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ドバイ万博の外装建築から|動くファサード、建築が語りかける

ドバイ万博の会場を歩いていると、思わず立ち止まってしまう瞬間が何度もありました。
その多くは、建築そのものが“動いている”という驚きに出会ったときです。

※この記事はシリーズの第3回です。風や素材による「軽やかさ」をテーマにした第2回はこちらからどうぞ。

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建築といえば静的な存在という印象が強いかもしれません。
でも今回の万博では、動きによってメッセージを発し、来場者の体験を彩るファサードがいくつも登場していました。
本記事では、そんな「動く建築」たちをご紹介していきます。

羽ばたくように開閉する、UAEパビリオン

まず紹介したいのが、開催国・UAEのパビリオン。
設計はスペインの建築家、サンティアゴ・カラトラバ。
動きを取り入れたデザインといえば彼、というイメージ通りのダイナミックな外装でした。

特徴的なのは、ファサードに設けられた羽のようなパネルたち。
これらがゆっくりと開閉することで、光や風を制御するとともに、建築全体に生命感を与えていました。
この可動パネルは、カーボンファイバー製。
軽量で強度が高いため、大きな部材でもスムーズな動きを実現できます。
構造・素材・環境性能が見事に統合された設計で、実際にこのパビリオンはLEEDプラチナ認証を取得しています。

個人的には、「動くカラトラバ」としてはやや大人しめに感じた部分もありましたが、
万博という文脈においては、品のある表現だったのかもしれません。

回転する文字で魅せる、インドパビリオン

次にご紹介するのは、インド館。
こちらはぐっとわかりやすく、“動き”が真正面からデザインの主役になっています。

外装には、大きなボックス状のユニットが並んでいて、それぞれが回転することで「INDIA」の文字が浮かび上がる仕掛け。
目の前に立つと、箱がぐるりと回って文字が完成する、という演出です。
装置としては直球な仕掛けですが、この前では多くの人が足を止め、写真を撮ったり歓声を上げたりしていました。
来場者の関心を集める仕掛けとしては効果的で、機能と演出のバランスをどう取るかが問われる事例とも言えそうです。

ポーランド館、もうひとつの「動き」

第2回でも紹介したポーランド館では、外装に取り付けられた軽いパネルが風で揺れていました。
動力を使った仕掛けではありませんが、自然との呼応によって建築に表情が生まれていたのが印象的でした。

おわりに

“動く建築”というと、つい派手なギミックを思い浮かべてしまいがちですが、
今回見てきたように、その動きにはさまざまな意味が込められています。
機械的に動くことで機能性やインパクトを高めたり、
自然の風を受けて表情を変えたり。
いずれの場合も、その動きが来場者とのコミュニケーションを生み出していました。
建築が語りかける。
そんな表現が、少しだけ現実味を帯びて感じられたドバイ万博の風景でした。

次回は「木や竹など、自然素材を用いたファサード」に注目していきます。
引き続き、お楽しみに。