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株式会社ヴィックの技術ブログです。

VIZ座談会 #2 良いパースは、対話の中で決まっていく

前回は、「良いパースとは何か?」をテーマに、パース屋という言葉に感じている違和感や、建築ビジュアルにおける「シズル感」について話しました。 今回はそこから少し踏み込んで、実際のプロジェクトの中で、ビジュアライザーがどんなふうに設計者と関わっているのかについて話しています。


最初に人の心を動かすのは、「雰囲気」

仏スタジアム改修コンペティションイメージ ※ 株式会社梓設計

篠原:設計者って、結局パースのどこを見ているんでしょうか?

照井:設計者が何を見ているか、例えば僕らがパースを最初に送ったときにどう感じるかっていう話でいうと、 最初に見ているのって、意外と理屈じゃないんですよね。パースを送った瞬間に、「なんか雰囲気いいね」って感じてもらえるかどうか。
もちろん形状や納まりも大事なんですけど、最初に人を動かすのは空気感だったりする。 その上で、細かい部分をしっかりチェックバックしてくれる印象があります。

篠原:実際に仕事をしていると、設計者が「これでいい」と思っただけでは終わらないじゃないですか。 その先には、発注者だったり、審査員だったり、さらに上の意思決定者がいる。
設計者自身が「これなら相手にちゃんと伝わりそうだ」と思えたり、 「これなら予算を出してもらえそうだ」と感じられる状態になって、はじめてゴールに近づくのかなと思っていて。
そう考えると、パースって単に建築を見せるためだけじゃなくて、設計者が説明できる状態をつくる役割もあるんですかね。

有澤:そこを引き出すのも、僕らの役割のひとつですよね。 だからコンペだったら審査員がどんな建築を評価してきたのかを調べたりしますし、PFIみたいな案件だと、設計事務所だけじゃなくて、行政や事業者など、いろんな立場の人が関わってくる。
そういう中で、「最終的に誰が見るのか」「誰に伝わる必要があるのか」は、かなり意識しています。

松谷:自分たちが「これがいい」と思うものを一方的に出すというより、設計者の話を丁寧に聞いていく中で、「今回のプロジェクトには、どういうパースが必要なのか」が一緒に整理されていく感覚があります。 その結果として、設計者自身も「これなら説明できる」と自信を持てる状態になっていく。
逆に、長く付き合いがあると、「たぶんわかってるだろう」で進んでしまって、少しずつ認識がズレていくこともあるんですよね。 だからこそ毎回ちゃんと話を聞くことは大事だなと思っています。

「なんか違う」は、初期に埋まっている

篠原:その「ズレる」って、具体的にはどういうことなんですか?

有澤:同じような雰囲気で描いていても、「なんか違うな」が残ることってあるんですよね。 でも、そのなんか違うって、レンダリングの質感とか、細かい表現の問題じゃないことが多くて。
実はプロジェクトの初期段階で、「何を一番伝えたいのか」が整理しきれていなかったりする。 だから、毎回ちゃんと対話しながら、その建築で本当に見せたいものを確認していくことが大事なんだと思います。

照井:設計者も、コンペの後半になってくると一気に解像度が上がってくるんですよね。 過去のプレゼン資料を見返したり、参考事例を探したりしながら、「今回このプロジェクトでは何を強く見せるべきなのか」を改めて考え始める。 そのタイミングで方向性が変わることもあるので、そこに僕らがついていけないと、仕事全体が迷走し始めてしまう。 だから、途中で生まれる変化も含めて、一緒に整理しながら進めていくことが大事なんだと思います。

座談会の様子

篠原:そういう時って、設計者側も「どう進めるのが正解なんだろう」って迷い始めているタイミングだと思うんですけど、そこで僕らから提案できることってあったりするんですか?

照井:僕らの中で「たぶんこっちの方がいい」と見えている場合は、できるだけ言葉を尽くして説明しますね。 場合によっては、その場でさっとレタッチして見せることもあります。 設計者側も、一人でコンペを進めているわけではないので、社内やチーム内で意見が割れることもある。 そういう時は、僕らも一度考え方を切り替えて、その中でどう最善をつくれるかを一緒に探していきます。

有澤:提案する意識は、常に持っていたいですよね。 場合によっては、クライアント側の判断が少しズレていることもあると思うので。 だから僕らも、建築のことやプロジェクトの条件をちゃんと理解した上で、経験を踏まえた視点を持ちながら対話しないといけないと思っています。 単純に「言われたものをつくる」だけではないというか。

松谷:プロジェクトを進めていると、「このまま進むと、少し危ない方向に行くかもしれないな」っていう感覚が出てくるんですよね。
たぶんどんな仕事でもそうだと思うんですけど、そういう小さな違和感や予感を大事にしながら、対話していく。 だから僕らは、「設計者が何を見ているか」というより、「設計者が何を見せたいと思っているのか」を、一緒に考えていきたいんです。

照井:その感覚って、実は設計のどのフェーズでも変わらないことだと思うんですよね。 コンペでも実施設計でも、「どこに価値を置くか」を整理していく作業はずっと続いているので。

アングルを決めることは、価値を整理すること

有澤:ちょうど最近、blogでアングルの話を書いていたんですけど。これ、鳥瞰アングルを決めるために出した検討案なんですよね。
アングルを決める時って、設計者とのやり取りがかなり発生すると思っていて。「何を見せたいのか」と「何を優先して見せるべきなのか」を整理していく作業でもあるので。
クライアントと話していく中で、相手が本当に重視していることが、自分の中でもだんだん整理されていく感覚があるんです。 最初はネガティブに感じていた部分が、見方を変えると、このプロジェクトらしさとしてポジティブに捉えられることもある。 そういう意味でも、やっぱり対話って大事だなと思います。

座談会の様子 有澤

篠原:アングルが決まるまでのプロセスが見えると、すごく納得感がありますよね。「設計者が何を見ているのか」って、かなり実務的な話でもあるなと思っていて。 一方で、「誰がそのパースを見るのか」という視点でいうと、柿谷さんはもともと広告の建築CGを見て、この世界に興味を持った側だったわけですよね。 いわば“受け手側”から入ってきたと思うんですけど、当時はどんなところに価値を感じていたんですか?

柿谷:最初は、マンションの広告パースとかを見て、「雰囲気がきれいだな」って、すごく素直に感じていたんです。
当時は、ライティングがどうとか、人をどこに配置しているとか、そういうことまでは全然意識していなかったですね。
でも実際にこの仕事に入ってみると、設計者やパースを描いている人たちは、ちゃんとロジックを持って絵をつくっているんだなと感じました。
ただ、その絵を審査する人や、街中で広告として見る人って、たぶんそこまで細かくは見ていなくて。 最終的には「なんかいいな」とか、「雰囲気が好きだな」みたいな直感で見ていることが多いと思うんです。 だからこそ、まず直感に刺さる絵になっていることが大事で、その上で「なぜそう感じるのか」を、あとから説明できるようなビジュアルになっていると強いんじゃないかなと思います。


インタビューアー後記

ビジュアライズは建築を暗に綺麗に見せるためだけのものではなくて、 まだ整理しきれていない考えや、設計者の中にある感覚を、対話しながら少しずつ形にしていくためのものなんだと思います。 コンペで迷ったら、ぜひご相談ください。一緒に伴走します!

今回は絵そのものというより、絵をつくるまでのやり取りやそこで考えていることについて話しました。 次回は、AIで誰でも画像をつくれる時代の中で、ビジュアライザーに求められる役割は何なのかについて、もう少し踏み込んで話していきます。

次回 第3話 AI時代に、ビジュアライザーは何を作るのか