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株式会社ヴィックの技術ブログです。

サブコン派遣記【前編・施工部編】

画面の中の建築から、紙が偉大な建築へ

VICCでは2024年10月から約1年半、社員2名がサブコン(以下、A社)に派遣として勤務しました。狙いは2つ。ひとつは、取引先の仕事の進め方や、VICCへの発注の背景を「中の人」として知り、より良い協業につなげること。もうひとつは、設計・現場に近い経験を持つ若手を育てることです。

本記事は2部構成の前編として、A社の工事部に配属された矢部が、現場監督としての1年半を振り返ります。後編では、設計部に配属された堀尾の視点をお届けします。

配属と担当した物件

工事部に配属となり、大きく3つの物件を担当しました。東京・大阪・広島の外装物件で各1件ずつです。期間配分としては大阪・東京が各8か月、広島は単発で複数回、合計3か月ほどで多くの現場と図面に触れられたことは光栄でした。

扱った素材はガラス、石、ボード、電気配線、建具、シール等と、あらゆる素材に触れることができた点もよかったです。

最初は先輩の下で現場監督業務を学び、大阪の物件では業者の手配なども任せていただきました。

画面の中の建築と、現物の建築

VICCで生産設計をしていた頃は、ほとんどの作業が画面の中で完結していました。現場に出て単純に驚いたのは、紙の図面がないと仕事にならないことです。当たり前すぎることに驚いて二度驚きました。

寸法の記入読み取りとかであればデジタルで代用できますが、現場で必要なメモや書き込みの図面へのしやすさは、紙が段違いで良いです。本当に紙の発明ってすごかったんだと令和になって認識しました。

もうひとつの驚きは、設計図通りに施工するのは当然としても、現場には想定外の作業環境があまりに多く、図面の整合チェックでは行き届かないトラブルを、現場がその場で解決していくことです。「建設現場に不可能はほとんどないのかもしれない」と思うほどでした。

コンピュータと対峙していた人間として、現場でもデジタルツールを使おうと試みました。しかし、フィジカルな建築を相手にしていく世界ではスピード感が最重要で、正直あまり役に立ちませんでした。データの整理や視認性の向上にはデジタルが適していると思います。ただ、複雑かつ喫緊の課題が次々に起こる現場には余裕がない。

「紙がなければ取りに行く」ですらなく、地面に直接ペンで絵をかいて職人さんとコミュニケーションをとる。これが現場の世界の一端であり、速度感の違いを肌で感じていました。戻ってから思うに、多分役に立ってたと思うけど他の問題が多すぎてもう覚えてない。というのが正しいかもしれません。

一番苦労したこと—情報が知らぬ間に更新される

派遣前に想像していた現場の大変さは、「情報が多すぎて錯綜し、頭がパンクする」というものでしたが実際は違いました。本当に大変だったのは、情報が知らぬ間に勝手に更新され、現場が流動的に動いていくことでした。

必死にキャッチアップしても、それぞれの場面で情報はまた更新され、間の経緯が抜け落ちた結果だけを見て判断せざるを得ないことが多かった印象です。

例えばのエピソードとして、職人のAさんは「15時に来る」と聞いていたが、前後の調整の結果13時に現場に来て作業を始めてしまった。一方、BさんCさんたち他の職人は、15時までに自分たちの作業を終えて場所を明け渡す段取りで動いている。現場が詰まり、関係者全員に頭を下げながら段取りを組み直すみたいなことです。現場で何度「おいおいおいおい!!」と言ったかわかりません。

誰も悪意はなく、ただ、予定という情報が僕の知らないところで更新されていました。よくわからない角度からの問題が現場では発生します。今となっては笑い話ですが、図面がーとか納まりがーなどの問題とは別次元でお話にならなかったです。それでも楽しかったです。

解決策は色々試しましたが、結局、対面で直接話すに限る。 「事前の予防より、事後のケアが大切」 生産設計で図面の整合を追い込んできたVICCの人間としては悔しい結論ですが、現場の事実として受け止めざるを得なかったです。

現場の学び

現場で一番すごいと感じたのは、職人さんたちの調整力・修正力でした。設計・検討段階で心配していたことの多くは現場で解決できます。それは図面外の情報を経験値から推し量ってよろしくやってくれている側面が強い印象です。この経験値による補助を減らす事ができれば、よりスムーズに現場も進みます。 現場サイドから見た場合のより良い図面とはなにかを学べたことは戻っても活きる経験だと思います。

また一年半の経験で、図面の見方も大きく変わりました。図面に書かれていない情報の中で、最初に検討することが「施工手順が考えられるか」になりました。「わかる図面か」よりも「建てられる図面か」を気にする視点は、生産設計しか知らなかった自分には新鮮でした。生産設計も建てられるかどうかを気にする業務ではありますが、実体験を得た今は全然違う感覚で図面を読んでいます。

工事部にいる間、現場サイドから見て分かりやすく建てやすい図面のポイントを、設計部の堀尾に共有できたのも良い思い出となってます。

VICCに持ち帰るもの

そして1年半を終えて、自分の大きな変化を挙げるなら、あらゆる問題に対する胆力がついたことです。抽象的な表現になりますがこれが一番です。

現場では毎日大量の問題が起こります。いちいち一喜一憂していては持ちません。「結局、何とかなる」——といっても「何とかする」しかないのですが——その覚悟のようなものが据わりました。これはA社だったから、というより「現場にいた」こと自体が一番の要因だと思います。

また現場の「1時間待ってください」は、設計側のそれとは意味がまったく違う——このスピード感の違いを僕はしらなかったので、それぞれの業務が持つ時間軸に応じた仕事の仕方を考えようと思うようになりました。


後編では、設計部に派遣された堀尾が、「言われた通りに作る側」から「解決まで走り切る側」に立場が変わって見えたものを語ります。