AIによる画像生成が一般化して、建築ビジュアルを取り巻く環境はさらに大きく変わり始めています。
実際に、設計者自身がAIを使ってイメージをつくる場面も増えてきました。
そんな中で、ビジュアライザーの役割はこれからどう変わっていくのか。
今回は、AI時代の建築ビジュアルについて話していきます。
VIZ座談会 #3 では、「AI時代に人が描く意味」をテーマに、VICCメンバーで議論を行いました。
参加:進行 篠原 VIZ 松谷・有澤・照井・柿谷
「良い絵」は、経験によって判断される
篠原:AI時代になって、ビジュアライザーの仕事ってかなり変わってきていると思うんですが、みなさんはどう感じていますか?
照井:今って、たくさんの画像が並ぶ中で、一瞬で判断される時代だと思うんですよね。
SNSでもコンペでも、まず「なんか気になる」と思ってもらえるかどうかが大きい。
感覚で魅力的な絵をさらりと作れる人もいるのですが、
でも自分はそれができなかったので、ロジカルに考えて絵をつくってきたんです。
グラフィックデザインを参考にしたり、構図だったり、視線誘導だったりを学びました。
「なんでこの絵が良く見えるのか」を、自分なりに分解しながら考えてきたと思っています。
Instagramみたいな小さいサムネイルでも、人って一瞬で「見る」「見ない」を判断していると思うんです。
パースも結局そこに近くて、なんとなく気になる仕組みをどうつくるかは、かなり重要だと思っています。

有澤:AI時代って、誰でもある程度のものがつくれるようになった時代でもあるんですけど、結局「良い・悪い」を判断できるのって、その人が今まで何を見てきたかだと思うんです。
どれだけAIが進化しても、知識や経験の前提がないと、出てきたものをうまく扱えない。
だから逆に、見る力みたいなものは、これからもっと重要になっていく気がしています。
AIが画像をつくれるようになっても、その絵を判断したり、方向性を決めたりする部分には、まだ人の経験がかなり出るかなと。
AIでは埋めきれない「説明」と「対話」
有澤:建築ビジュアルって、実施設計レベルになると、本当に関係者が多いじゃないですか。
設計者がAIでつくったイメージを持ってきたとしても、それを「なぜこうしたのか」まで含めて説明しきれない場面って、今後かなり増えると思うんです。
なぜこのアングルなのか、なぜこの光なのか、なぜこの空間体験なのか。AIは画像自体はつくれても、その背景にある意図までは整理してくれない。
そこを対話しながら整理して、説明して、最終的にコントロールしていくのは、僕らの役割なんじゃないかなと思っています。
もちろん、AIは普通に使いながらですけどね。
松谷:僕らって、単純に絵を納品したいわけじゃないんですよね。
むしろ、プロジェクトを一緒に伴走したい感覚の方が近い。
設計者自身も、最初から「これが正解だ」って全部見えているわけではないと思うので、対話しながら整理していくことが多いです。
だから、説得力を持ってコミュニケーションできるとか、プロジェクトの方向性を一緒に考えられるとか、そういうビジュアルをつくる以外の部分が、今後さらに重要になっていく気がしています。

