先日、当ブログでGrasshopperで寸法計測する際に、中間生成物を出したほうがいいよねという記事がありました。
さて、寸法計測のGHに間違いが見つかるというアクシデントが起きた場合、技術的な面に加えてマネジメント面でどう対応するべきでしょうか。
シナリオとして、
寸法を計測した結果を自社から送付後、顧客から間違いの指摘が戻ってきて、「全数手作業で計測しなおしてほしい」と言われた
という状況を想定します。
1. まずは謝罪
迷惑をかけているので謝罪します。
原因がこの時点ではわからないので、提出物の修正と原因の究明をすることを伝えます。
しかし、手作業で計測するのが正解か、は場合によります。
相手がたとえ怒り狂っていようとも、技術的に責任のもてる根拠を持って、状況に応じた対応方針の説明をします。
2. 修正の対応は場合による
謝罪はすぐにするべきですが、「すぐ直して出します」と言っていいのかは場合によります。
焦って徹夜をして、また別の間違いを生み出すと泥沼にはまるので注意しましょう。
修正に使える時間がどのくらいあるのかを顧客と会話してから方針を決めます。
10のオーダーで提出している場合
計測箇所が10か所だとすると手作業で計測することも十分可能なので、
GHでの計測と別途、手作業で計測して比較対照し、正しい値を確認します。
ダブルチェックできればなおいいでしょう。
今日中に直して出す、と言えるのはこのくらいのオーダーです。
データを送り出した後にGHの中身を吟味します。
100のオーダーで提出している場合
計測箇所が100か所だとすると1分/箇所で確認しても100分で2時間ほどかかります。
しかし、ノンストップでマウスをポチポチ押して計測し続けて一つもミスがない人がいるでしょうか? 一応間違いを含んだGHが先行しているのでダブルチェックの位置づけですが、間違いの原因がわからない以上、GHと同じ箇所で手作業でも間違いを犯すかもしれません。
そうすると、いわれるがままに手作業で計測するのは懲罰にはなっても、最終成果品の品質にいい影響があるとはあまり思えません。
このような場合には、手作業での確認に加えて、多角的な検証が重要になります。
- 中間生成物を作り、計測対象と比較して検算する。
- 計測値の連続性を可視化して特異値が出ている箇所を探す。
- 隣接する数値の差分をとって分析する。
表計算ソフトの条件付き書式で色分けするだけでも怪しいところが見えたりします。
並行してGHのホワイトボックステスト(アルゴリズムやプログラムの精査)を行い、間違いの原理を把握出来たら安心して修正版のデータを送付できます。 焦らず、検証をしたうえで送り出すのに2,3日の時間をもらうことになるでしょう。
もし、一日以内に修正版が欲しいといわれた場合は次の1000のオーダーに似た対応をすることになります。
1000を超えるオーダーで提出している場合
計測箇所が1000か所だとすると1分/箇所で確認しても1000分で16時間強、2人がかりで1日作業です。
「人をかき集めたり、徹夜をしたらできるのではないか」という気持ちが芽生えますが、ミスの上塗りは地獄への道です。
建築工事で1000のオーダーで作業している場合は、すべての提出がすぐに必要ではないかもしれません。
実際には寸法値を加工に使ったり、作図に回す際には1000か所一気に使うのではなく、 100程度のまとまりで作業単位が存在している可能性が高いので、着手時には100あればよいかもしれません。
そうであればまずは数日のうちに100枚を出し、その後、順次残りを出すか、バグをとった改良版GHで900枚を出すようにできます。
あるいは、1000か所一気に加工を行うにしても、何らかのバッファーがあるかもしれません。
余力を早いうちに使ってしまうと今後の加工、検品、輸送などで苦しくなるので良いことではありませんが、総合的な判断をBIMの立場だけではできません。 顧客と相談して、待ってもらえるならばひとまず猶予をもらい、原因究明をしてからGHを改良するなり、人海戦術で攻めるなりします。
GHを使うことが目的ではなく成果を上げる(寸法を計測する)ことが目的です、いざとなったら人海戦術も選択する覚悟を持ちましょう。
3. 次のプロジェクトへの継続的改善
つらかったですね。
お客さんから怒られるし、残業して直しながら自分の能力の欠如を思い知って、悔しい思いをしたかもしれません。
修正できた。めでたし。よかった、よかった…
と、ここで終了してしまうと、同僚が似たような過ちを犯したり、自分自身がまた間違うかもしれません。
この経験を記録し、なぜそうなったのか?なぜ提出前に検出できなかったのか?を分析しましょう。
ちなみにこれはダメです。
- 原因:不注意だった
- 対策:注意する
具体的行動につながる分析をします。
分析した内容は社内で共有してほかの人が学びにできるものを心がけましょう。
書いている間に「つらかったあの日」を思い出しましたが、この学びを共有することで、少しでも危機回避できる人が増えることを願っています。
おわり