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株式会社ヴィックの技術ブログです。

VIZ座談会 #4『なんかいい』から直感を育てる

これまでの座談会では、「良いパースとは何か」や、「AI時代にビジュアライザーは何をつくるのか」といったテーマについて話してきました。
今回はそこからさらに踏み込んで、ビジュアライザー自身が何を美しいと感じているのか、どんな感覚を頼りに絵をつくっているのかについて話しています。
建築として成立していること、 設計意図が伝わること、 プロジェクトの条件を満たしていること、そういった前提がある中で、最後に絵を決めているものは何なのか。

VIZ座談会 #4では、「感覚」や「直感」について、それぞれの視点から話しました。

参加:進行 篠原 VIZ 松谷・有澤・照井・柿谷

座談会の様子

有澤:これ、僕が聞いてみたかったことなんですけど、松谷さんと照井さんって、絵を描くときに何を大事にしているんですか?
建築がちゃんと表現できているかとか、提案したいアクティビティが見えているかとか、建築ビジュアルとして必要な要件ってあるじゃないですか。 そういう押さえどころは前提として、その上で最後に何を判断基準にしているのかって、意外とちゃんと聞いたことがなくて。

松谷:僕は、自分がいいと思えるかですかね(笑) 自分で「これいいな」と思えたものの方が、やっぱり自信を持って出せるので。

照井:わかりやすい(笑)

篠原:VICCのCはconfidenceですからね(笑)そのときの自分がいいなと思う直感を信じる?

松谷:そうですね。 なんかうまくいってないなとか、迷ったときは、自分がいいと思える方に振り切ることが多いです。 もちろん直感だけじゃなくて、これまでのコミュニケーションの積み重ねとか、単純に自分が美しいと思えるかとか、そういうもの全部含めてなんですけど。

座談会の様子②

有澤:松谷さんの中で、「美しいな」って感じるものって、どういうものがあります?たぶん、みんなそれぞれ美しいと思う感覚って違うと思うんですよね。

松谷:単純にモネとか好きですね。印象派の絵画って、強い意志を持っているように見えて好きなんです。 フォトリアルなMIRみたいなパースもかっこいいし、ああいうものをつくれるようになりたいとも思うんですけど、フォトリアルさが強すぎて、逆に身動きが取れなくなる感覚もあって。 だから、自分はもう少し、情緒とか空気感みたいなものが残っている表現に惹かれるんだと思います。
現実をそのまま再現するというより、その場で感じる空気とか、記憶に残る感覚みたいなものが絵に乗っている方が、自分は好きなんですよね。

有澤:照井さんって、「これかっこいいな」とか、直感的な好みの話をあんまりしないイメージあるんですけど、実際どういうものが好きなんですか?

照井:んー、好みの話でいうと難しいんですけど、結局、自分が絵を描くときに大事にしていることに戻る気がしていて。 やっぱり一番は、自分がちゃんと美しいと感じられているかどうかですね。たぶんそこは、自分の中では結構エゴな部分でもあると思います。

篠原:それは自分の仕事をお客さんに説明するときに、自分の感性がのってないと自分の言葉にならないからっていうこともありますかね。

照井:もちろん、仕事としてCGをやっているので、ある程度クライアントが求めているものには応えないといけないと思っています。 その上で、できる限り自分自身も納得できているか、自分がちゃんと満足できるものを出せているかは、かなり大事にしていますね。

松谷:有澤くんは?

有澤:僕も、自分が納得しているものを出したいっていうのはありますね。 やっぱり、自分が気持ちを込められていないと、クライアントにも推せないので。 好きな絵でいうと、自分は結構抽象的なものが好きで。 面で見せるイラストとか、透視図を崩した表現とかに惹かれます。 武政諒さんのイラストもすごく好きですね。
絵本っぽさというか、情緒があって。 たぶん憧れもあるんだと思います。 自分は3Dがメインツールなので、こういうものをパッと描ける人を見ると、いいなって思います。

有澤:この雑誌とか最高なんですよね。 季刊むさしの 2026年春号 No.153 | タマイーブックス TAMA ebooks

これとか、めちゃくちゃ良くないですか?力強いんですよ。 色と構成だけで情景が伝わるというか。 情報量はそこまで多くないのに、ちゃんと空気とか温度感が見えてくる感じがして。

松谷:僕は坂口恭平さんの絵が好きで。 Instagram

その場のリアリティというか、情緒を感じるんですよね。 ただ景色を描いているだけじゃなくて、その場の空気とか、人の気配みたいなものまで見えてくる感じがして好きです。

有澤:何かたぶん共通しているものがあって、体験を強化させてくれていますよね。

松谷:誰もがどこかで見たことがあるような、原風景みたいなものを感じるんですよね。 たぶん、完全にリアルだから心に残るわけじゃなくて、その人の記憶とか体験に少し触れるから、惹かれるんだと思います。 こういう感覚を、新しい建築のビジュアルでもつくれたら素敵だなって思います。

座談会の様子③

有澤:柿谷さんは、どういうものが好きなの?なんか印象に残ってる絵とかあります?

