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株式会社ヴィックの技術ブログです。

大阪万博の外装建築から|リングに触れる

さて、待ちに待った大阪万博に開幕したので早速行ってきました。前回のドバイ万博のときと同じように、それぞれのパビリオンの詳細なレポートではなく、なるべく多くのパビリオンの外装を網羅し、多くの人に万博(建築)に興味を持ってもらえるようXで連投しました。その後、多くのメディアでも各パビリオンを様々な切り口で紹介していますが、それらを参照しながら私も改めて整理したいと思います。

大屋根リング

まずは「大屋根リング」から行きましょう。1970年の大阪万博の岡本太郎先生の言葉を借りるならば、まさに「べらぼう」な存在感を放っております。世界最大の木造建築としてギネスにも認定されました。地上からのアクセスはエスカレータと階段があり、階段の踊り場からは永遠に続くかのように見えるリングの美しい構造を見ることができます。

また、各メディアでも紹介されているように、3つの工区ごとの柱と梁の接合部のディテールの違いも間近に見ることができ、建築好きにはたまらない空間となっています。接合部の技術的な詳細はこちらの記事に詳しく紹介されていますね。
xtech.nikkei.com

視線を操る空間デザイン

リングの魅力は構造だけではありません。実際に歩いてみることで、視線が上下に誘導される独特の体験が得られます。これだけの量の建築を、しかも万博という建築博覧会とも言えるイベントで縦方向の視線移動というのは、おそらく過去にもなかったのではないでしょうか。パビリオンの中には、あきらかに屋上からの視線を意識したものも多くありました。一方、屋上からもスロープにより、さらに一段高いレベルに上がることできます。そこではさらに違う視線で会場全体を一望することが可能ですし、さらには周囲の海や空に視線がいざなわれ、とても気分がよかったです。

軽やかさを支える膜構造「天の川」

構造や規模に注目が行きがちですが、屋上にあがるとぐるりと一周するように配置された白い膜構造が目に入ります。これは太陽工業が担当した「天の川」と呼ばれる膜構造で、端部のラインが変化していくことでリングにリズムを与えています。地上から屋根面を見あげると、膜の支持部材のディテールを見ることができますが、エッジラインの変化に対応する固定金物の設計ではBIMの技術が活用されているとのことです。建設業に携わる人であっても普通にスルーする箇所かと思いますが、コストダウンとクオリティの向上に大きく貢献しているはずです。
https://www.yomiuri.co.jp/expo2025/20250103-OYO1T50051/

リングにおいては、設計だけでなく、施工や加工にもBIMが大いに活用されたとのことです。

おわりに

リングは、巨大な木架構、精緻な接合ディテール、そして軽やかな膜構造が一体となった技術のショーケースと言えます。その設計から製作や施工にBIMの技術が大いに活用されました。

xtech.nikkei.com

また、万博ならではの多様で個性的な建築が林立するなか、それらに負けない圧倒的な存在感を放ちながらも、会場を見事にまとめることに成功していると思います。
そして訪れた人々はそのスケールに驚き、これまでに経験したことのない特別な空間体験を得ることができます。ぜひ現地で、自身の目で確かめてみてください。