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株式会社ヴィックの技術ブログです。

大阪万博の外装建築から|木材とパビリオン

大阪・関西万博の会場をリングの上から俯瞰すると、木の茶色と、膜の白色が多いことに気付きます。

日本館|杉とCLTで魅せる現代の伝統美

設計:佐藤オオキ、日建設計 / 施工:清水建設
日本館では、円形の建築の外周をスギ材のCLTパネルが280組で合計560枚が配置されており、今回の万博のテーマである命の循環が表現されています。また、CLTの再利用が前提となっており、その上でも理にかなったデザインになっていると思いました。静的であり動的でもある美しいデザインであると思います。

住友館|コールドベントが生む、木のしなやかな曲面美

設計:日建設計 / 施工:三井住友建設・住友林業JV

住友館では、檜の構造用合板によるコールドベント工法が採用されています。下地に合板を押し当て、応力をかけた状態で固定することで、美しい曲面を形成する技術です。加工コストを抑えつつ、ダイナミックで印象的なファサードを実現しており、技術力とデザイン性のバランスが光ります。我々も過去に日本初のガラスのコールドベントのデータを作成しましたが、難しさはフラットな状態のデータを制作することと、少しづつ変異していく下地鉄骨のデータ制作です。住友館でも、材料こそ木材になったものの、ファスナー形状のグループ化などが肝だったのではと思います。また、通常、構造用合板を屋根材として使用するのは耐久性の問題で難しいのですが、期間限定の万博だからこそ実現できたデザインとも言えます。

UAE館内部に見る木材構造の意外性

UAE館の外観はシンプルなガラスファサードですが、内部に足を踏み入れると、ナツメヤシを束ねた構造体が圧巻の存在感を放ちます。集成材といったエンジニアリングウッドでもない、今までに見たことのない「木造」で驚きました。外装のミニマルな印象とは対照的に、木材の力強さと美しさが際立つ空間が広がっています。

この内外のギャップもまた、木材の魅力を引き出す巧みなデザインと言えるでしょう。

その他

下の写真でもわかるように、木材といっても様々な表情があり、もちろんサスティナブルな材料という面は重要ですが、構造であったり、意匠であったり、曲がっていたりと、あらためてその多様な用途、表情に魅了されました。