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株式会社ヴィックの技術ブログです。

大阪万博の外装建築から|動きのあるファサード

万博会場を歩いていると、風に揺れる膜、人の手で動く紐、振動する外装など、「動き」をデザインに取り入れたファサードが数多く目に留まりました。静的な建築が一般的な中で、こうした動的な要素は訪れる人々に強い印象を与えます。本記事では、大阪万博の「動きのあるファサード」をテーマに、特徴的なパビリオンを紹介します。

人が触れて動くデザイン|ポルトガル館

まず紹介するのは、ポルトガル館。「海」をテーマにしたファサードは全体が「紐」で構成されており、来場者が自由に触れることで動きを生み出します。実際に多くの人が触って楽しんでいました。リングから見える屋上は高さ違いのメッシュにより波が表現されており、こちらの方が直接的には海をイメージすることができました。触感と視覚的動きが融合したこのデザインは、来場者参加型のファサードとして非常にユニークです。

風にたなびくファサード|NTT館・WOMEN’S Pavilion・ノモの国

NTT館

NTT館では、炭素繊維ワイヤーに無数のメッシュが取り付けられ、風にたなびく姿が印象的です。
軽やかでリズミカルな動きが、風景に柔らかさを加えています。

石黒館

設計は石本建築事務所、施工は長谷工コーポレーションで、耐水性のあるポリ塩化ビニールの周囲をカーボンファイバー製のメッシュが覆う。そのメッシュに水が流れることで動きのあるファサードになっています。

ノモの国

同じく永山さんの設計ですが、ウーマンズパビリオンのリジットなスペースフレームとは違い、柔らかい形状に曲げられた鋼材を風にたなびく膜材が覆う、非常に動きのあるファサードと言えます。バタフライと言われる、特殊なベンダーマシンで製造される曲げパイプの基本形状は20種類におよび、実際には70種類を超える形状で構成されています。訪問した日も大阪湾からの風に吹かれて膜材がはためき、不思議な感覚を覚えました。さらに、夜にはライトアップによって別の表情を見せるのも特徴です。

振動するファサードの衝撃|落合館

動くファサードで今回もっとも強烈なインパクトを残したのは間違いなく落合館「null²(ヌルヌル)」です。鏡面仕上げの膜材が「ぶるぶる振動」するという、前例のない外装デザイン。毎回、万博ではアッと驚く建築がありますが、今回は間違いなく落合館がそれにあたるでしょう。誰もが金属の鏡面と見紛う仕上げは実は膜材であり、太陽工業さんが今回のために開発しています。私も施工現場に居合わせましたが、素材の異様さもさることながら、柔らかい膜材が、最初は皴がありましたが、ベテランの指示のもとに少しづつきれいに貼られていくのを見て、あらためてその技術力に圧倒されました。万博ならではの挑戦的デザインと、それを支える職人技の結晶と言えるでしょう。

おわりに

動きのあるファサードといっても、素材や構造や動力は様々です。前回のドバイ万博でも「動く」ファサードは見られましたが、今回は明らかに洗練された印象があり、素材開発能力を含め、日本が世界に誇れる力だと改めて感じました。 次回は、さらに膜構造や素材技術についても深掘りしていきます。ぜひ引き続きご覧ください。