメをしてもまあいいかということをやってしまうと思うんですが、そうすると実際に出来上がってくるものとは少し違ってきますよね。

渡辺:でもちょっとこれ動かしちゃう?とかよくある話だよね。

松谷:そうですね。けど、槇事務所の案件の場合は僕らが間違ってるんだってまず思ってしまって(笑)。 デフォルメせずに良いアングルがあると感じてオブジェクトを動かすのはホントに最後の最後まで選択肢に入らない。

3Fひろまのパース(コンペ時)

松田:この3Fパースもね、この手すりぐらいですもんね。

松谷:ここだけですよね。本当に最後の最後で…いやでもこれは必要な操作でした。

松田:手摺は入れたいけど、この手摺子はいらないから消しましょうとか。

松谷:手摺は立ち位置を示す情報として欲しかったんですよね。 建物の大きな構成を変える訳ではなくてそれを素直に伝えたかった。この場の情景がストレートに伝わる方法を模索しようとしていました。

松田:画角もそうですよね。 画角を90度とかにした方が広範囲に入るし真ん中を切り取ればいいじゃん、みたいな操作をやるとやっぱりどこか歪みが出てきたり印象が変わってきたりとか。 そういうのをなるべくしないというのが多分ある種の誠実さなんじゃないかな。

渡辺:これ松田さん的にベストアングルはどこなんですか?

松田:あー!難しいですね…。

渡辺:槇事務所って大体どこもいいんですよ。だから難しいなと思ってます。 他の建築だとここが一番だよねとかここしかないよねというのがやっぱりよくあるんですけれど、斜めから見てもいいしさっきの妻側から見てもいいしもちろん正面もビシッて決まるし…。 正面に行った時に壁のボリューム感のバランスがまた完璧だったりするんでしょうかね。

松田:そうですね。そう言っていただけると嬉しいです。

照井:左右の柱を一本ずつをなくそうという事を考えた事はありますか?

松田:あの最前列の柱は最初なかったんですよ。 柱の厚みをもっと厚くして、内部に柱を立ててキャンティレバーで跳ね出しを多くすればあの前面の一列の柱はなくてもよかった。ただあの柱はこの建物の姿を規定する上で非常に重要だなと思っています。

建物を考えるときにはいろいろなアプローチがあるじゃないですか。 今回は、最初にこの場所に来た時にこの場所の環境がとても落ち着いた風景、土地柄、気候、文化がある場所だなというところがあったので、やっぱりこう地元に根差したような表現というものがまず望ましいのではないかという事があったんです。 そんな中チームで議論した時にどことなくこの土地由来の伝統建築を思わせるような立ち姿があっても良いのではないかと。 心象風景として感じてもらえるように、そこに少しこう思いが馳せられるような姿があってもいいのかねっていうところでした。直喩ではないんですけれど。

周辺に長谷寺があったり投入堂があったりするのですが、そういうのを思わせるようなちょっとした舞台。軒の水平性とそれを支える細い線のような柱が整然と並ぶというのがボキャブラリーとしてありました。 あの柱は構造的な理由だけで出てきたものではなくてやっぱり表情の一つの表現手法としてあれが必要だったということになりますね。

そうそう、それとあの膜屋根はなんで何の形なんですか?とよく聞かれるんです。 あの場所はお客さんにとって、展示空間等の内部空間を全てを廻り切った後の最奥の目的空間なんです。 膜屋根が無かった場合ただの日陰になると少し寂しい、もったいないというのがあり、やっぱり最奥の空間には悦びが欲しいねということで開口を設ける事にしました。 色々建築的な理由もあるんですけど、あそこが最奥の悦びの場所なんだというものがああやって明示できるというのは良いことかと思います。

渡辺:正面から見るとまさにあの右側がエントランスで、そこから入ってきた人がエスカレーターもしくは外階段を使う流れが明確ですから膜屋根が右になってはいけないなと思いますね。

松田:おっしゃる通りです。あそこにあれが欲しいですよね。全体の空間構成の流れ方として重要な場所だと考えています。

渡辺:鳥取県立美術館ではガラスはどのような意味合いで扱っています か?面?それとも孔?

松田:そうですね。これはどちらかというと、内外を規定しないような中間領域になるよう考えています。 ただ、美術館なので虫だとか紫外線だとか美術館としての必要な性能を外すような内外区画ではまずい訳です。 今回の建物は限界まで開けてますね。普通、美術館ってあんな開口は取っちゃいけないんですよ(笑)。

大屋根の下で人が集っているような場所と作品を見るために作品の守られた展示室というのが外から見てパッとわかるようにしています。 展示室は作品を守るためのものなので開口は不要なんです、という機能的な理由が外から見た時も表現としてちゃんと伝わるようにと。

渡辺:すごい分かりやすいですね。

松田:それを考えると、あの大きく開いているガラスの部分というのはあそこでアートだったり人だったりが賑やかしくなって、活動が目に飛び込んでくるような場所として自然と感じるわけですよね。 あれが全面ガラスだったとすると「どこが展示室なの?」とか「どこがそういう賑やかしい場所なの?」というようにメリハリがなくなってくるのだと思います。

渡辺:正面から見ると展示室の壁面のバランスが左右で違うけど、あのボリュームが大屋根の下で一つにちゃんとまとまってるのは気持ちいいです。このボリュームのバランスが毎回完璧で破綻がないことが本当に凄いと感じています。

松田:ちょっと西側行ってみましょうか。

以上、第1回はここまでになります。
次回も松田さんと鳥取県立美術館を廻りながら掘り下げて話を進めていきます。乞うご期待ください!