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株式会社ヴィックの技術ブログです。

サブコン派遣記【後編・設計部編】

「報告する側」から「解決まで走り切る側」へ

VICCでは2024年10月から約1年半、社員2名が外装サブコン(以下、A社)に派遣として勤務しました。[前編・施工部編]では工事部に配属された矢部の現場体験をお届けしました。後編は、設計部に配属された堀尾の視点です。

配属と担当した物件

設計部に配属となり、物件として東京の物件の外装設計を担当しました。

それまで設計業務を主体として担った経験はなかったので、最初は先輩のアシスタントでした。徐々に客先の打ち合わせに参加したり、自分が主体となって協力会社さんとやりとりをして現場の人に動いてもらったりする場面が増えていきました。

設計の仕事は、受注前から始まる

サブコンの設計というと施工図を描くところを想像するかもしれませんが、A社の仕事は受注のずっと手前から始まるのが特徴的でした。

入り方は様々でデザインアーキテクトから「これは施工できるのか、実現できるのか」という相談を受けることもあれば、ゼネコンや材料メーカーから相談が来ることもありました。A社は設計と施工部隊の両方を持つ会社なので、施工性を加味した上で、広範囲に仕事をすることができた点が良かったです。

一番の違い—「報告する側」から「解決まで走り切る側」へ

VICCで生産設計をする立場と、サブコン設計部の「中の人」で何が一番違ったかについて書きます。

VICCの仕事は基本的に、「言われたものを言われた通りに作り、問題点を見つけたら報告する」というものです。自分たちでは決定をしません。対してサブコンの中に入ると、問題を発見したら、それを解決するまで自分で走り切らないと仕事として成り立たない

この経験から、派遣を終えてからも仕事を受けるとなったとき、今までと同じ仕事の受け方はもうできないなとなっています。中の事情が分かった自分たちが担当になった瞬間、報告以上のことを想定できる。先方がどういう期待で仕事を投げてくれているのか、依頼の言外にある事実や信頼関係に敏感になれたことが、この派遣で一番良かったことだと思っています。

もちろん、VICCがサブコンを飛ばして人やモノを直接動かせば商流上の問題になります。そこは明確に切り分けるべきです。ただ、発注の向こう側で何が起きているかを予期できるようになったことで、アラートの質は確実に上がりました。「これは他の協力会社さんにも伝わるべき情報だ」ということを、担当者に分かりやすく説明できる。結果として、戻ってきてからもプロジェクトがうまく回りやすくなったと感じています。

3Dモデルが「現場のもの」として使われた

今度は東京の物件を題材に、設計部でのBIM・デジタル運用の実態を書きます。

担当物件は3Dで作られている部材が多く、外装のデータ一式をゼネコンが持つ統合モデルに取り込んでもらっていました。作業所側の意欲も高く、2D作図のみの業者さんの部材も、少なくとも外形等は3Dに起こすことができていた。現実と常にリンクして更新されてはいなかったものの、モデルが参考資料として完全に無視されるのではなく、ずっと参照され続ける意識があったのでやりやすい部分が僕にはありました。

象徴的だったのは、現場で「ここ、収まっていないね」となったとき、「3Dモデルを一回見てみよう」というモチベーションが現場側にあったことです。作成した3Dモデルが「現場のもの」として使われた意義は大きく、その分スムーズに進んだ、良い現場だったと思います。

複雑な形状の部材は、そもそも2Dの図面には描きにくい。そのため、部材によっては工場への製作指示を3Dで行うこともありました。一方で、現場での承認は結局2Dの絵がないとできず、工場側に製作図を起こしてもらう必要があったりもしました。

効果を実感したのは、干渉を事前に減らせた・見つけられたことでした。たとえば金物と下地の干渉を、施工の1週間前に3Dモデル上で発見できたことがありました。1週間前に見つかれば、解決の選択肢がいくつか残っている。見つけられていたからこそ、コミュニケーションを取る時間が確保できていた。技術で時間を稼ぎ、その時間で人と話す。—結局、コミュニケーションを取ることが一番大事—という、矢部さんと同様の結論に行き着いています。

VICCに持ち帰るもの

受注から引き渡しまでの全体の流れ、いろんな立場のバックグラウンド、これから何が起こり、モノがどう動くのか——それが見えたことで、説得力のある提案ができるようになりました。問題を見つけたとき、その重要性を相手の文脈で説明できる。結果的に、お客さん自身もまだ気づいていないプロジェクトのボトルネックを見つけられるようになったと感じます。

そして見つけたときに、誰に言えばいいか、誰がどう大変になるから、どういう順番で連絡を取ればいいか——そのコミュニケーションの作法も身につきました。炎上級の事態が起きても、以前よりうまく対応できそうです。

1年半を終えて、自分の一番の成長を挙げるなら、お客さんに対してより良い価値を提供できるようになったことです。やるべきことを自分から提案して実行できる。それは結果的に、お客さんにとって経済的にも、プロジェクトの質的にも、良いものになる。全体の流れが見えたことで、各フェーズでお客さんが何を求めているかを察する力がついた。設計だけではなくどのような性質のプロジェクトにも適応できると考えています。


おわりに

前編の矢部は現場で時間がないため、「事前の予防より事後のケア」という現実に直面し、後編の堀尾は「技術で時間を稼ぎ、その時間で対話する」という手応えを掴みました。

建築もつまるところ、人とのコミュニケーションで決まる。紙と電話はなんだかんだ強いが、うまくやれば生産設計の技術はそのコミュニケーションのための時間と質を生み出せる。

雑なまとめかつ、きれいに書きすぎた感もありますが、これで派遣記前後編を終わりにしたいと思います。 この1年半で得たものを、これからのVICCのサービスと協業に還元していきます。受け入れてくださったA社の皆さま、現場・設計の関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。