ドバイ万博では、世界中から集まったパビリオンが、それぞれの国の文化や技術を“かたち”にして表現していました。
中でも目を引いたのが、軽やかさをまとった外装建築の数々です。
※この記事はシリーズの第2回です。全体像をざっくり振り返った第1回はこちらからどうぞ。
軽やかさといっても、単に「軽そうに見える」だけではありません。
風に揺れる動き、光を通す素材、構造の工夫、スケール感と空気感のバランス。
さまざまな視点から「軽さ」をどう建築として表現するかが試みられていました。
本記事では、そうした軽やかさを体現したパビリオンをいくつかピックアップしてご紹介します。
印象的だったのは、素材や意匠だけでなく、製作の精度や構法そのものが“軽やかさ”に貢献していたこと。
建築を見る目が少し変わるかもしれません。
メインエントランスに見る、軽やかで強い構造
ドバイ万博の会場に入って最初に目に入るのが、メインエントランスのゲートです。
大きな構造物でありながら、空気をまとっているような軽快さがありました。
このゲートは、カーボンファイバー製。軽さと強さを兼ね備えた素材でできており、見た目の印象だけでなく、実際に人ひとりで扉を開閉できるほどの軽さが実現されているそうです。

構造としての合理性と、デザインとしての軽快さ。
その両方を高いレベルで達成しているこのゲートは、万博という“技術と文化の見本市”の入口として、とても象徴的な存在でした。
広場を覆う大きな膜屋根の精度とスケール
メイン広場を覆っていたのは、太陽工業が設計・施工を手がけた巨大な膜屋根でした。

遠目にはふわりと張られているようにも見えますが、実はこの無柱の大空間を支えるために、アルミ製のパイプを高精度に溶接し、テンションをかけて構成された構造です。
https://www.taiyokogyo.co.jp/makmax_plus/15726/
これだけのスケールを、空に浮かぶような軽やかさで成立させるには、設計と製作の段階で相当な技術的裏付けが必要になります。
パッと見では簡素にも思えるその造形に、高い精度と経験に裏打ちされた軽さが込められていました。
羽根のように舞う、ポーランド館のファサード
ポーランド館のファサードは、軽やかさの極みとも言えるものでした。
建物の外周に取り付けられた羽根のような薄いパネルが、風を受けてひらひらと揺れ動くさまは、見ているだけで心地よさを感じるようなデザインです。

素材自体が軽いだけでなく、風との関係性をデザインとして組み込んでいる点が印象的で、建築が環境と一体化しているような表現でした。
実際に風でパネルがひらひらと揺れていて、動いていること自体が目を引くポイントになっていました。
デザインだけでなく、その動きが建築の印象を強くしていたように思います。
爽やかで印象的だった日本館
日本館の外装は、会場の中でも特に軽く、涼しげで爽やかな印象を放っていました。
強い日差しの中にあっても、どこか柔らかく、落ち着いた佇まいがあり、静かに空間を包み込んでいるような雰囲気がありました。

その印象的な外装は、大阪万博でも「ウーマンズ・パビリオン」として再活用されているとのこと。
設計そのものに込められた思想や構成が、別の文脈でも通用するほど、完成度の高いものであったことがうかがえます。
細かな納まりや構法についての情報は限られますが、見る者の体感として“軽やかさ”がしっかり伝わってくる建築でした。
おわりに
今回は、ドバイ万博で出会ったパビリオンの中でも、“軽やかさ”という感覚を印象的に表現していた外装建築を振り返ってみました。
どの建築にも共通していたのは、見た目の美しさだけでなく、構造や素材、製作の技術までもが“軽さ”を成立させるために緻密に計算されていたということです。
ふわっと見せるために、裏側ではものすごくしっかり作られている。そんな、建築の奥深さをあらためて感じました。
次回は、「動くファサード」や「インタラクションを生む仕掛け」に焦点を当てて、また別の視点からパビリオン建築を読み解いていく予定です。お楽しみに。