照井:進撃の巨人?(笑)

柿谷:あー、きれいだなとは思いますけど、芸術として見れているわけではないですね(笑)

柿谷:絵というか映像なんですけど、『もののけ姫』のシシ神が出てくるシーン、わかりますか? あそこって、すごく綺麗だなって思った記憶があって。後光が差している感じで、シシ神の顔もはっきり見えないんですけど、輪郭だけが少し浮かび上がってくるような瞬間があるんですよね。 ああいう場面を見ると、「絵の力」みたいなものを感じます。

有澤:ジブリの映画って、説明を入れすぎないですよね。 文字で語るというより、絵そのもので見せている感じがある。

照井:なんでそのフレームを魅力的だと思ったの?自分の中では、どこに惹かれている感じがする?

柿谷:直感で話しますけど、シシ神っていう存在の異質さとか、存在感がちゃんと伝わる絵づくりになっている気がするんです。 すごく大きな木々の間に、小さい生き物がいて、その奥からまぶしい光が差している。 でも、シシ神自体を説明的に見せているわけじゃないんですよね。 むしろ、周りの環境とか空気感で、キャラクターの存在感を表現している感じがして。 そういう絵づくりがすごいなと思います。

照井:たぶんスタジオジブリのプロデューサーは喜んでるかもしれない。

柿谷:自分は、キャラクターそのものというより、景色とか空気感の方に惹かれているのかもしれないです。 その中にキャラクターが置かれることで、世界観ができている感じというか。 言われてみると、自分は結構説明的な絵が好きなのかもって、今話していて思いました。

有澤:まぁ、でも直感って大事だからな。 あんまり説明を入れすぎると、逆に後付けっぽくなっちゃう感じもあるんですよね。 「なんか良い」って、最初は理屈より先に来るものでもあると思うので。

松谷:直感的な美しさって、たしかにあると思うんですよね。 でも、仕事をしていると、それをどうにか言葉にしないといけないタイミングがある。 今みたいにみんなで話しているときだったり、クライアントに説明するときだったり。 「なんでこれが良いと思ったのか」を、自分なりに整理して伝えないといけない。

有澤:VICCのPMVVでいうと、直感的科学者ってまさにそうですよね。 感覚だけで終わらせるんじゃなくて、「なんでそう感じたのか」をちゃんと考えて、言葉にしようとする。 あれはすごく大事だと思います。

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松谷:コミュニケーションの反射神経みたいなものも、それに近い気がします。 経験が積み重なっていく中で、「こっちの方がいいかもしれない」と感覚的に判断して提案することってあるんですよね。 そういう瞬間の判断も、ある意味直感的科学者なんだと思います。

有澤:直感を育てる方法って、いろいろあると思うんですよね。 僕は、興味を持ったことに純粋に飛び込んでみるのが大事だと思っています。 仕事に関係あることでも、関係ないことでも。 山の絵を描いたり、実際に山にいる時間だったり、そういう「いい時間だな」って思える体験って、結果的に感覚を育てている気がしていて。 そういう、人生を豊かにしてくれる時間みたいなものは、大事にしたいなと思います。

座談会の様子④

照井:どうしても僕らって、視覚的な情報に頼る仕事じゃないですか。 だからこそ、「見る目を養う」ことは大事だと思います。 やっぱり、ある程度“見る訓練”みたいなものは積まないといけないというか。 良いものを見続けたり、自分なりに「なんで良く見えるんだろう」って考え続けることは、結構大事な気がしています。

有澤:代表の渡辺がよく、お寿司の話するじゃないですか。 「この人、今日は何食べたいんだろう」っていうのを直感的に判断して、時にはあえて違うものを出せる寿司屋さんっていいよねって。
でも、ああいう感覚って、結局は経験の積み重ねの上にあるものだと思うんですよね。 だから、話すことをやめないっていう姿勢は、これからも大事にしたいなと思います。


インタビューアー後記

今回の座談会では、「良いパースとは何か」から始まって、対話、AI、感覚や直感までかなりいろんな話をしてきました。

「良い」と感じる感覚って、一人だけでつくられるものではなくて、設計者との会話だったり、言葉にしきれない感覚を共有したりする中で、少しずつ形になっていくものな気がします。

だから僕らの仕事は、単にビジュアルをつくることではなく、コミュニケーションを通して、「この建築をどう見せたいのか」を一緒に探していくことでもある。 それもビジュアライザーという職能が担う大きな役割の一つだと思います。

お手伝いできそうなプロジェクトがありましたらお気軽にご相談ください。皆さまと一緒に、そのプロジェクトにふさわしいビジュアルをつくっていければと思います。