有澤:それがクリエイティブの醍醐味でもありますよね。
いろんな関係者がいて、いろんなツールが混ざり合って、その中で最終的にひとつのビジュアルができていく。
そういう複雑さ自体を楽しみながら仕事したいなって思います。
やっぱり、話すのって楽しいですし。
AIとの違いは、「理由を話せること」
照井:AIとの違いって、やっぱり伴走できることなんじゃないかなと思っています。
AIに画像生成させる時にプロンプトに「魅力的な絵」って入れることを推奨するハウツーを見ました。
すると構図が劇的になったり、夕景になるなど魅力的っぽい画像が出やすくなります。
AIは同じアングルでも昼間の画像よりも夕景の画像のほうが印象的だと返してくることが多いです。
夕景の画像が多いから、今回は夕景を外したいという場合は、AIにその思いを言葉にして伝えないと反映してくれないです。
ただし、そこでプロンプトに打ち込んで画像が変わっていくのは「伴走」かというと個人的に疑問に思っています。
有澤:魅力的って、人によって解像度が全然違うと思うんですよね。
僕らが考える「魅力的」と、そうじゃない人がイメージしている「魅力的」って、たぶんかなり違う。
だから、AIに入力する言葉も変わってくるし、最終的に出てくる絵も変わってくる。
結局そこには、その人が今までどんな絵を見てきたかとか、どんな建築や空間を体験してきたか、みたいな経験が出るんだと思います。
松谷:僕も、AIで出てきたものに対して、「なぜこうしたのか」を説明できることが、今いちばん大きな違いかなと思っています。
なぜこのアングルなのか。
なぜこの絵作りなのか。
どういう意図でこの空気感にしているのか。
ただ画像を出力するだけじゃなくて、その背景まで含めて話せること。
そこに、まだ人の役割が残っている気がしていますし、最終的には「誰に頼みたいか」が残っていくんじゃないかなと思っています。
照井:ただ実状、コスパとかタイパを重視する人は、前よりかなり増えていると思います。
AIである程度のものがつくれるなら、「もうこれで十分じゃない?」ってなる場面も実際増えている。
最近だと、「何十枚もパースを描くのにお金をかけるのはやめましょう」みたいな広告も見ますし、建築のフェーズによっては、AIで出したイメージで十分成立するケースもあると思うんですよね。
だからこそ、自分たちがどこで価値を出していくのかは、前よりシビアに見られるようになってきている気がします。

篠原:AIって、月数千円くらいで使えたりするじゃないですか。 そう考えると、相対的には単純なパース制作の価値って、下がっていく傾向にありますよね。 「ある程度の絵がすぐ出るなら、それで十分じゃない?」って思う人も、今後もっと増えていく気がしていて。
松谷:実際、「最後の決めの一枚だけお願いしたいです」みたいな依頼は、前より増えてきていますし。
初期検討のイメージ出しみたいな部分は、AIでかなり置き換わっていくと思うんですよね。
しかも、その流れはここ1〜2年でさらに加速している感覚があります。
だからこそ僕らも、単純に絵を描くだけじゃなくて、「どういう絵にするべきなのか」を一緒に考えたり、プロジェクト全体を整理しながら関わっていく必要があるんだと思います。
有澤:実際にAIをかなり使っている人ほど、「結局最後は人と話しながら整理できる人が強いよね」っていう話をしていたりするんですよね。 設計でも、法規チェックでも、単純作業はどんどんAI化されていくと思うんです。 その中で最後に残るのって、調整力だったり、コミュニケーション能力だったり、人と一緒に考えながら進めていく部分なんじゃないかっていう話は、いろんなところで聞きます。
篠原:AIをメインに使っている人たちも、結局最後は、ビジュアライザーみたいな職能が必要になってくる、と。
松谷:最終的には、「誰に頼みたいか」が残る気がします。
もちろん、AIである程度の画像は誰でも出せるようになっていくと思うんですけど、
その中でも、「この人と一緒に考えたい」とか、「この人なら安心して相談できる」みたいな関係性は、最後まで残る気がしていて。
単純に成果物だけじゃなくて、対話の仕方とか、プロジェクトへの入り方とか、そういう部分も含めて仕事になっていくんじゃないかなと思います。
有澤:「この人と仕事すると楽しいよね」って思ってもらえることって、やっぱり大事ですよね。
話していると、つい色々相談しちゃうとか、まだ整理できていないことまで話してしまうとか。
そういう対話の積み重ねの中で、プロジェクトの方向性が見えてくることって結構あると思うんです。
たぶん、そういう関係性はAIにはつくれないですし、そこは人が関わる意味として残り続ける気がしています。
照井:もちろん、一定の成果物で満足する人は今後もっと増えると思います。 だからこそ、自分たちがどこで価値を出すのかは、ちゃんと考え続けないといけないですよね。
インタビューアー後記
AIによって、画像そのものをつくることは、以前よりずっと簡単になりました。
その中で今回の座談会を通して感じたのは、ビジュアライザーは単に絵を描いているわけではない、ということでした。
人が「なんか気になる」と感じる空気感を考えたり、設計者と対話しながら建築の価値を整理していく。
AI時代に、ビジュアライザーがつくっているのは、画像そのものというより、建築を一緒に考える関係性なのかもしれません。
次回 最終話 『なんかいい』から直感を育てる